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巨人の里・カウル【5】

 ……なんか、びみょーな空気が出来上がってしまった。


 いや、まぁ。

 パラスならまだ良いとは言ったけど……これ、フラウに末代まで祟られそうなシチュエーションだよな?


 うむ!

 それは洒落になってない!


「ま、まぁ……ともかくだ? 私は巨人の里に行く。フラウも行く。ユニクスは逝くで良いじゃないか」


「最後のユニクス姉だけ死んでるけど……そうだね。ここでリダに妙なポイントを上げる訳には行かないって事は確実だし」


 フラウは、何処か自分に言い聞かせる感じで、何度も頷いていた。

 それで良い。

 無駄に余計な事を考えると、まぁーた面倒な事になるからな。


 かくして、私達はパラスの地元でもある巨人の里……カウルへと向かう事になった。


 ちなみに、余談になるのだがルミは来ない。

 ルミの春休みはイリVerの二編目に出て来ると思うので、気になった人はそっちを見ると良いかも知れない。

 

 ……この時点では、まだ向こうは第一編が終わったばかりで、第二編は始まってないかも知れないけどな!


 閑話休題。


 その後、終業式を終えた事で春休みに突入した私達は、一路パラスの故郷である巨人の里へと向かうのだった。




  ●△◎△●




 トウキから距離にしておよそ1200キロ。 

 カントー帝国を抜け、大陸を横断し、最西端に位置するイーシ国の更に西側……つまり、海岸までやって来た。


 このまま西に進むとするのなら、完全に海の上だ。

 一体、何処まで行くつもりだと言うのだろう?

 まさか、海底の町とか言わないよな?


「ここまで来れば、俺の故郷はもうすぐだ。この先にある大きな島……それが俺の地元だ」


 そこはかとなく懐疑にも似た思考を張り巡らせていた私がいた所で、パラスがそうと言って来た。

 ああ、そう言う事な?


 少なくとも、陸地で良かった。


「すると、ここから先は船で行くって事になるのか?」


「……そうしたい所だが、船が出ていればそうしたい」


「……? あるだろ? 巨人が住んでるって事は大きな島なんだろう?」


 何とも歯切れの悪い口調のパラスに、私はハテナ顔だ。


「何か事情があるのね?」


 ハテナ顔になっていた私の隣にいたユニクスがそこでパラスに聞いてみた。

 パラスはコクりと頷いてみせる。


「リダを連れて来た理由がそれだ」

 

「私を?」


 ……ふぅーむ。


 私を連れて来た理由は、確か……


「ああ、そうだ! 巨人の里にある地酒を楽しむ事だった!」


「それはお前が勝手に思ってる事だろ? その前に話していた抗争の所だ」


 思い出す感じでひらめいた私に、パラスは眉をよじってぼやいた。

 ああ、そう言えば抗争がどうのってのがあったな。


「この辺りには、昔……千年以上前に聖地サンクチュアリを巡って争ったゴグ族とゴグマ族の子孫が住んでいるんだ」


「ほうほう」


 確か、どっちも巨人の祖だったか?

 伝承によってはゴクゴクマなんて巨人がいる位だしな。


 ただ、神話時代にまでさかのぼると、ゴクゴクマはそれぞれゴグとゴグマと言う別の巨人だったらしい。

 

「このゴグ族とゴグマ族は……俺達ティタン族と、その兄弟にあたるギガンテス族の二部族と聖地を争う戦いをしたんだ」


「……なるほど、それは昔話で聞いた事がありますね」


 説明して行くパラスに、ユニクスが思い付いた感じの声音を吐き出す。


「確か……この先にある大きな島は、一人の巨人から産み出された物だったと聞いております」


「その通りだ。全ての巨人にとっての祖となる大いなる巨人が死んだ後……その亡骸を海に浮かべた時に生まれた、巨人の聖地でもある」

 

 思い出す感じで口を開くユニクスに、パラスが相づちを打った。

 

「なるほど。つまり、パラスの故郷はその聖地に当たる訳だな?」


「そう言う事だ」


 ふーむ。

 そうか……そうなるのか。


 けれど、だ?

 ここで私なりの疑問が生まれた。


 巨人が聖地をめぐっての争奪戦をしていたのは、今から千年も昔の話だ。

 今となっては昔話どころか、ただの伝承だぞ?

 古事記とかそう言うレベルの伝承だ。


「なんで、今頃になって抗争が再燃したんだ?」


「実は、前々から多少の小競り合いはあったらしい。今になってと言う訳ではなく、何十年かに一回程度は、その規模に違いがあれゴクとゴクマ族が聖地奪還しようと、俺達の里に攻め込んで来たそうだ」


 以外と根が深いんだな。


「そして、つい最近になって……またも、ゴクとゴクマ族の末裔が、俺達の里を狙い始めているらしい」


 パラスは渋い顔になった。

 ……ぐむぅ。

 もし、パラスの言う通りになっているとしたら、今いる所はパラスにとっての敵に値するエリアとなる。


 当然の事だが『里帰りしたいんで、船を出して貰っても良いですか?』なんて言えない。

 

「参ったな……」


 私は思わず苦笑してしまった。


 その時だった。


「お、およ~っっっ!」


「うわぁーっ!」

 

 変な二人が空から落ちて来た。

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