魂の追憶【18】
……ま、まぁ良い。
ともかく、恋愛関連は私にとって不得意分野だ。
ここは協力を仰ぐ必要性がある。
思った私は、
「別に大丈夫だと思うぞ? 結構気の良い連中ばかりだから、アラビカも直ぐに意気投合出来ると思うんだ」
温和に推奨する形で口を動かして行った。
「……けれど、あれだよな? 学園魔王の知人って事は、やっぱり凄いんだろ? 色々と」
アラビカは真剣な顔をして言う……オイ。
「何回も私の口から言わせるんじゃない。私は学園魔王とか言う、良く分からない恐怖の象徴みたいなヤツじゃないぞ!……ああ、もう良い! 百聞は一見に如かずだ! ともかく現物を見てから判断してくれよ。いやだったら直ぐ居なくなってくれても構わないからさ?」
「そこまで言うのなら……」
やや推しの強い物言いになってはしまったが、私の言葉に頷いたアラビカは間も無く了承する形で一緒に中庭へと向かうのだった。
……と、この様な出来事があった後、私はアラビカを連れた状態で、学園の中庭へとやって来ると、いつも通りの場所にいつも通りのメンバーが仲良く昼食を取っている光景が視界に映った。
私的に言うのなら、変哲知らずな光景だな?
もはや通例となってしまった感すらある。
元々、一学年の時はフラウが別のクラスであった関係で、良く中庭を昼食の集まり場として利用していたのが始まりであったのだが、同じクラスになっていた現在でも、結局はここで昼食を取る事が普通になってしまった。
気付けば定着してしまった感じだな?
特段意図した物ではないんだけど、逆に言うと特段変える必要もない為、今でも中庭で昼食を取っている。
アラビカはクラスが違ったので、今回はある意味で都合が良かったかも知れないな?
……ま、そこはともかく。
「あ、リダ? 遅かったね? もしかして最近、また便秘が酷くなったの?」
ふつーの顔して、どうしても私を便秘にさせたい天然姫の声が転がって来た。
「だから、どうしてお前は私をそこまで便秘にさせたいんだ?」
「え? トイレに行ってたんじゃなかったの?」
確かにトイレへと行ってはいたが……それで、どうして必ず便秘が絡まって来るんだよ?
私イコール便秘と考えている、お前の思考がおかしいと言いたいんだよ!
「どっちにしても便秘は関係ない! つか、後ろにいる子、いるだろ? コイツと話しをしてたんだよ」
「……え? 後ろ? 誰も居ないけど?」
……は?
キョトンとした顔で言うルミの言葉を耳にした瞬間……気付いた。
さっきまで私の後ろにいた筈のアラビカが、いつの間にか居なくなっていた事実に!
果たして。
「……オイ、アラビカ。お前……いきなり何してるんだよ?」
私は苦い顔になってしてまう。
ほんの数十秒前までは一緒にいた筈のアラビカは……私も驚く程の素早さで、中庭の中央辺りに植えてある大きめの木に隠れていたからだ。
……おいおい。
もしかして、超弩級の人見知りだったりするのか?
私的には意外を通り越して……驚きだ。
だって、私に対して因縁を付けて来た時のイキリ女とは、同一視出来ない様な行動を取っているのだから。
「いや……その、いざってなると……こ、心の準備が!」
お前は、これから告白でもするつもりなのか?
「別にそんな物が必要な相手じゃない! ともかく、こっちに来い!」
「え? そ、そんな! 乱暴にしないでよ! い、行くから! ちゃんと自分で歩けるからぁっ!」
地味にまごまごしているアラビカがいたので、面倒になって首元辺りをむんずと掴み、そのまま猫でも持ち上げる要領でルミ達がいる方向をへと強引に連れて行こうとした所で、アラビカが自分で歩き始めた。
……ったく! 最初からそうしてくれないか?
「うわ、可愛い! キレーだねぇ! ね? 名前は? 私はルミ!」
少し気が進まないと言った顔のままやって来たアラビカが居た所で、ルミがロイヤル・スマイルのまま声を掛けて来た。
コミュ障と言う設定は何処に行ったのかな? お姫様?
「……た、確かに綺麗だね。それに、なんか同じ学生とは思えないぐらい、プロポーションも良いし」
そう答えたのはフラウだ。
事実、フラウの言った事は正論だ。
アラビカは……なんて言うか、典型的なキート美人って感じだ。
端正な顔立ちで、雅やかさのある風光明媚な気品の様な物を無言で醸し出していた。
この面構えで、物腰の柔らかな態度とかされたのなら、私が良く予想する典型的なキート美人って感じだった。
ここは私の独断と偏見もあるな?
ともかく、キート人は冷静かつ沈着で、落ち着きがありつつ、お洒落で華やかさのある繊細な存在……って言うイメージだ。
静かな性質でありながらも、物凄くお洒落な人が多くて、服装には人一倍気遣っている。
反面、地味ぃぃぃに遠回しな嫌味を言って来るらしいのだが、ここに関しては噂程度なので、実際の所は分からないかな?
何にせよ、テンプレに近いレベルの典型的なキート美人像をリアルに具現化した外見をしているアラビカは、フラウやルミの言っている事が完璧に当てはまる風貌をしていた。




