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巨人の英雄・ブロンの試練【7】

 ……まぁ、早々遠くない内に戻っては来るだろう。


 それより問題はブランダーだ!

 結局、私の事をまんまと騙してくれた訳だからな!


「ブランダーのヤツ……絶対にこの借りを返してもらうからな!」


 別宅に戻り、誰もいない事を確認した私は、部屋の中にある椅子へとドッカと座りつつ、イライラした顔になって叫んでいた。


「まぁまぁ……きっと、ブランダーも知らずにやったかも知れませんし……」


 完全にお冠状態になっていた私に、ユニクスが少しブランダーをフォローするかの様な台詞を口にする。

 

 ………うむ。


 言われてみるとそうだな。

 冷静に考えると、ブランダーもコーモランもいなかった。

 いたのは、昨日の夜にみかんが蹴り飛ばしていた兵士と、その仲間だけだ。


 コーモランは別として、試験を話に来たブランダーは、あの場にいてもなんらおかしくはない。


 しかし、ブランダーはいなかった。

 そこから予測すれば、ブランダーも知らない所で今回の騙し討ちがあった可能性は十分あり得る。


「……なるほど。そう考えれば、奴等に非がない可能性もあるな」


 飽くまでも、可能性があると言うレベルではあるんだが、そこを考慮して物を言う事にしようか。

 私は最初から頭ごなしに喰って掛かる言動をする選択をしない様にするかと、考えを改めた。


コンコンコン!


 ……と、そこでドアをノックする音がした。

 

「……噂をすればか?」


「そうですね。みかんさんであるのなら、ノックなどせずに入って来るでしょうから」


 フラウは既に部屋にいる。

 例え外にいても、みかん達と同様にノックなんかしないだろう。


 そうなれば、相手はコーモランかブランダーのどちらかと言う事になる。


「ドアを開けますね?」


 ユニクスは、私に了承を得る形の台詞を口にしてからドアを開けて見せる。

 

 ……ガチャ


 ドアの先にいたのは、予測通りの相手だった。

 正確に言うのなら、コーモランとブランダーの二人が同時に来ていたのが、少し意外だったかな? 程度の物だ。


「すまないっ!」


 開口一番、ブランダーは即座に謝った。

 うーん……。


 この調子だと、今回の一件はブランダー達にとって寝耳に水だったのかも知れない。

 少なからず、確実に試験の類いであると騙された立場であった可能性が極めて高いな。


「別に気にはしてないよ。私的に言うのなら少し驚いた程度の話だった」


 私は柔軟に笑みを作って見せる。

 ユニクスの助言がなかったら、いきなり猛剣幕に怒鳴っていたかも知れないが……まぁ、あれのお陰で少しは頭も冷えた。


 ここはユニクスに感謝だな。


「……そ、そうか」


 やんわりとした態度だった私をみて、ブランダーは逆に驚いた顔になる。

 多分、肩透かしを喰ったのかも知れない。


「特に言い訳をする気はない。俺ごときで全責任を取れるとは思っていないが……煮るなり焼くなり、好きにすると良い」


 言うなり、ブランダーは部屋の中央に座り、そのまま一方的に私達からの仕打ちを受けようとしていた。


「……あはは」


 その状況を見て、ユニクスは苦笑いだ。

 他方の私も苦笑いを作ってしまう。


「皆さん、申し訳ない……しかし、兄貴は本当にただの試験だと思って、皆さんに言っていたんだ。そこだけは信じてもらえないだろうか?」


 そこで、まな板の鯉状態になり、天命を待つだけになっていたブランダーの前にやって来たコーモランが、彼をかばう形で私達の前にやって来た。


 ……まぁ、そこだけを見ると美しい兄弟愛があるなと思うんだがな?


「いや……聞いてくれ。私達はお前らに危害を加えるつもりはない」


 私は友好的な笑みを作りつつ、二人に答えて見せる。


「そうですよ、ブランダーさんとコーモランさん。私達は仲間です。貴方と争う理由などありません……今回の事も、貴方達も騙された側の人間です。どうかお気になさらずに」


 隣にいたユニクスも、淑やかな笑みを柔和に浮かべていた。


「……おお、なんと温情のある優しい言葉だ……」


 ユニクスの言葉を耳にし、コーモランは瞳から涙すら流して見せる。

 同時に、何か……こうぅ……ちょっとだけ、ユニクスの顔に見とれている様な気がする。


 もしかして、これは……恋の予感が?


「素晴らしい……ユニクス殿! あなたは巨人族の女神だっ!」


 他方のブランダーも、ユニクスの態度と笑みを見て、涙を流しつつも瞳を輝かせている様にも見える。


「ユニクス、良かったな? お前、モテモテだぞ?」


「…………」


 やんわりとした声音で言う私に、ユニクスの顔が思い切りフリーズしていた。




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