交換留学生からの洗礼【11】
「………」
ガードレールは目玉が飛び出そうな勢いで驚き、口から言葉を出す事が出来ない様な表情をアリアリと見せていた。
相手の能力も自力で察知する事が出来ない相手には、直接『誰にでも分かる行為で』相手に分からせるしかないからな?
そこらを考慮するのであれば、超炎熱爆破魔法は一番手っ取り早い表現方法と言えるだろう。
「……な、なんだよ……これ……こんなの、聞いてねーぞ……」
しばらくすると、余りの恐怖に耐え切れなくなったのか? ガクガクと足を揺らし始め、今にもその場にへたり込んでしまいそうな風体を私に見せて来る。
ちょいとばかり力があるからと言って、自分が最強になったと勘違いしている様なイキリ野郎には、丁度良い薬になったであろう。
調子に乗って、私の様な百戦錬磨の強者を相手に喧嘩を売った事を、ここで存分に後悔しておけ。
これもまた、良い経験だ!
「そろそろ話す気になったか?……あ、いや、話しはもう良い。少しばかりここに長く留まり過ぎたからな? さっさと返して貰おうか?」
戦意喪失を超え、もはや立っているのもギリギリの精神状態であったガードレールへと、私は少し考える仕草を取ってから伝える。
いい加減、フラウ達の所へと戻らないと、本気で便秘だと思われ兼ねないからな!
つか、ここの部分はマジで何回も訂正しているんだけどなっ!
いっそ、本当に『実は便秘だったんだ!』とでも言ってやろうかっ⁉︎
そうすれば、少しは連中の態度も変わるかも知れない。
……逆にイジられる可能性もあるけどなっ!
「……くくくっ!」
……?
少し間を置いてから、ガードレールは口元を軽く緩め……下卑た含み笑いをみせて来た。
「どうした? 頭を強く打ち過ぎて、おかしくなったのか?」
「どうだろうなぁ?……確かに、テメーに散々ブチのめされて、自慢の男前が台無しにはなってるし? 俺の頭もイカれて来たかも知れねぇ……ははははっ!」
ちょっと心配する私の言葉に、ガードレールは素直に肯定的な台詞を返して来た。
なんだ? いよいよ本気で頭がおかしくなってしまったのか?
ぐむぅ……ちょっと痛め付け過ぎてしまったか……?
「このエリアに、お前を閉じ込めたのは『俺じゃない』からな? 俺をどうしようが、テメーはここから出られない。逆に言えば、俺は自由に戻る事が出来るんだけどな?」
「……はぁ?」
私はポカンとなってしまった。
ここに連れて来た犯人は、ガードレールではない?
そうなると……真犯人は、他の所にいて、別の人間と言う事になる。
そして、コイツを幾ら相手したとしても、私が外の世界へと出られる可能性は低い……と言うか、この調子だとゼロの可能性すらある!
なんてこったい!
これじゃ、単なるくたびれ儲けではないかっ!
「……そうか、やれやれ……面倒な事になったな? じゃあ、他を当たる」
私は答えて、ガードレールに右手を軽くスチャッ! って上げてから、トコトコと歩き始めた。
「……おい、待てよ……リダ・ドーンテン。俺の事は完全にシカトするつもりか?」
歩き始めて間もなく、驚いた顔になったガードレールの声がやって来た。
無視も何もあるか。
「お前じゃ、私を戻せないんだろ? それなら、もうお前と関わる必要性なんぞ塵も芥もないだろう?」
それなら、どうするよ?
当たり前の当然の様にスルー……は、特段おかしな判断でもあるまい?
強いて言うのなら、私はどうやってここから脱出するか……だな?
「お前は、俺が憎くないのか? こんな所に押し込んだ俺を? いきなり喧嘩を売って来たんだぞ? 半殺し程度にしてやりたいとは思わないのか?」
……いや、自分で言うな。
話す必要すら無くなった筈のガードレールは、逆に私へと無駄に食い付いて来るかの様な態度で声を掛けて来る。
コイツは何がしたいと言うのか?
やれやれ、仕方ない。
なら、率直に言ってやろう。
この手の輩が一番ショックを受ける台詞であり……同時に私の真意でもある台詞を、な?
「クソ雑魚ナメクジに用はない」
「……っ! テ、テメェェェッッ!」
キッパリ言ってやると、ガードレールは瞬時に逆上する形で叫んで見せるのだが、
「……っ⁉︎」
威勢良く叫んでいられたのは、そこまでだった。
次の瞬間、私はヤツへと自分の右手を向ける。
流石に、この意味は分かった模様だ。
「それなら? 爆破されてみるか? クッソ雑魚? 恐らく一秒もしない内に身体が粉微塵だぞ? それでも良いのなら、もう一度大口を叩け?」
「………」
ガードレールは無言だった。
何も言えなくなっていた……が、正しいのかも知れないがな?
……フンッ! 根性のないヤツめ!
そこまで無駄にイキっているのであれば、最後までしっかりイキリ倒して見せろよ!
あたしゃ、こう言う根性ナシが一番好きになれないんだよ!




