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前々世【15】

 どうにも良く分からない謎の美女を前にして、私が小首を傾げていた頃、


「ちょっと、ラー! アンタ、なんでこんなヤツ相手に頭なんて下げてんの? 自分のやってる事が分かっている訳っ⁉︎」


 アラビカが眉を大きく釣り上げながらも、ラーと呼ばれる美女へと叫んでいた。

 

 すると、ラーと呼ばれた美女は冷ややかな表情を作りながらもアラビカへと声を返して行く。


「アラビカ様こそ、もう少し慎むべき事ではありませんか? この方がどんな方なのかご存知ではない様に見えて仕方がないのですが?」


「そんな事はサービエ君達から聞いてるし! 単なるモルモットでしょ? それ以上でもそれ以下でもないじゃないの!」


「……はぁ」


 相変わらずドキュンも真っ青な思考で、至極当然の様に私を罵倒して来るアラビカを前に、ラーと呼ばれる美女は重いため息を吐き出した。


 そこから、少し気疲れを起こした様な表情のままアラビカへと言う。


「この方は、世界・冒険者協会の会長です」


「……え?」


 ラーと呼ばれる美女……って、長いなこの表現……もう良いや、ともかくラーさんの言葉に、アラビカはポカンとした顔になってしまった。


 これには私も驚いた。

 まさか、私の正体をアッサリ見抜いていたとは……。


「ああ、やはり知りませんでしたか……当然と言えば当然かも知れませんね? 知っていたのなら、咲穂のだがのアラビカ様の様な口の利き方など、出来る筈もございませんもの」


「そこは……その……そうかも知れないけど! 何? 冒険者協会の会長……って、あのリダ・ドーンテン?……ん? リダ?……え? えええっっ⁉︎」


 どうやら、私の名前は最初から知っていた模様だな?

 アラビカは、会長の名前であるリダ・ドーンテンの名前を口にした後、私の名前が全く同じである事実に気付いた。


 なんて間抜けな気付き方をしているのだろうか?

 そもそも、冒険者協会の会長をしている私の名前を最初から知っていたのであれば、その時点でソッコー気付けよ?……と言いたい。


 まるで『ここは何処?』と尋ねられて『スーパーだ』と返したあと『スーパーって何?』と言う質問を受けて『買い物をする場所だ』と答えたら『あ、なんだスーパーの事か!』と、ふざけた納得の仕方をしている間抜け人間に見える。


 やっぱりアラビカは、オツムのネジが、他人よりも少しばかり緩い模様だ。

 マトモに取りあうだけ馬鹿らしい相手なのかも知れない。


 そこらはともかくとして。


「冒険者協会の会長でもあるリダさんは、アラビカ様に敵う相手はございませんよ?……ええ、日々私の指導から逃げに逃げまくり、鍛錬を怠るどころか基本的に何もやらない横着者の集大成とも言えるアラビカ様が、冒険者最強とも言われているリダ・ドーンテン会長になど勝てる筈がございません。一秒立っていられたら良い方でしょう」


「そこまで言わなくても良いじゃない!……と言うか? 一秒は以上は立っていられたし! 私だって強くはなりたい気持ちはあるんだけど、練習とかトレーニングは嫌なの! だってかったるいから!」


 ホトホト呆れた顔のまま答えるラーさんの言葉に、ひたすら自分に甘い台詞を臆面もなくほざくアラビカの姿があった。


 ……たるいと思っている時点で、もう私的には冒険者に向いてないとさえ思うぞ。

 どんな物でも、一朝一夕でどうにかなる物ではないし、一定の努力はする物だし……それが出来ない時点で、お前には向いてないからな? マジな所!


 ひたすらクッソ甘い事を言うアラビカを前に、ラーさんは人差し指を額に当てた。

 きっと、頭痛薬が恋しくなってしまったのだろう。


「そんな考えだから、アラビカ様はいつまで経っても、ただ他人より少しだけ力がある女で終わっているのです……最初からやる気がないのであれば、テキトーに花嫁修行でもして、そこらの貴族辺りと結婚してくれませんかねぇ……こっちもそこまで暇ではないので」


 アラビカの相手をするのも嫌だと言わんばかりの表情になって言うラーさん。

 気持ちは分からなくもない。


 その一方、少しばかり気になる事がある。

 ラーさんとアラビカの関係だ。


 見る限りだと、一応……本当に一応ではあるんだが、アラビカへと敬語を使って話しをしている。

 また、アラビカの事を『アラビカ様』と呼んでいるし。


 ここらを考慮するのであれば、


「やっぱりアラビカは、それなりに位の高い人間なのか?」


 私はそれとなくラーさんへと尋ねる。


 すると、ラーさんはニッコリと淑やかに微笑みながらも答えた。


「高いも何も、キートと言う名前を持っている時点で、リダさんならある程度の察しは付くのではございませんか?」


 ……そう来たか。

 ラーさんの言葉を耳にして、私は納得してしまった。

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