【5】
「こ、こんな事って………」
目を白黒させるペッタン子。
気持ちは分からなくもない。
今まで感じた事のない、それこそ桁違いの魔力を感じてるだろう。
他でもない自分の中に。
『これからも、一層の精進を積む様に。そうすれば、これ以上の力を手に入れる事も出来る。君の守護霊はとても綺麗だ。そして力強い。遠くない未来に君の力はきっとこの世界を救うと私は確信している』
ニコッとやんわり笑顔を見せ、アグニはスゥ……と、姿を消して行った。
………そうか。
まさか、あのアグニに認められてしまう学生がいるとはな。
驚いた反面、嬉しくもる。
それだけ、この世界がおかしいんだ。
理由は分からないままだけど、確実になんらかのバランスが崩壊しつつあって、今まであった常識すらなくなりつつある。
こんなおかしな事が続けば、いずれ世界は破滅してしまいかねない。
だからこそ……この学園は必要なんだ。
魔族なんかに壊されてたまるか!
「ふ、ふふふふっ!」
……ん?
いつの間にか、色々と復活していたペッタン子。
さっきまで、小便チビりそうな顔してたクセに。
「どうしたペッタン子? 何がそんなにおかしいんだ?」
「だから! 私はフラウ・フーリだと言ってるでしょーがぁぁっ!」
やたら威勢が良くなったペッタン子。
まぁ、あれだ。
現状だと不相応な力を貰ってしまったから、態度まで大きくなってる感じだな。
「さっきは、良くもやってくれたな!」
別に私自身はなにもしてないのだが?
「アグニ様の力を得た私は、今や学園最強の魔術師! ううん、人類最強かも知れない!」
それはちょっと調子にのり過ぎだ。
人類最強の魔術師とやらが、何を指しているのか知らないが、アグニ本体すら瞬殺出来るだろう人間寄りの存在はいるし、学園最強ってのも無理だ。
この学園には会長が絶賛在校中だからな!
「ほ~。もしかして私にまだ勝てると思っているのか?」
「当然じゃない! 今度こそ勝って見せる! 新しい力で!」
「……はぁ」
若いねぇ……アミュレットは子供の玩具じゃないんだぞ。
ちょっと力を手に入れた位で、舞い上がり過ぎだろう。
とは言え、まだ一五才の少女だ。
まだまだ、井の中の蛙であっても、仕方ないのかも知れない。
「おい、ペッタン子。サーチは使えるか?」
「ペッタン子じゃないけど、サーチは使える」
未だペッタン子は認めないが、サーチを使える事だけは認めた。
サーチと言うのは、能力測定魔法の事で、相手の能力を数値化して、あらましの強さを知る事が出来る魔法だ。
元々、魔法自体は初歩的な魔法で、ちょっと魔術をかじってるヤツなら、誰でも使える。
だが、格上に使うと抵抗され、サーチに失敗する。
よって、格下相手にしか使えない魔法でもある。
「んじゃ、私に掛けてみろ。大丈夫、レジストはしない」
「………何がしたいの?」
「やれば分かる」
私はニッと笑みを作った。
正直、私はこの魔法……あんまり意味がない物だと思っている。
サーチした数値は飽くまでも目安にしか過ぎず、サーチ後に能力強化魔法などでステータスを上昇して来た場合、最初にサーチした数値など何の役にも立たなくなるからだ。
強いて言えば、自分が分かってる補助魔法で強化していた場合、相手の数値に補助魔法で強化した効果分を計算すれば良いのだが……そうじゃない場合は、もうお手上げだ。
まさに未知数って答えになる。
それじゃ、サーチの意味がない。
「ほれほれ、早く掛けてみろ」
「何がしたいのかサッパリだけど、分かった……サーチ」
ペッタン子はそこで、私に向かってサーチの魔法を掛ける。
すると、私の持つ能力等の基礎的な詳細がペッタン子の脳に直接数値として送られて行く。
「………………………なにこれ?」
ドン引きしやがった!
見せておいて言うのも難だけど、そこまでのアクションを見せられるとちょっとヘコむぞ!
「私のステだ。但し基礎な? 本気の私はその数値の数千倍にはなる」
「ばけもの?」
「違うし! そんな事ないし!」
会長泣いちゃうし!
けど、これで私に歯向かう気にはならないだろう。
実力の差が如実に現れてるからな。
無益な争いなど、回避出来るのならそれに越した事はない。
「しかも、なにこれ? ランクL+? 世界冒険者協会・会長?」
あああああああっっっ!
「いや、まて! そこは見るんじゃない!」
そうだった!
サーチは、無駄に細かい詳細まで出て来るんだった!
バカだろあたし!
「ランクL+なんて、初めて聞いたし」
そりゃな。
通常のランクはSSランクの+で終わりだ。
D・C・B・Aまでは純粋にアルファベットだったし、当初はAが最大だった。
しかし、A+までだと同じA+でも実力差があり過ぎて困ると言う事で、新しい格付けが出来た。
SUPERの頭文字から取った為、Sランクと呼ばれた。
だが、これでも足りなかった為、その上にスペシャルランクとしてSSが生まれた。
これで、概ねうまく行ってた。
……いっていたんだが。
「希に、何年かに一人程度の割合で、SS+ですら大幅に超過してしまう実力者が出てな」
それが私こと、リダ・ドーンテンと言う事になる。




