リダさん、裏山探検に向かう【16】
......うーむ。
「なぁ、ユニクス? お前、ナンシーちゃんトコに行ったのか?」
「え? あ、はい。取り敢えず、私的なハイライトを言いますと......まず、リダ様の薬指に邪悪なアクセサリーが装着されていた為、これを取り除く手段として、私の聖なる愛情を込めた婚約指輪を購入しに行きました」
「そうか......一応言うが、この指輪を外す気はないぞ?」
この指輪はアインの形見でもあり、私の魔力を増幅する為の装備でもあるからな。
「そ、そこは、ちゃんと着けて下さいよぅ......結構高かったんですから!」
私はそこでギンッ! と鋭い瞳をユニクスに突き付けた。
「......あ、はい。ともかく続きを言います。そこで私は喜び勇んでリダ様の部屋に戻ったのですが、どうやら、まだ帰って来ていなかった模様なので、てっきりまだ裏山ダンジョンにいるのかと思い、13階層まで降りて行ったのです」
しかし、そこにいたのは、ユニクスが13階層にやって来た事で召喚されたアナンシしか居なかった......と、こうなるのか。
「なるほど......で、戦ったと?」
「特に戦う気もなかったのですが、そこのアナンシがやたら勝ち誇って『私は生まれ変わったのだ!』とかなんとか言い張る物ですから、軽く相手をしてやったのですよ」
......うーむ。
その結果は聞くまでもないだろう。
確かにアナンシはダンジョンのラスボスであっても恥ずかしくはない強さを持ってはいるのだが......勇者ユニクスが相手なのは、少し荷が重かったのかも知れない。
元々、天才的な実力を持ってたユニクスなんだけど、その後も反則的な成長を遂げている事もあって、今では私をも凌駕しそうな実力を秘めている。
混沌の力を解放してる時のユニクスは、ランク的に言うとL程度の実力はある。
同ランクで行くと、剣聖のシズ辺りがこのランクだ。
このランク辺りまで来てしまうと、文字通り伝説クラスの強さなので......はっきり言えば、アナンシが負けたとしても、仕方ない話と言える。
「なぁ、ナンシーちゃんよ? ユニクスは勇者の天啓を受けた正真正銘の勇者だから、こいつに負けても気にしない方が良いぞ? こいつに勝てるのなんか魔界王か大魔王位だから」
ああ、でも、大抵の勇者はこの二人をちゃんと倒してるかも知れないなぁ......。
まぁ、なんにせよだ?
「しかし、リダさん! 貴女様は私に言いました! 強くなりたいのなら私が鍛えてやると! あの腐れ勇者より強くなれるのなら、リダでも悪魔でも魂を売ります! そして、私はアナンシ!」
「私は悪魔と同等なのかよっ! てか、もうナンシーでいいよ、お前はっ!」
「リダ様! こいつに武術を? それはだめです! そんな暇があるのなら、私と愛のセレナーデを語り合いましょうっ!」
「やかましいわっ!」
段々、会話がカオスになって来た。
もういい! 面倒だっ!
劣等感から夜中に押し掛けて来て勝手にしゃべくり倒す馬鹿オウムも、会話と全く関係のない百合トークに話のベクトルを強制変換しまくる腐れ勇者も、
「全部まとめて吹き飛べぇぇぇぇぇっ!」
「へ? いや、リダさん?」
「ちょっ! リダ様! ふざけすぎたのは謝りますから、そっそれだけはご勘弁をっ!」
ゆるさんっ!
超炎熱爆破魔法!
ドォォォォォォォォォォォォンッ!
......かくして。
私の部屋は木っ端微塵になってしまった。
その後、私は一週間程度宿無しとなり、ルミに何回も頭を下げてルームシェアして貰う事になるのだが......後日談と言う事にして置こう。
第二篇・おまけ短編 -了-
これにて、二編目は終了だ。
次のページからは三篇目だ。
次回はパラスの故郷、巨人の里『カウル』編になるぞ?
そんな所で、第三篇に続く!




