前々世【5】
尤も……教えてくれない? と言って、素直に教えてくれる雰囲気ではなかったのだが。
「……そんな、僕の必殺技が、こんなにも簡単に……?」
唖然とした面持ちのまま、カタカタと肩を震わせて答えるサービエ君。
心成しか? 少し私に恐怖を抱いているかの様な?……って、ちょっと待て?
「さっきから勝手し放題だな? サービエ君よ? 少し顔が可愛くて、私好みのショタ顔をしているからと言って、余りにもオイタが過ぎると……単なる火傷では済まないぞ?」
「……ヒィッ!」
軽く睨むと、一気に表情を青くさせては、リンネル君の背中へと逃げ隠れてしまった。
……なんだか、いじめっ子にでもなってしまったかの様な気分だ。
別に私はそんなつもりなんぞないと言うのに!
「兄さん! 助けてよ! こんな化物だって知ってたのなら、僕だって色々と用意したのに!」
程なくして、必死に縋り付く形でリンネル君へと叫んで見せた。
マジで身勝手な少年だな? 普通に根性が腐っているとしか、他に形容する言葉が見当たらないのだが?
ついでに言うのなら、少し気になる台詞を口にしている。
ちゃんと用意したのに!……と言う台詞だ。
この言葉に間違いがないのであれば、ちゃんと用意する事が出来たのなら、私には負けない!……と言う事になる。
それは、どんな用意が必要だったのかな?
こんな事を考える私がいた頃、
「リダさん……ここは、貴方の要望に『可能な限り応える』と言う事で、許しては貰えませんか?」
肩を竦める形でリンネル君が言って来た。
顔は、かなり不本意極まっている。
簡素に言うのであれば、リンネル君本人からすると、顔で全てを語っていると述べても過言ではない心理状態だったのだろう。
……うむぅ。
「……仕方ない。じゃあ、今回はリンネル君の顔を立ててやろう……ただし、今回だけだぞ?」
次はないからな?
その時は覚悟して置く事だ。
特に、リンネル君の背中に隠れたショタ君!
顔は満点だが、中身はマイナス満点だ!
差し引きゼロで0点だぞ!
「ありがとう。何かと失礼な事をしたから、リダさんの気分を大きく損なっていないか心配だったよ」
実際の所は、盛大に気分を激しく損なってはいたんだがな?
けれど、リダさんは平和主義だからな?
穏やかで淑やかなリダさんの性質に感謝して欲しい所だぞ。
ややホッとしたリンネル君がいる中、私は心の中でのみ悪態を吐いた。
実際に口にしても良いのだが、流石に傲慢だと思えたからなぁ……。
それに、リンネル君も私に対して協力的な態度をとってはいる見たいだし。
ここは私も軟化する態度をとった方が得策だろう。
思った私は、
「それじゃ、早速で悪いんだが……私の問いに答えて貰っても良いか?」
直様、貪欲に情報を求めた。
自分で言うのも何だが、現状の私は無知に等しい。
余りにも情報がなさ過ぎて、考えると言う行動すら出来ないと言うのが現状だったからだ。
「そうですね。分かりました。僕の知っている限りの事は全てお伝えしましょう。これで良いですか?」
リンネル君はにこやかな笑みで快く承諾する。
うむ、良かった。
さっきから、地味に好戦的だったから、素直に話しをしてくれるか心配ではあったからな?
そう考えると、ショタ君が来てくれて良かったのかも知れない。
結果的にではあるが、ショタ君が来てくれた事で、状況が色々と軟化する顛末を生んだからだ。
……ま、本当に結果的に、ではあるんだけどな!
何はともあれ、多少荒っぽい状態から普通の話し合いへと転じた事は、私としても好意的に捉えたい。
「それじゃあ、話しを聞こうか?」
答えた私は、間もなく歩き始めた。
そんな私を見て、リンネル君は不思議そうな顔になる。
「話しをするのではなかったのですか?」
「もちろん、色々と話しを聞かせて貰うつもりでは居るよ? むしろ、聞きたい事が多すぎる……だから、思ったんだよ? 立ち話では難だな、と?」
私は軽く肩を竦めて答えた。
「なるほど、そう言う事ですか」
私の言葉を聞いたリンネル君は、納得加減の表情になってから相づちを打って来た。
それだけ長い話しになると、リンネル君も思っていたのだろう。
「……ふん、モルモットに話す事なんて、何もありはしないのに」
他方、リンネル君の背中に隠れていたショタ君が、何かイラッ! っと来る様な台詞をほざいてくれちゃっていたが……ここは聞かなかった事にした。
コイツの言葉を額面通り間に受けていたら、きっと私の怒りゲージが秒でマックスまで到達しかねないからな!




