魂の追憶【12】
「あはは、ごめんねユニクス先輩! 僕もちょっと冗談が過ぎたよ」
少し間を置いた所で、美少年はニパッ! っと笑顔でユニクスに答える。
ああ、やっぱり冗談だったのか。
そうか……うん、そうか……。
ちょっと期待はしたけど、やっぱり冗談だったのか。
……い、いや違うぞ!
確かに私好みのショタ系美少年ではあったけれど……私だって、節度と言う物があるんだからなっ!
だけど、ちょっと勿体ないぞっ!
「………」
美少年の言葉を耳にし、ユニクスは無言になる。
何やら、あれこれと考えているかの様な? そんな顔をしていた。
どんな事を考えていたのかは知らん!
ただ、絶対に私は聞きたくない事を考えてる顔だった!
だから、私は見ませんでした!
「リダ先輩。改めて自己紹介するね? 僕の名前はサービエ。サービエ・ケル・ササキって言うよ? よろしくね!」
うぁぁ……っ! ま、眩しいぃぃっ!
そして、愛らしいっ!
物凄く可愛いっ!
ああ、もうぅ……リダ先輩、なんでもしちゃう!
「リダ様! それ以上は近付いては行けませんっっっ!」
私が、美少年のスマイルに極上の癒しを感じていた……その時、ユニクスとは違う変態が、何処からともなく出現していた。
右手に私ソックリな人形(でも、胸は私に似てない)を手にしていたその変人は、颯爽と空間転移しつつも私の眼前へとサービエ君から庇う形で現れては、
「君は交換留学生のサービス・エリア君だろ? 校内で不純異性交友を堂々として良いと思っておるのかねっ!」
サービエ君をビシィッ! っと右手で指差しては、一応の学園長らしい大義名分を叫んで来た。
全く……ユニクスが考え事を始めて、ようやく沈黙したと思えば……。
「なんの用だ? バアル? お前は学園長なんだから、もう少し学園長らしく交換留学生に優しく接しろよ?」
私は苦い顔になって言う。
そもそも、交換留学生が来る事を、学園長のお前が知らない筈がないと思うのだが?
「何を言っているのですか、リダ様! 私は交換留学生なんて制度を許した覚えはありませんよっ⁉︎」
「……は?」
即座に否定的な態度をあからさまに見せていたバアルに、私はポカンとなってしまった。
「こう言うのって学園長の承認とか認可とか、そう言うのが欲しいんじゃないのか?」
ポカンとした顔のまま、それとなくバアルへと尋ねると、
「事情も理由も知りませんが……何故か私が承認した様な事になってしまっているのです! きっとアシュアの悪巧みが関与しているとは思っているのですが、残念ながら今の所は証拠が揃っておりません!」
ああ、そう言う事ね……と、思わず納得してしまう私がいた。
アシュアなら、確かにやりかねない。
主に、私を困らせたいと言う理由で。
「そうか……任せておけバアル。アシュアにあった時、問答無用で爆破しておいてやるから」
「そこに関しては、まさに良いお灸になると思うので、存分に爆破して下さい! なんなら、肉片と化しても良いレベルで爆破して下さっても結構ですよ! どーせ死なないので!」
何処まで本気なのか分からないが、バアルは真剣な顔をして物騒な台詞をしれっとほざいていた。
アシュアが出現したのは、そこから間も無くの事だった。
「おやめ下さい! バアル様! 交換留学生は、どの道学園本部の理事会で可決されていた案件です! バアル様の一存では、どうする事も出来なかった筈ではございませんかっ!」
「えぇい! そう言う形へと外堀を埋めたのは貴様だ! アシュア! どうして、貴様はこうぅ……人の恋路を邪魔するのだ! 馬に蹴られたいとでも言うのかっ⁉︎」
「恋路など邪魔をしておりませんよ、バアル様! そもそも、バアル様は誰へと想いを募らせているのです? このアシュアですか? それとも私?」
どっちもお前じゃないか。
かなり切実な顔をして言っているんだから、私としてもビミョーな顔しか作る事が出来なかった。
「馬鹿者! 誰が想いを募らせていると言った! 私は崇高なる気持ちを込めておるのだ!」
人の恋路を邪魔するなと言わなかったか?
ソッコーで矛盾した台詞を堂々と語る悪魔皇帝に、私は視界一面に広がる大草原を見た。
「ともかく、リダ様! ここは危険です! さぁ! 私と一緒にウェディングチャペルのバージンロードを歩みましょう!」
ドォォォォォォォンッッッ!
バアルは爆発した。
相変わらず頭がボケナス過ぎて笑えないヤツだ。
「ああ! バアル様っ⁉︎ おのれリダ・ドーンテン! 今日と言う今日は、許すまじ……え? いや、許しちゃおうかな〜? うん! アシュア許しちゃう!」
ドォォォォォォォンッッッッ!
面倒だから、アシュアも爆発させた。
厳密に言うと、バアルとの約束を守った。
……はぁ、やれやれだ。
この二人は、マジで何しに来たんだ?
取り敢えず、今の私が分かる事は、私に爆破されに来たと言う事ぐらいであった。




