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交換留学生からの洗礼【12】

 ……ふん。

 まぁ、良い。


 これでコイツも、これ以上は私に付き纏う様な真似はしないだろう。

 鬱陶しいだけの相手に口をきいてやるのも面倒だ。


 思った私は、完全無視する形でその場から離れようとする。


 空間の歪みが発生したのは、そこから間も無くの事だった。


「……ん?」


 私は眉を捩る。


 真っ暗ではあるのだが、暗視魔法を発動している為、私の視点では白昼にも匹敵するまでにクリアな空間を目視する事が出来る。

 故に、私の近くで空間がグニャリッ! っとあからさまに不自然な捻じ曲がり方をしているのが、ハッキリ見て取る事が出来たのだ。


「……今度はなんだよ?」


 言って間もなく、私は嘆息する。

 イキリ野郎の相手をしてやっただけでも骨だと言うのに……この上、何がやって来ると言うんだ?


 地味に訝しい顔になっていた私がいた頃、グニャリと曲折していた空間から、一人の男が飛び出して来た。


「……って、おい」


 私は目を半眼にしてしまう。

 空間から出て来たのは……バアルであったからだ。


 しかも、満身創痍な状態と言える。 

 一体、誰にやられたと言うのか……?


「随分、こっ酷くやられたみたいだが……大丈夫なのか?」


「……だいじょばないですリダ様! 可能なら、復元魔法リフレッシュ辺りを私めに掛けてはくれませんかっ!」


 半眼のまま尋ねた私の問いかけに、バアルは地味に気合いを入れて返答して来た。

 そこまで元気一杯に返答が出来るのなら、私の治療魔法は必要ないんじゃないのか?


「だいじょばない……ってお前、それは言葉としてどうなんだ?」


「なら言い直しましょう! 私の身体は完膚無きにまで叩きのめされ、もはや半死半生! 虫の息と形容すべき絶対絶命の窮地へと追いやられております! リダ様、何卒なにとぞお情けをっ!」


「よし、分かった。武士の情けでお前にトドメを刺してやろう。これで良いか?」


 言ってから、私は右手をバアルに向けると、


「ノォォォォッッ! 私は侍ではございません! ございませんから! むしろ、西洋の人間ですから!」


 徐に顔を恐怖で引き攣らせていた。

 うむ! 全然元気だな!


 しかし、実際に怪我を負っている模様ではある。

 エナジー的にも大分削られているな?


 ……仕方のないヤツめ。


 思った私は、向けていた右手に、


 治療魔法リカバリィ


 回復魔法を付与させてやる。


 次の瞬間、これまでボロボロだったバアルの傷が、目に見えて分かるレベルで治癒して行くのが分かった。


「……おお……流石はリダ様の回復魔法……基礎魔導の治療魔法ですら、私の身体と心を大きく癒して行きます……ああ、良かった! 怪我して良かった! 頑張って痛い想いをして良かった! 今の私は、全てが報われた気持ちであります!」


 一気に回復していたバアルは、更にエネルギッシュと言うか、ウザさみなぎる勢いで感動すると……いつの間にか右手に握っていた私ソックリな人形(でも胸は似てない)を優しく両手で抱き締めて、


「ああ、リダちゃん……やはりキミのオリジナルは世界一の優しさと慈愛を持つ、慈母の様な存在だったよ……キミもオリジナルの様に強く気高く、尊い存在へと昇華してくれ……私の愛と共に!」


 ドォォォォォォォォンッッッ!


 爆発していた。


 いや、だって……ものすごぉ〜く怖気がしたんだものっ!


 体内のダメージの大多数を回復させ、心身共に健常な状態へと戻って間もなく、私ソックリな人形(胸を除く)を抱きしめた後『はぁはぁ……』って感じで、やたら息を荒くしたまま、人形へとキスしようとしていたんだぞ? そりゃ、怖気もよだつと言う物だっ!


 もはや、私の背筋は凍り付き、思考には純然たる悪感情ばかりが無秩序に生み出されていた頃……爆破されたバアルは、ヨロヨロとおぼつかない姿で立ち上がると、


「すいません、リダ様……出来ればツッコミの爆発は、もう少し弱めにして頂けませんか? 今のマジで死にそうでした」


 かなりマジな顔になって私へと答えて来た。


 そう言えば、今の私は補助魔法と補助スキルが発動されているのだった。

 しかもレベル7だったからなぁ……うーむ。

 うっかり強めの魔法を発動したら、単なるツッコミが殺人芸になってしまう訳か。


 治療魔法リカバリィ


 仕方ないので、もう一度バアルに治療魔法を発動させた。


 その結果、やっぱり気色悪い喜び方をしていたのだが……省略。

 ズバリ言うと、バアルの態度を見ているのが気持ち悪い!

 よって、敢えて視線を向けない事にしていたのだ。


 その結果、分かった事がある。

 ガードレールが、いつの間にか居なくなっていたと言う事だ。

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