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前々世【10】

 リンネル君の名誉の為に敢えて言うと……決して、彼の言葉を私が信用していない訳じゃないんだ。


 問題は、まともな思考を持っているのは『リンネル君だけ』と言う所だな?

 簡素に言うのなら、リンネル君だけが頑張っても無理だと考えている。


 アリンをトウキへと戻してくれる様に、色々と手を回してはくれるだろうし、一定の嘆願などもしてくれるかも知れないけど……それで研究所の方が首を縦に振ってくれるかどうかは微妙だし、むしろ激しく突っねる可能性の方が高い。


 んじゃ、どうするか?

 もう、私の心は決まっている。


 私本人が、直接オーサの街へと乗り込んでやる!


 取り敢えず、アリンちゃんがオーサの方にある学園へと、交換留学生として向かっているのであれば、私も同じ要領でオーサへと、トウキの学園代表として向かえば良いだけの話しだ。


 ある意味、危険な賭けになってしまう可能性は否めない。

 敵の本拠地へと、単身で乗り込む事になってしまうのだからな?


 しかしながら、私は思う。

 虎穴に入らずんば、虎子を得ずだ!……と!


 一定の危険やリスクがあるからこそ、リターンもまた大きい。

 いや、違う。

 この場合であるのなら、そこまでやらないとリターンされない!


 愛娘の為なら、多少の危険なんて笑って立ち向かってやろうではないか!


 ……まぁ、後はバアルがちゃんと頷いてくれるかどうかが問題だな?

 学園長をしているバアルは、今回の交換留学に関係する、アレコレを色々と知っていると思う。

 また、交換留学生を決める権利等も発生しているだろう。


 元来であるのなら、もう既に誰が行くか決まっている……と言うか、トウキの方からも何人かがオーサへと旅立ってはいるんだろうけど、そこに私を飛び入り参加させる様に、バアルへとお願いする予定だ。

 素直に首を縦に振ってくれたら良いのだが……ここに関しは、まだ実際に頼んでみないと分からないな?


 ま、意地でも首を縦に振らせるんだけど。


 そこはともかく。

 リンネル君の前では、敢えて彼の意思を尊重したい為、彼の口から吉報を期待する感じの態度を取ってはいたけど、心の中では既に決まっていた。


 アリンを連れ戻す為に、私はオーサの街へと向かう!


 次の目的も決まった所で、私は軽く席を立った。


 軽く外を見ると……ああ、完全に日が暮れてるな?


「少し話し込んでしまったな? はは、すまない」


 すっかり日が暮れてしまい、外が真っ暗になっていた事に気付いた私はお茶を濁す感じに苦笑しながらも、近くにいたリンネル君へと口を開く。


 実際、かなり話してしまったからな?

 時間にして、軽く二時間は話していたんじゃないだろうか?

 

「いえ、全然大丈夫ですよ? 遅かれ早かれ話そうと思っていた事でしたから……むしろ、手間が省けたぐらいです」


 リンネル君はにこやかな笑みのまま言う。

 本当に気の良い性質を持っていると思うよ。


 出来れば、敵に回したくはない相手だとも……さ?


「さて? それでは帰りましょうか?……あ、実は僕も学園寮の一室を借りているのですよ? もちろん男子寮ですけどね?」


 リンネル君は、少し戯けた口調で答える。


 余談だが、学園寮は性別によって棟が分かれている。

 簡素に言うのなら、男子寮と女子寮の二つに分かれている訳だな?


 ただ、建物が違うと言うだけの話しで、距離的にはそこまで遠くない。

 ほぼ、隣と言っても良いレベルだな?

 

 つまるにそれは、


「じゃあ、途中までは一緒だな?」


 私は言う。

 今いる喫茶店から、学園までは全部同じ道と言う事になる。


 学園の敷地内に入ってから移行も、違いがあるのは建物が隣にあるかどうかの違いだけだ。

 そうなれば、一緒に帰っても良いだろう。

 同じ帰り道だと言うのに、わざわざ別々に帰る必要性なんぞないからな?


「そうですね? それじゃ、途中まではご一緒してもよろしいでしょうか? 僕もまだ土地勘が良く分かっておりませんし……女性が夜道を一人で歩くと言うのも、何かと不用心でしょうから」


「ははは! 中々にジェントルマンな台詞を言うな? 気に入った!」


 率直に言うと、トウキ帝国内であるのなら、女性が夜道を一人で歩いていても大した危険もありはしないのだが……男としてかよわい女子を守ろうと言う気遣いは嬉しい物だ。


 うむ! そうだぞ?

 私の様な、可憐な乙女を大切にしようと言う気持ちをしっかりと持っているのは、実に感心出来る内容だ!

 やはり出来る男は違うねぇ……。


「じゃあ、学園寮の前まで一緒に帰る事にしようか」


 快活な笑みのまま答えた私は、程なくして喫茶店の会計を終え……自宅のある学園寮までリンネル君と二人で雑談を交えながら帰って行くのだった。 

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