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巨人の英雄・ブロンの試練【4】

「我々が人間をこの里に招き入れるなど……あり得ざるべき事だ! 一晩でもこの島に寝泊まりが出来ただけでもありがたいと思えっ!」


 何処か、血走った目をして言う巨人。

 ああ、あれか?

 みかんに軽く蹴飛ばされた連中だけに、結構頭に来てたりもするんだろうか?


 逆恨みも甚だしい限りだ。


 それでも、奴等は思っているんだろう。

 本当の姿で戦えば、人間の様な非力で小さい存在になど負ける筈がないと。


 ずっと、島暮らしだったからってのもあるのかも知れないけど……それは早計だ。

 ちゃんちゃら可笑しいぞ? ヘソで茶を沸かせるレベルだ。

 私が思うに、図体ずうたいが多少デカくなった所で、その結果はそこまで変わらない。


「……で? アンタらは、か弱い女子三人を相手に、武装までした挙げ句二十人近くの雁首がんくび揃えて殺しに来たって訳かい? 巨人ってのは随分とまぁ……姑息なんだねぇ」


「だまれっっ!」


 悪態を吐く私を前に、巨人の一人が本気で怒って憤怒の顔になる。

 直後、右手に持っていた槍を私目掛けて突き刺そうとして来た。


 槍と言うより、もう柱だねぇ……ここまで大きいと、ちょっと迫力を感じてしまう。


 ブゥンッ!


 風圧を撒き散らす感じで、私の眼前にやって来た支柱より大きな槍の刃は……しかし、ピタリと私の頭上で止まってしまう。

 

 思ったよりも威力はないのな?

 デカイのは、その態度と図体ずうたいだけって事か。


 槍の一撃は、私が戦闘を意識すると自動で発動する見えない壁によって、簡単にシャットアウトされてしまった。

 ここ最近は、この壁を簡単に打ち破る様な連中としか戦ってなかったから、この存在を忘れていたんだが……まぁ、思い出すちょうど良い機会だったと考えておこうか。


「……なっ!」


 見えない壁によって、アッサリと自分の攻撃を完封されてしまった兵士は愕然とした顔になった。


 その中で、ユニクスが笑みを作りながら私に言う。


「この程度の雑魚に、リダ様がわざわざ手をわずらわせる必要はございません」


 言って間もなく、ユニクスは好戦的に微笑むと、


 ドラゴン呼吸法ブレイズ【極】


 おおおおっ!

 いつの間に!


 私は少し驚いた。

 ユニクスは元から、これの下位スキルでもあるドラゴン呼吸法ブレイズは習得していた。

 だが、今のユニクスが使った物は、その完全上位互換となるドラゴン呼吸法ブレイズ【極】だった。


 簡単にやってのけたが、実際はかなりの努力を必要とする。

 どうやら……私も知らない所で、ユニクスなりの努力を積んでいる模様だ。


「リダ様、フラウをよろしくお願いいたしますね」


「ああ、任せておけ」


 淑やかな、彼女らしい笑みを穏和に作るユニクスに、私も同じ位に穏やかな笑みを作ってから返事した。

 全く……末恐ろしいねぇ。

 勇者になっていたのは分かっていたけど……もう、いつユニクスに抜かされても、あたしゃ驚かないかも知れない。


 ……まぁ、でも。

 私も負けないけどなっ!


 そうそう遠くない内に好敵手ライバルになりかねない勇者ユニクスを尻目に、私は彼女を見送って見せた。

 私も可能な限り『睡眠学』のスキルをフル活用して、自分のレベルアップをする努力をしないと行けないな。


 ああ、そうそう。


 多分、ユニクスは一人で戦う気だろう?

 まぁ、向こうはその限りじゃないから、そのおこぼれがコッチに何体か来るかも知れないが。


 どうあれ、私なりにユニクスを応援しないとな?


 思った私は、


 スーパー攻撃力上昇魔法オフェンスアップレベル99!


 スーパー防御力上昇魔法ディフェンスアップレベル99!


 スーパー身体能力上昇魔法スピードアップレベル99!


 ユニクスと自分、フラウの三人を対象に補助魔法を展開して見せた。


「おお……有り難い。リダ様の愛を感じます!」


 ないから、そんなの。

 

 己の身体能力を瞬時に超アップさせたユニクスが、ある意味でいつも通りの喜び方をしていた。

 取り敢えず、聞かなかった事にしておいた。


「よぉぉぉぉしっ! お前達の相手は、この勇者ユニクスが受けてやる! いくらでも掛かって来い!」


 俄然やる気になっていた勇者レズを前に、兵士達は少し困惑していた。


 まぁ、槍の一撃をアッサリと不可思議な方法で完封していた脅威が、リアルに恐怖になっていたのかも知れない。

 人間、分からない事の恐怖ってのは大きい。


 例えば、幽霊とかな?

 分からないから怖いんだ。

 もしかしたら……蓋を開ければ大した事じゃないかも知れない。

 逆に言うのら、本当に危険な場合もある……つまり、どっちか分からない。


 だから、怖いのだ。

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