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前々世【1】

 本当かどうかなど知らない。

 ……知っている訳もない事なのだから? それを確かめる方法など皆無に等しく、また知る方法だってない。


 そもそも、考える事があったか?

 自分の前世の……そのまた前世の自分なんて。


 私の中に残されていた魂の追憶なんて。


 元来であるのなら、今の私と大きく関わる筋合いも、必要性も何もない筈だと言うのに……しかし、今の私へと過去の私が大きく大きく付き纏って来る。

 全く……どうしてこんな事になっているのやら……?


 理由も事情も分からない。


 ただ一つ、明らかになった事は……私の前々世が素因になっていると言う事だ。

 

 一体……私の前々世に何があったと言うのか?

 前々世の私が、何をしたと言うのか?

 今の私には、極々当然の様に、何も分からなかった。




「もう一つ、僕がリダさんの前にわざわざやって来た理由があるんだよ?」


 そう答えたのはリンネル君。


 場面は、前回と同様に廃工場の中で、彼が私へと衝撃的な話しをして来た所だな?

 ハッキリ言って頭がついて行けず……衝撃的な彼の言葉に唖然としていた時、リンネル君は笑みのまま話しを続けて来た。


 私の精神がもう少し落ち着いていたのであれば『勝手に話しを進めるんじゃないよ!』って感じのツッコミを入れたかも知れない。


 いや、だってだ?

 リンネル君達が私やアリンを狙っている理由の大元……素因を突き詰めて行くと、私の前々世にたどり着くのは分かった。


 じゃあ、私の前々世で何が起こったから、私達を狙っていると言うのか?

 その直接的な根拠を、リンネル君はまだ私に答えてない。


 意図的なのか?

 それとも、結果的にそうなってしまっただけなのか?

 そこらの判別はちょっと難しい所だな?


 あるいは、後から言うつもりだったのか……?


 そんな事を考える私がいた頃、


「僕は、キミに大きな興味を抱いているんだよ」


 いきなり、更なる衝撃がっ⁉︎


 え?……ええっっ⁉︎

 何、これ? もしかして……。


「それは、あれか? 告白か?」


 私は困惑気味に答えた。


「告白?……あはは! なるほどね? それはそれでアリだと思うよ? リダさんは僕の好みにしっかりとマッチした理想の風貌をしているからね? 特にスレンダーな胸元は、僕の好みと言っても過言ではないかな?」


 リンネル君は微笑みながら言う。


 そうか……つまり、貧乳は一つのステータス!


 ………。


 いや、違うし!

 私の胸元は、そこまでスレンダーじゃないし!

 つか、スレンダーとか言うなしっ!


「そうか。分かったよリンネル君。つまり私に喧嘩を売っていると言う事だな?」


「喧嘩?……それは違うよリダさん。僕はただただ純粋に、自分の好みを言っただけさ……けれど、そうだなぁ……」


 そこまで答えたリンネル君は……っ!

 一気に好戦的な笑みに変わると同時に、脅威的な眼光を鋭く飛ばして来た。


 なんだろうか、これは……?

 心の底からやって来る、猛烈な警鐘が私の思考全体に轟くかの様な?

 そんな、本能レベルの恐怖が私の中で生まれ、精神をいたずらに刺激していた。


「……キミに対しての興味と言う意味で一番しっくり来るのが、その部分でもあるんだよリダさん? あなたの戦闘能力は素晴らしい。まさに僕の父が幾重もの世界を渡っても尚、追い求めて来た最高の力でもある……これで、まだ覚醒にすら至っていないと言うのだから、僕も震えが止まらないよ」


「覚醒?」


 しれっとナチュラルに謎単語を折り混ぜて来たリンネル君に、私は思わず眉を捩ってしまった。


 覚醒って何だよ?

 私に、そんな厨二チックな代物が備わっているとでも言うのだろうか?


 良くは分からないが……リンネル君の口振りからしてそうだ。


 ………。


 私の前々世は、どんな奴だったんだ?

 少なからず、この時点で、かなりヤベー奴って事だけは分かったのだが……?


「言いたい言いたい事は良く分からないが……リンネル君に戦意があると言う事だけは理解した」


 私は言う。


 飽くまでも予想の範疇内ではあったが……ほぼ間違いないだろう。

 リンネル君が見せている、凶悪な眼光から察しても……確定域に到達していると見て相違ない。


 リンネル君は、私に戦いを挑もうとしている。


「一つ勘違いして欲しくないので、先に言って置こう。僕はキミにとって敵対する存在にはなり得ない……飽くまでも、キミへと危害を加える事は本意ではないんだ……ここだけは先に言わせて貰うよ?」


 リンネル君はそうと前置きをしつつも……構えを取った。


 ………。


 本当に良く分からない。

 決して敵意はないと口では良いつつ……しかし、完全に戦う気でいるのだから。

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