巨人の里・カウル【1】
両手両足に重り。
結構な重さがある重りは……多分、一個辺り数トンはあるだろうか?
普通に考えれば、こんなのを両手両足に装着する事なんか物理的に無理と言うか……総重量十トン程度になっている状態で地に足を付けたら、地面が沈みかねない。
けれど、それを可能にしているフィールドが存在している。
夢の中だ。
「わりと本気で死ねるな……これ……はぁはぁ」
額から汗を流し、肩で息を吸いながら呟く私がいた。
まぁ、実際は夢の中だから死ぬ事はないんだがな……多分!
冒頭から、今回も夢を見てる状態でのスタートだ。
思えば、前回も夢から始まった様な?
まぁ、そこはともかく……だ?
今回は私が自分の意思で、この夢を見ている。
宇宙意思から貰った『睡眠学』のスキルを使い、夢の中で自分を強くする為のトレーニングをしていた。
前に少しだけ言ってたかも知れないが、このスキルはとても便利だ。
まず、場所を選ばない。
強いて言えば、ベットと枕があればベストかな? 位だ。
次にトレーニングする道具が不要。
夢の中で想像すれば、その通りの内容が具現化する。
......まぁ、現実ではなく夢の世界だから『具現化』と言うのは、ちょっと語弊があるかも知れないけどな?
そして、極めつけは……実践トレーニングの相手が『誰でも良い』事だ。
前回のナンシーちゃんの変化をヒントに、私はある事を考えた。
ナンシーちゃんは上限値こそあれ、対象となる相手の姿になってその能力までコピーする能力があった。
……それなら?
私を完全コピーした場合、どうなるのだろう?
勿論、完全な丸々コピーした状態の私だ。
普通に考えたのなら、こんな事は不可能だ。
しかし、夢の中で修練する事が出来……かつまた、夢の世界でなら自分で好きな様にカスタマイズ可能な現状であるのなら、それも可能ではないのか?
そこで実際にやってみた。
夢の中で私と同じリダが出現し、対戦相手として私と戦う事を想像して見ると……私の眼前にもう一人の私が出現する。
……どうやら、可能な様だ。
しかし、実力が拮抗していると言うか、全く同じではつまらない。
そこで、私にハンデとして両手両足に重りを加えて見た。
その結果。
「いや、マジ無理! これ、本気で百回は死ねる!」
ここが現実じゃなくて良かったとか、マジで思った!
そうか……私ってヤツは、私が思っているよりも強いのかも知れない。
……と、自画自賛してる場合じゃない!
さっきは何とかギリギリ避けて、そこから全力で逃げの態勢を取って、なんとか巻いて来たが……。
確実にヤツは近くまで迫って来ている。
余談だが、ここは学園内の裏山……と、同じフィールドになっている夢だ。
そこで、私は自分の気配を完全に消し去り、ステルス状態で木々の間に隠れていた。
完全に気配を消す能力は、ヤツも私も完全な互角だ。
重りのハンデとは関係しない事柄だしな?
……しかしながら、ヤツと私との差は明らかだ。
くそぅ……高々数トンの重りを付けただけで、こんなに変わって来るとは思わなかった。
最初はハンデなしでも良いかな……とか、内心で弱気になっていた時だった。
「……っ!」
一瞬、魔導式のエナジーを感じた。
この世界の魔法は、精神力から魔力を抽出し、その魔力を魔導式で組み立てる事で魔法を産み出すのが一般的だ。
この一連の道程を進むプロセスの段階で、ほんのわずかではあるのだが、組み立てる魔導式から魔力を感じる事が出来る。
この魔力を感じる事が出来れば、魔導師としては一人前だな。
……って、説明してる場合じゃないっ!
私は素早くその場から離れた。
刹那。
断罪の爆雷!
カッ……
ドォォォォォォォォンッ!
一瞬の稲光とほぼ同時に、けたたましい稲妻が大木に落ちて来た。
一瞬遅れて、爆風が激震と激音を引き連れて、セットでやって来る。
「うぉわぁぁっ!」
我ながら、地味に情けない声を上げつつ、ギリギリで踏ん張って見せた。
てか、あいつの魔法、かなり強くないか?
私はあんな魔法なんか撃て……ん? まてよ?
「もしかして、これか……?」
左手の薬指の指輪を見る。
……装備品や装飾品までコピーされるのか、これ?
「くっそぉっ!」
なんとなく、そこまで一緒にしなくても良いのにと、半ベソになった!
ああ、もうっ!
自分でやっておいてなんだけど、最高の悪夢になってしまった。




