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交換留学生からの洗礼【19】

 通常、自分の前世を覚えている人間なんぞいない。


 普通に考えればそうだよな?

 自分の前世を知りながらして生まれていたとするのであれば、オギャーって生まれた頃には、一定の知識や経験を積んでいる事になってしまう。

 そんな可愛げのない赤ん坊……私は赤ん坊と呼びたくもないね?


 そう言った、世の中の相場を考慮するのであれば、自分の前世を知る人間は絶無に等しいと述べても過言ではないだろう。


 しかしながら、時折……私の様な特殊な人間も存在する模様だ。


 自分の事なのに、かなりあやふやな言い方をしているが……正直、ここに関しては私も不明瞭な部分が多いからな?

 だから、自分がかなり特異な存在だと言う程度の知識しかないんだ。


 ……さて。

 その上で言うのなら、リンネル君は私を欺く方法として、かなり突飛でもないホラを吹いている事になる。


 通常の人間は、自分の前世なんて知らないし、知りようもない。

 だからして、あなたの前世はこれこれ、この様な存在でした……と言われても『ふーん、そうなんだ』程度の答えしか言う事が出来ないだろう。

 だって、知らないんだから。


 逆に言うのなら、あなたの前世は『人間ではない』と言われても、信じてしまう案件とも言える。


 しかしながら、残念な事にも私に限って言うと、それが真っ赤な嘘である事を知っている。


 なんとも特殊な事に、私は自分の前世をある程度までは記憶している、かなり特異な存在であったからだ!


 本当、こんな記憶があっても、大した役にも立たないと言うか……今まで得した事なんて一度もなったりしたんだけど……今回ばかりは、助かったかも知れない!

 

 理由は簡素な物だ。


「残念だが、私の前世は日本と言う国で女子高生をしていた。極々平凡な学生だな? その記憶もあるぞ? 自分がどうして死んだのかまで分かる」


「……へぇ、意外だね? そんな事まで分かる人間なんて、普通はいないよ?」


「そうだな? 私もそう思う……思うが、だ?」


 そこまで答えた私は、極めて真剣な顔になってリンネル君へと答えた。


「私の前世は普通に人間だった。なんなら今の私よりも極めて普通の人間だったよ。今の様に特殊な能力もなければ、人より秀でた何かがあった訳でもなかったしな?」


 正直、ちょっと残念な気持ちになってしまうまでにな!

 ……こんな事を胸中で考えてはいたけど、そこは言わないで置いた!

 言えば、ちょっと……その、私も残念な気持ちで一杯になりそうだったからだ!


 そこはともかく。


「なるほどねぇ? うん、そこも間違っていないと思う? 僕の父がキミの友人として一緒に居たと言う話しを聞いてもいたし……事実だと思ってる」


 私の話しを聞いたリンネル君は、全く動じる事なく……むしろ完全同意する形で深く頷きを返していた。


 ………。

 どうも妙だ。

 自分の言っている矛盾に気付かないのか?


 仮に、私が自分の前世を知っていたとして……それが事実であると言う事を認めてしまったのなら、もはや自分が嘘を吐いておりますと、自供をしている事になってしまうんじゃないのか?


 仮にリンネル君の言っている事も嘘じゃないとしたら……完全なる矛盾が発生してしまう。

 だって、私は人間をしていたんだぞ?

 極めてオーソドックスな女子高生をしていたんだぞ?

 強いて言うのなら、ちょっと可憐で可愛い女の子をしていたって程度だ。

 この程度なら、そこら辺に居るんじゃないのだろうか?


 何処かの誰かが調査した話しだと、一般的な美女・美少女の確率は全女性の約5%らしいからな?

 逆に言うと、二十人に一人は綺麗または可愛い女子と言う事になる。

 つまり、その中の一人になる可能性は、そこまで希少価値が高いと言う訳でもないだ!


 え? 胸は、どうだったか?……って?


 ……うっ! 頭がっ!


 そこは、ちょっと私の中で記憶が混同しているみたいで、思い出そうとすると、頭痛が激しくなってしまうので……不明だ。

 不明ではあるんだけど、今の私の様に素晴らしいナイス・ボディだったと思うぞ!


 ……てか、そう言う事にしておいてくれ!


 そろそろ、話しを戻そうか?


 ともかく、私は普通の人間だった。

 そして、その事実をリンネル君は普通に認めている。


 なのに、それでもリンネル君は再び言った。


「そこを『含めて』キミは人間じゃないんだよ」


 極めて真剣に。


 もはや、矛盾しか感じる事しか出来なかった。

 いや、意味不明を通り越して不可思議としか、他に形容する事が出来ないのではなかろうか?


 途方もなくおかしな事を言うリンネル君に、私が呆れ返っていた……その時、


「じゃあ、その前の記憶は?」


 更なる疑問を、私へと投げ掛けて来た。

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