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巨人の里・カウル【9】

 



   ●△◎△●




 向こう岸に辿り着いた私達は、みかんの召喚した魔法の絨毯じゅうたんから降りて、カウル島の地面に足を付けた。


 恐ろしく何もない所だった。


 こう言うのを大自然と言うべきなんだろうか? 

 それとも、のどかな農村と表現するべきか?


 何となくだか、どっちも当てはまる様な……そうでもない様な?

 そんな不思議なエキゾチック感があった。

 まぁ、異国ではあるんだがな。


「俺達の部族……と言うか、巨人の里はここから歩いて半日の所にある。ここからは徒歩だな」


「え? ここから半日もあるのか?」


 少し驚く私がいた。

 まぁ、かなりデカイ島だしな……その位はあるのか。


「みかん、もう一回絨毯を出そう」


 パラスの話を耳にしたういういが、間もなくみかんへとそう提案して見せるが、みかんは即座に首を横に振って見せる。


「こう言うのは、楽しちゃダメです。ちゃんと自分の足で歩いて冒険するからこそ楽しいのです。トレジャーハントの醍醐味なのです!」


 えぇぇ……。

 ういういではないが、私もげんなりした顔になった。

 お前らはそれで良いかも知れないけど、私らは冒険しに来た訳じゃないんだぞ?


「まぁ、良いじゃないですかリダ様」


 そこでユニクスが、肯定的な声音を私に示した。

 いや、私的には早く族長と話がしたいんだが?

 ゴグ族だかゴグマ族だかが攻めて来るらしいし……てか、楽したいし。


「恐らく、リダ様が思っている程、現状は危機迫ってはいないと、私は考えているんです……それなら、ゆっくり徒歩で現地に向かうのも、旅の楽しみかなと」


 ユニクスは、きさくに笑って言う。 

 なんと言うか、普段のユニクスは本当に悠然と構えているんだよな。

 勇者らしいと言えば間違いない。

 堂々としていつつ、心にゆとりを持ってどっしりと構えている。

 

 これでレズじゃなかったら完璧なんだけどなぁ……。


「ともかく、ここからだと半日は掛かる。夕日が沈む前に里に行こう。夜行性の猛獣が獰猛で面倒な事になるからな?」


「そ、そうなの?」


 パラスの説明を耳にして、フラウが顔を青くさせた。

 何となくだか、寝耳に水って顔だった。

 きっと、お気楽な観光気分でここに来ているのだろう。


 ……もう少し緊張感があった方が良いかも知れないな。


 なら、徒歩も悪くはない。

 フラウに渇を入れると言う意味で。


「良し、それじゃ先に進むか」

  

 そこから、私達はパラスの案内を元に、道なき道を歩いていく。

 山道と言う山道すらない。

 本当に原っぱだったり山の中だったり……木々の生い茂った場所を進むと言う、サバイバルチックな道程を進んで行った。


 ……そして。


 真南に昇っていた太陽が沈み掛けて来た頃……。


「も、もう……ダメ」


 フラウの精根が完全にノックアウト寸前にまで陥り、そろそろへたり込んでしまうんじゃないかと予測していた頃、集落の灯りらしい物が、私達の視界に入って来た。


 ……?


 なんだろう?

 

「普通だな?」


 言い得て妙だが、私は集落の灯りを軽く見て、思わずこんな台詞を口にしてしまった。

 それと言うのもだ?


「あれ、大きさ的に普通じゃないか?」


 かなり遠い所から見ているからなのか? と、最初は思ったんだが……どうも違う。

 あの集落は普通の人間サイズと言うか、そう言う大きさしかない。


「そうですね。私も意外でした。巨人の里と言う位でしたから、てっきり巨人サイズの家が立ち並んでいるのかと思ってたのですが……」


「巨人のままだと、エネルギー効率が悪いからな。妊婦以外の巨人は基本的に普通の人間と大差ない大きさで生活してるんだ。そっちの方が、少ない穀物で長く生活する事が出来るからな」


「なるほど」


 パラスの説明を受け納得してしまった。

 巨人なりに見つけた、生活の知恵なのかも知れない。

 ……てか、だ?


「妊婦は巨人になるんだな?」


「赤ん坊は巨人だからな」


 ……なるほど。

 これまた言い得て妙だが、腹の中にいる赤ん坊が人間サイズで生まれて来るかと言えば……答えは否。

 実際は巨人なのだから、自然のままであるのなら巨人として生まれて来るだろう。

 妊婦は人間サイズであっても、生まれて来る赤ん坊まで人間サイズではないと言う事になる。


「妙に生活感があるんだな……」


「当然だろう? ちゃんと生活してるんだ。土地特有の知恵だって、生活の中から自然と生まれて来る。別に人間だけが生活感のある存在って訳じゃない」


「まぁ、そりゃそうだ」

 

 なんだろう? 今日はちょっとだけ勉強になった気がした。


 パラスの説明をアレコレ聞きながら、私達は里へと向かう。


 そして、里の入り口まで差し掛かった時だった。


「止まれっ! お前らは何者だっ!」


 やたら武骨な顔と体格をした男に呼び止められた。

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