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巨人の里・カウル【12】

「いえいえ、とんでもないです。こちらこそ、貴方に分かって貰う為とは言え、里の木を張り倒してすいませんでした」


 礼儀正しく頭まで下げてきたコーモランを前に、みかんもペコリとお辞儀をして見せた。


 おお……なんだか良く分からないが、良い感じで和解してるんじゃないか?

 この調子なら、パラスを待つ事なく、里の中に入る事が出来るかも知れない。

 そんな期待を胸に抱いていた頃……。


「お前が言いくるめられてどうするんだ、コーモラン?」


 その考えが物凄く甘いと言う事を思い知らされた。


 思わぬ方向から声がする。

 見ると、数人の兵士を引き連れた男が現れる。


 ……なんだろう。

 地味に雲行きが怪しくなって来た。


「あ、兄貴っ! いや、この方々は里の窮地を救う為にやって来た、大切な客人なんだ!」


 コーモランに兄貴と呼ばれていた男に、コーモランが切実な声を張り上げて見せる。

 半分は演技と言うか、ホラも含まれてはいるのだが……まぁ、なんてか上手に騙してくれたお陰で、すっかりコーモランを味方に出来たみたいなんだが……。


「だから言ってるだろう? お前が言いくるめられてどうするんだ? そもそも、コイツらが俺達巨人を助けると言う証拠はあるのか?」


「証拠ならある! パラスがそうと言ってたんだ!」


 冷ややかに……落ち着いた声音で言う男に対し、コーモランは感受性の高い声を返してみせた。


「ああ……あの裏切り者か? ヤツなら今頃は地下牢の中だろう……全く、堂々と里の禁を犯すとは……外の空気を少し吸い過ぎたのかも知れないな」


 コーモランの言葉に、男は嘆息混じりで驚きの事実を平然と口にした。

 パラスが、牢に入れられた……だと?


 どうしてそうなったのか? ここにいただけの私にとって、それを知る方法など皆無ではあるのだが……。


「それは誤解があるぞ、兄貴! この方達は本当に俺達巨人族を救護する為にやって来ただけの人達なんだ! パラスを見たか兄貴? ヤツは普段通りの穏やかで優しい男だった! いつもと変わらないヤツだった! ガキの頃からいつも一緒にいた俺には分かるんだよっ!」


「お前がどうあれ、族長の言葉と巨人族の掟が全てだコーモラン。お前も我らの邪魔をするのであれば……敵とみなすぞ?」


「……くっ!」


 事態は私が考えていた以上に深刻な様子だ。


「……およ~」


 コーモランと、その兄貴らしき人物の会話を聞いていたみかんは様子を見つつも、次なる算段を考えている模様だ。


 ……いや、違う。


「こりゃ、ちょっと不味いですねぇ」


 そうと呟いていたみかんは……ああ、なるほど。

 さりげなぁ~く、倒れていたういういに近付いていたみかんは、そのまま、ぐったりと気絶状態にあったのを確認してから、ういういを背負って見せた。


「おい、貴様っ! 勝手な真似をするなっ! お前から捕まりたいのか!」


「うぉう、見てたか~……ちゃっかりしてるです」


 お前に言われたくはないと思うぞ。

 ういういをオンブした所で、これまた隙を見計らって逃げようとしていた所を、コーモランに兄貴と呼ばれた男に大声で呼び止められた。


 そこからオンブしていたみかんを、コーモランが兄貴と読んでいた彼が引き連れていた兵士にぐるりと周囲をかこまれた。


「おふぅ~っ!」


 完全に包囲されてしまったみかんは、思わず冷や汗混じりに叫んでいた。

 普通に私らを見捨てて、自分らだけトンズラしようとするからそうなるんだよ。


「なんて事でしょ~。絶体絶命の大ポンチです!」


 それを言うならピンチだ。

 本当なら、かなり危険な筈なのに、全然緊迫感がないのは……ああ、もう良いや。

 どうせ、みかんからすればピンチって程でもないしなぁ……。


「捕らえろ!」


 コーモランに兄貴と呼ばれた男……てか、この表現長いな。

 いいや、もう、兄貴で。


 ともかく、兄貴が兵士に号令を掛けると、包囲していた兵士達が一斉にみかんへと襲い掛かる。


「だから言ってるじゃないですか? みかんらはアンタらを助けに来たんですってばっ!」


 叫びつつ、


 ドカッ!


 兵士の一人を蹴り上げ、


 ドスッッ!


 隣にいた兵士を回し蹴りで蹴り飛ばし、

 

 ガンガンッ!


 最後に残った二人の兵士を連脚で張り倒した。


 お花畑のういういを背負っていたので両手が使えない為、全部足での攻撃だったのだが……。


「相変わらずと言いますか……案の定と言いますか、みかんさんは鬼の様に強いですね」


 近くで見ていたユニクスが微妙な顔になって呟いた。

 みかんの強さは、ニイガやコーリヤマでの出来事によって、ユニクスも色々と見ている。


 それだけに、今の戦況を目の当たりにしても、特に驚く様子はなかった。

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