魂の追憶【7】
他方、視点を変えると……そこには顔を青ざめているルミの姿が。
まぁ……そうな?
ルミの場合は守護霊が見えるからな?
興味本位で教えて欲しいとルミが言って来たので、私が教えてやったのだが……う〜むぅ。
どう考えても、トンネル君の守護霊はドス黒い。
あんなのを相手にする必要性があるのなら……まぁ、嫌でもそう言う顔になってしまうよな。
王族繋がりだったか? ともかく、貴族関連である為にルミが学校案内を頼まれていた関係を考慮するのなら、守護霊がダークマターのトンネル君を見て顔を青くさせてしまうのは仕方のない事ではあった。
率直に言うのなら、私もあんまり関わりたくないんだよなぁ……。
どーしよ、今からでもルミと一緒に行くのを断ろうかなぁ……。
ふと、安請け合いした事を後悔する私がいたのだが……ルミの顔を見ている限り、ここで断る訳にも行かない。
むしろ同行した方が良いレベルだな。
少なからず、隣で見守って上げないと卒倒してしまいそうなレベルだ。
でも、行きたくないな!
私の中で、ルミを助けないと行けないと言う親友としての義務感と、面倒な事に関わりたくないと言う気持ちがひしめき合っていた頃、
「……あの人、人間じゃないお」
隣にいたアリンがボソッ……と、私にだけ聞こえる声で耳打ちして来た。
うぅむぅ……。
かなり真剣な顔で言ってるなぁ……おい。
これは、どう考えても波乱の予感しかしない。
本当、どうなってるんだよ。
私は日々の生活を平凡に生きる権利すらないとでも言うのだろうか?
アリンちゃんの『人間じゃない宣言』を受け、余計に関わりたくない気持ちで一杯になる私がいた。
恐らく……否、ほぼ間違いない。
アリンの言っている事が正しい。
ただ、どんな風に人間ではないと言うのだろうか?
人間のレベルを逸脱した、凶悪なエナジーの持ち主だと言う事だろうか?
それとも、根本的に人間ではない存在なのだろうか?
どちらにせよ、面倒臭い何かへと発展する可能性だけは濃厚と言える。
出来る限り、こちらから刺激を与える事なく、無難にオーサへとお帰り頂きたい所ではあるのだが、果たして……?
渦中のトンネル君がどの様な心中でいるのか?……その胸中を探る形で様子を見つつ、その場は黙りを貫く形で見送って行くのだった。
◯◯●●●
以後、時間は平凡に過ぎて行く。
冷静に考えるのであれば、それが当然と言える。
トンネル君が交換留学生としてやって来たと言う事以外は、取り立て何かがあった訳ではないのだからして、私達の授業に革命的な変化が起こる筈もなかった。
まずは一安心……と言った所か。
まぁ、私も少しばかり身構えていた節がある。
担任のリーナがわざわざ私の自室へとやって来ては、意味深長な台詞を残していたからな?……で、そのタイミングで西側諸国からの交換留学生と来た。
嫌でも身構えてしまうのは仕方の無い事だと、私は本気で思ってるよ。
一番気掛かりなのは、トンネル君のフルネームだ。
えぇと、なんだっけ?
確か、トンネルではなかったよな? えぇと……?
ああ、そうそう!
リンネル・ケル・ササキだ!
この三番目の名前がポイントなんだよ、私的にはさ?
確か、人工邪神のコード・ネームにも『ササキ』と言う名前が使われている。
これが偶然の一致であれば、私もそこまで身構える事はないのだが……果たして、事実は如何な物か?
出来れば、単なる偶然の一致であって欲しい所だ。
そして、この『ササキ』なのだが……ここに来てふと思い出した事がある。
私の前世にある、遠い魂の追憶にも、このササキと言う名前が存在していたのだ。
これは流石に偶然だと思う。
だって、全く違う世界だし。
まして、今の私ではなかった頃の記憶だし。
あれこれ考えても、流石にここは単なる偶然だろうと思ってはいる。
……いるのだが……しかし、なんでだろう?
私の中にいる誰かが言っているのだ。
これは偶然ではない……必然だ、と。
今の私ではない私。
……遠い遠い、魂にのみ刻まれているのだろう、かつての私が今の私へとそう訴え掛けている様に感じるのだ。
もちろん、これは周囲の人間には言っていない。
フラウやルミはもちろんの事、アリンちゃんにすら言ってない。
だって、こんな事を真顔で言った日には、絶対に厨二と言われてしまうだろう?
私だってさ?……例えばフラウやルミは同じ様な事をいきなり言い始めたら『やべ、コイツもう16になるって言うのに、未だ中学二年生しているのかよ?』って感じの気持ちになるからな?
そうなれば、もちろん言えない訳だよ?
恥ずかしくて!




