交換留学生からの洗礼【16】
途中、フラウが何か言いたそうな顔をしていたけど、今回ばかりは悠長に理由を話しても居られない。
同席していたアラビカにも申し訳ないが、私はアリンを完全に優先する事に出た。
なりふり構わず喫茶店を出た私は、しばらく全力で走り……
「……何処に行けば良いんだ?」
数十秒程度走った所でピタッ! っと足を止めた。
………。
思えば、アリンの所在地が何処なのか分からないな。
現状の私には、誘拐されたアリンの居場所なんで知るよしもないし、そのヒントになる物もない。
なんて事だ! 早くもドン詰まりではないか!
いや、待て!
こう言う時こそ、しっかりと冷静に知恵を絞らせるのだ!
私は可能な限り、今の自分が出来る事を必死で考えた。
そうだ! シズ1000から貰ったタブレットがあったではないか!
うむ! あれなら、なんだか良く分からないしずテムが作動して、ご都合主義も甚だしい奇跡が起こるかも知れない!
思った私はソッコーで学園寮の自室へと戻ろうとし……ハッとなる。
思えば、あのタブレット……アリンちゃんが持ってなかったか?
確か、ブクロに限定版の人形が売っている情報とかを、あのタブレットを使ってルゥ姫に言ってた様な気がする。
………。
なんて事をしてくれたんだ、アリンちゃんはっっ⁉︎
くそぅ……こんな事になるのであれば、タブレットを自室になんて置いておくんじゃなかった!
もう一つの頼りとも言えるバアルのスペシャル情報網も、現状では絶望的だ。
そうなれば……後は何がある?
「……ヤバイな。普通に何も思い付かない」
嗚呼、無常っ!
今更ながら、自分だけで情報を掴むと言う能力がないと言う事実に、途方もない無力感を痛感してしまう私がいた。
「と、取り敢えず、一旦自室に戻るか」
あれこれ考えても仕方ない。
ここは、まず自分の部屋に戻り、色々と救出する手段を考える事にしようか。
今の私は少々、ヒートアップし過ぎている。
ここは頭を冷やしてから物事を熟考した方が、より良い選択肢を頭の中から生み出す事が可能かも知れないしな?
思った私は、自分の部屋がある学園寮へと足を向けた。
見知らぬ男から声を掛けられたのは、そこから間もなくの事だった。
「あのぅ……ちょっと良いですか?」
「……? はい?」
良く分からない。
声からして、初耳であったのだが……顔を見ても誰なのか良く分からないと言うのが、私なりの素直な感想だった。
実際問題、初めて会ったのだろう。
私は、顔だけはしっかりと覚える事が出来るからな?
……顔だけはっ!
「私に何か?」
答え、私は眉を顰めた。
ハッキリ言って、怪しさが群を抜いて居た。
「実は、自分も良く分かっていないのですが……さっき、知らない少年から声を掛けられて、これをあなたに……と」
良く分からない男は、これまた良く分からない事を言いながらも、やっぱり良く分からない手紙を私に手渡して来た。
なんて事だ、全てが良く分からないではないか!
「それじゃ、確かに渡しましたよ?」
私に手紙を手渡した男は、そこからすぐに去って行く。
どうやら、本当に手紙を私に渡すだけが目的だった模様だ。
「………」
全く以て、何がしたいのかサッパリ分からない話しではあるんだが……取り敢えず、受け取った手紙を開封してみる。
中には一枚の紙切れ。
そして、その内容は……っ⁉︎
「……なるほど?」
私は手紙の内容を見て、一定の納得を示す。
直接、私に手渡さなかったのは、手紙を受け渡す役をする人間が、私に攻撃を加えられると危惧していたのかも知れない。
どうしてこんな事を考えたのか?
それは、手紙の中にある文章が全てを物語っていた。
内容は、こうだ。
お前の娘は預かった。
返して欲しくば、指定された町工場へと来い。
文章の下には、地図らしき場所が示されている。
きっと、この場所に来いと言っているのだろう。
「探す手間が省けたな」
私はニッ! っと笑みを漏らす。
何処の何奴が、こんな下らない事をして来たのか知らないが……私に対して愚行を働いた事柄の尽くを全て後悔させてやろうではないか!
「これが罠であろうと、なんであろうと知った事じゃない。全てひっくるめて、その場で土下座して泣かせてやる!」
気合を入れて叫んだ私は、勢い余って右手に握っていた手紙をグシャッ! っと握り潰し……そして、目的地の地図が描かれていた事実に辿り着いて、地味に焦るのだった。
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地図の通りの場所へとやって来た。
特段、そこまで遠い場所でもなく……かつ、土地勘もある場所でもあったので、迷う事なくやって来れる場所でもあった。




