魂の追憶【15】
「参考までに、どんな噂だったのか聞きたいんだが?」
聞く必要はないと思う反面……ここ最近の私と言う物が、校内の生徒にどの様な目で見られているのか?
世論調査ならぬ校内調査と言う事で、一応の内容を耳に入れてやろうではないか!
「学園最強にして、生きる災害。コイツに逆らって生きのびた者は、草木すら皆無の学園魔王と聞いていたが、これで当たっているか?」
「当たってる訳がないだろうがぁぁぁぁぁっっ⁉︎」
誰だよ! そんなアホな噂を広めたヤツ!
ソイツを見付けて爆破してやりたいんだがっ⁉︎
そもそも、なんだよ? 逆らって生きのびたヤツは草木すら皆無……って!
私が怒ると、植物すら枯れるのかっ⁉︎
そんなアホな噂を信じるアンタは何者だっ⁉︎
私だったら、例え噂が真実だったとしても、事実を目の当たりにでもしない限り、絶対に信じないぞ!
しかし、それでも思い切り真に受けている辺り……このイキリ女は、私の予想以上に信じやすい人間なのかも知れない。
良く見ると、守護霊もそこまで黒くはないな?
……あんまり白くもないけど。
最近は、暗黒闘気としか、他に形容する事が難しい連中ばかり見て来たからな?
だから、かなり綺麗な守護霊に見えるよ!
実際は、極々平凡なレベルだったりもするんだけどなっ!
どちらにせよ、このイキリ女は周囲に居る連中に騙されていたらしい。
本当、私に対する風評被害を垂れ流しているアホは何者なのだろう?
その内、相手を特定して爆破してやらねばっ!
私の中で、新しい目的が生まれた頃、
「そうか……あはは! そうだよなぁ〜? 幾らなんでも、そんな訳がないと思ってたよ? だけど、みんなマジな顔して言って来るからさぁ? 私もちょっと信じちゃってさ?」
「なるほど……物は相談なんだが? そのマジな顔してた連中ってのは誰だ? アンタのクラス・メートか?」
「ああ、そうだけど? クラス・メートの全員」
全員かーいっっ!
なんて事だ……まさか、クラスにいる全員が同じ勘違いをしていたとは!
くっ! これは……余りにも残酷な風評被害だ!
そして、物凄い勢いで広まっている!
「ともかく……だ? それは大きく間違っている。断言してやろう! 私は学園魔王なんぞと言う不名誉な存在とは程遠い人間であると!」
むしろ、世界を救ってるんだぞ?
やりたくなくても、勝手に世界を救う壮大なストーリーになってしまう事が多いんだぞ?
どうして、それだけの事をしてるのに、学園魔王のままなの? 私ぃぃっ⁉︎
もう……さぁ?
私、マジで泣きそうなんだけど?
「学園魔王ではない事は信じてやっても構わないけど……でも、だ? リダ・ドーンテン? 仮に学園魔王ではないとして? その証拠とかはないのか? 私も弁明してやりたいが、確たる証拠がないのであれば、何も反論する事が出来ないぞ? 何より、私は交換留学生だ。この学園に関して言うのなら、クラス・メートの方が格段に情報量がある」
イキリ女は、割りと真剣な顔で言って来た。
……と、ここで気付く。
「ああ、アンタも交換留学生の一人だったのか」
思えば、サービエ君について熱く語っている時点で気付くべきだった。
なるほど、それは確かに他のクラス・メートの方がアドバンテージが高いな?
……てか、その高いアドバンテージを以てして……言うに事描いて、学園最強最悪の魔王とか言うんじゃないよ! もっとリダさんの可愛らしい部分を重点的に紹介しとけよ! 100マール上げるから!
「なんだ、今頃気付いたのか?……って、ああそうか? そう言えばまだ自己紹介もしてなかったな?」
少しを間を置いてから、イキリ女はハッとした顔になって言う。
そこから、やんわりと笑みを作ってから答えた。
「ちょっと紹介が遅れてすまないが……名前を名乗って置こう。私の名前はアラビカ・サンテ・キート。交換留学生だ」
「ふむ、アラビカさんか」
イキリ女って名前じゃないんだな?
……って思ったのは、心の中だけにして置こう。
そこはともかくだ。
「名前が三つと言う事は貴族か?……ん? まて?」
キートって……確か西側諸国の国名だった気がする。
えーと、あーと……んと。
ん? んっっ⁉︎
ここに来て、私は額からいやぁ〜な汗が出た。
「一つだけ聞いてもよろしいでしょうか? アラビカ様?」
私はニッコリと細心の注意を以て口を動かした。
いや……だってだ?
キート国ってのは……世が世なら、世界屈指の大国だぞ……おいっ!
現在の世界情勢では、どちらかと言うと中央大陸が色々と発展している傾向にあるが……実際の所を言うのであれば、本当に『どちらかと言うと』である。
つまるに、そこまで変わらない。




