巨人の英雄・ブロンの試練【5】
結果的に、周囲の巨人達はこちらの出方を伺ってしまったのだろう。
それだけ、無知と言うのは強い恐怖を与える物だ。
お陰で、こっちとしては助かりもしたが。
……とは言え、如何に無知であろうと、向こうの方が数で有利である事に変わりはない。
まして、相手は非力で小さな存在でしかない人間。
巨人の自分達の方が圧倒的に強い!……と、まだ考えている連中だ。
いつまでも、様子見を続けて来る筈もなかった。
「面妖な魔法を使うこざかしい人間どもめ! 我々巨人族の強さを思い知れっ!」
ブゥゥンッ!
巨人兵士の一人がユニクスに槍で攻撃して来る。
更に周囲にいた数人の兵士が、やはり同じ要領でユニクスへと支柱の様な槍を突き刺した。
そうしている間に、私の方にもおこぼれが。
ああ、面倒臭いな。
炎熱爆破魔法!
ドォォォォォォン!
巨人の一体が、私へと攻撃のモーションを見せた所で、上位魔法が炸裂した。
フレインダムドを放っても良いのだが……まぁ、奴等は一応救済対象だ。
ここまで冷遇されているのに、救済してやる義理もないとは思うんだが……それでも、パラスと約束をしていたからな?
それに……やっぱり、全ての存在との共存を夢見る私が、この程度の仕打ちでめげている訳にも行かない。
私なりの加減をしてやった事で、消滅こそしなかった巨人兵士だったが、昏倒するには十分な威力だったらしく、
ズシィィィィンッッ!
背中から地面に倒した巨人は轟音を立てて倒れた。
「な、なんかスゴい事になって来たね……」
他方、私にしがみついていたフラウは、真っ青な顔のまま身体を震わせて口を開く。
気持ちは分からなくないが、
「おいフラウ。この程度の相手にビビってどうする? 相手はただデカイだけの木偶の坊だ。やる気になればお前だって倒せるレベルだぞ?」
「えええぇぇ……」
フラウはか細く声を出す。
私の言ってる事が、どうにも信じられない模様だ。
やれやれ……仕方のないヤツだな。
「ユニクスを見ろ? 余裕で相手をタコ殴りにしてるだろう?」
言ってから、私はユニクスを指差した。
その先には……数体はいるだろう武装した巨人兵士を圧倒している光景が出来上がっていた。
二十人近くいた兵士も、既に半分はノックアウト状態になっている。
そうだと言うのに、ユニクスは依然として飄々とした面構えだ。
呼吸一つ乱れていない。
何なら、この調子で百体を相手にしても同じ顔をしているんじゃないかって言うまでの余裕が見られた。
「ユニクスお姉だもん。リアル一騎当千してる人だもん。そりゃ……ねぇ」
しかし、フラウには説得力に欠けたのか? 今一つピンと来ない顔になっていた。
「いや、幾らユニクスが強いと言っても、ここまで完全に無双出来るって事は……」
炎熱爆破魔法!
ドォォォォォォン!
「……流石に無理だと思うんだ? それにさ?」
炎熱爆破魔法!
ドォォォォォォン!
……ああ、鬱陶しいっ!
会話の途中、二体の巨人兵士がコッチに攻撃を仕掛けて来た。
当然の様に私の魔法が炸裂して、一瞬で沈んで行く。
「ほら、こんな感じでさ? ハエを追い払うレベルじゃん? 楽勝だろ?」
「……いや、だってリダだし」
フラウは未だ懐疑の態度を崩さない。
ああっ! もうっ!
「面倒だ! んじゃ、フラウ! そこに炎神の槍を叩きつけてみろっ!」
「はへっ! そ、そんな事したら……怒った巨人が、私を襲って来るじゃないっ!」
指示を出す私に、フラウは思いきりアタフタして見せる。
そうじゃなくても狙って来ると思うんだが?
さっきから、私が駆逐してるから分からないかも知れないが、当然お前も狙われてるんだよ!
「良いからやれ! どの道、このレベルの巨人なんざ、私の敵じゃない!」
「わ、分かったよ……でも、ちゃんと守ってよね?」
渋々ながらもフラウは頭の中で魔導式を紡ぎ出し……
炎神の槍!
瞬間、巨人兵士の頭上に三本の槍が突き刺さる。
「うごぁぁぁぁぁっ!」
この一撃で、一体の巨人が燃えながら倒れた。
「…………あれ?」
他方、キョトンとなったのはフラウ。
見た目の迫力に押され、自分が盲目になっていた事に、ようやく気づいたって顔をしていた。
「もしかして……大した事ない?」
「だから、さっきからそう言ってるだろう? そもそも、お前だって十分強い! 戦力としてちゃんと頭数に入れられる位に、だ?」
私は少し声高に言い放った後、やんわり笑ってフラウを見た。
フラウも笑い返して来た。




