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魂の追憶【3】

 私の意思に反する形で始まりを迎えた、魂の追憶を探る自分探しの旅は、こうして始まりを迎えた。




         ◯◯◯●●




「交換留学生?」


 私はキョトンとした顔になって答えた。

 眼前にいる、フラウに向かって……だ。


 時刻はそろそろ三時半を回ろうとしている頃だろうか?

 本日は六限しか授業がない為、これにて本日の授業は終了。

 待ちに待った放課後の到来だ。


 毎度の事ながら、私が習っている授業は極めて高レベルの睡眠効果があるらしく、私のまぶたは常に重りがのし掛かっているかの様に重くなる……うむ、マジで強烈に重い!


 素直に勉学と言う物への向上心はあるのだが、こう両目瞼に掛かる重味があると……こうぅ、向上心と相反する思考が、私の思考に芽生えてしまう。

 うむ! こればかりは仕方のない事だな!


 結果的に、それら極度の睡眠作用から解放される放課後と言う時間が、私の中では一日の中でも1、2を争うまでに至福の時間と化してしまった。

 だって、開放感が半端ないんだもの。


 今日も勉学に励んだな! さぁ、自宅に帰ってタブレット片手に動画でも見よっかな〜!……なぁ〜んて考えていた私がいた頃、フラウが私の前へとやって来ては、冒頭の言葉に続いている。


「そうそう! 交換留学生ウチの学園に来るんだってさ! ねぇねぇ? これ、どう思う? 絶対に美形が来るよね?」


 ……と、妄想しているのはお前だけだと思う。


 そもそも、美形とかブサイクとか、そう言う問題以前に、だな?


「それ、男が来ると決まってるのか?」


「やだな〜! そんなの決まってるじゃない!」


「ほ〜。何処からそんな情報を仕入れて来たのか知らないが、無駄に早いな?」


 相変わらずと言うか、なんと言うか。

 事、色男を探知する能力に於いては、学内最強なのではないかと思う。


 この能力を、もっと別の所に活かせたのなら、コイツはもっと俊逸な人間として、周囲から尊敬されると思うのだが。


「名前も聞いてるよ! リンネル・ケル・ササキって名前なんだってさ! この人の他にも何人かウチに来るみたいだけどさ? 私としてはこのリンネル君が本命! そして、なんとなんと! 私達のクラスにやって来るんだってさ!」


 瞳をキラキラと輝かせながら、物凄い勢いで喋くり倒すフラウがいた。

 本当に、コイツの美形に対する情熱は、並大抵の物ではない事が良く分かる。

 その情熱を、世界平和の為に費やす事が出来たのであれば、世界中のあらゆる人間から感謝されるんじゃないのだろうか?


 土台無理な話しだと分かっていても、ついつい思ってしまう。


 それにしても、私のクラスにも交換留学生とやらがやって来るのか。


 リンネル・ケル・ササキとか言ってたな?


 うむ! この名前は長いな!

 流石に聞いたばかりの現在は覚えているが、教室から出て三歩も歩かない内にコイツの名前が私の記憶から

抹消される可能性は、軽く見積もっても120%はあるだろう。

 ここに関しては、とびっきりの自信があるぞ。


 ……と、そこまで考えていた時……思った。


 ササキ……?


 何か引っ掛かった。


 私は、何か大切な事を忘れているのではないのだろうか?


「……むぅ」


 私は眉を捻りながらも、唸り声を上げる。


「どうしたの、リダ? 便秘?」


「どうしてそうなる!」


 心配そうな顔になって答えたフラウの言葉に、私はソッコーで叫び返した。


 思えば、似た様なシチュエーションと言うか、悩む私の姿を見た瞬間にルミのヤツが同じ台詞を言っていた事がある……つか、その時にもフラウは近くにいて、やっぱり便秘と勘違いしてたな……私が悩んでいる時は便秘の時しかないのか? と、マジで小一時間は説教してやりたい!


「別に便秘では悩んでない!……ただ、ちょっと……名前が気になってな?」


「名前?」


「ああ、そうだ。リンネル・ケル……ここまでは良いさ。問題はこの次でな? ササキと言う部分が、どうにも気になって仕方ない」


 ただ、しっかりクッキリと思い出す事が出来ないんだよなぁ……。


 なんとなく……本当に、何となくではあるんだけど、この名前は私にとって重要な何かが存在している。

 

 でも、なんだったのか? ちょっと思い出せないんだ。

 なんだったかなぁ……確かに、私が関係する何かがある事だけは分かっているんだけど。


「え? も、もしかしてリダ……今回の交換留学生と、お友達なの?」


 フラウはかなり驚いた顔になって、私へと尋ねて来た。


 視線は、早くも恋敵モード。

 ……お前は、そう言う視点でしか物事を考える事が出来ないのかな?


 そもそも、フラウの場合は、大抵一人相撲で終わる。

 自分の理想と幻想を追い求め、追求し切ったイケメンと出会った後、全力でアタックを掛けるも空回りの連続で、最後はなんらかのオチが到来して撃沈と言う、一連のルーティンを未だ一度とて破った事がない。


 いい加減、学習したらどうだ? と、私は思ってしまうね!

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