上位魔導師のお仕事【27】
「そうだよ、思い出した! フラウも入ってたよ! 確か五位ぐらい!」
少し間を置いてから、ルミがフラウへと叫んで見せる。
「五位?……う〜ん、多分、もうちょっと低かった……かなぁ? どっちにしても、あんなのはただのランキングでさ? 実際の私には何も関係ないって言うか……」
「それなら、私だって同じじゃない?」
「……うぐ」
地味に言い訳をしたら、見事なブーメランが刺さってしまったフラウ。
もう、見事に返す言葉が見付からず、自滅する形で口籠ってしまった。
……てか、だ?
「学園のランキングに載っているって事は、お前もモテ組になれるだろ? 普通に男ウケする訳だしな?」
私はそれとなくフラウに答えてみせる。
「……むぅ〜。確かにそうかも知れないけど……何故か、私ってフラれてばかりと言うか……上手く行かないんだよねぇ」
高望みし過ぎだからだろうが?
両腕を組みながらも、かなり真剣な顔をして悩んでいたフラウに、私は胸中でのみツッコミを入れた。
岡目八目を置く私の目からすれば、フラウはもう少し男に求めるハードルを下げさえすれば、明日にも彼氏持ちになれると思えてならない。
しかしながら、フラウなりの理想と言うか、要求スペックがチート級に高いのは、言うなればフラウのアイデンティティでもある。
これを無くしてしまったのなら、もはやフラウではなくなってしまうとさえ、私は思えてしまう程だ。
そう考えるのであれば、フラウはやっぱり高望み女と言う立ち位置を今後も続けて良いのかも知れない。
だって、見ていて面白いから!
まぁ〜た、無駄に高望みし過ぎて失恋してるよ〜!
ハハッ! 馬鹿だねぇ〜!
……って、第三者の目で見ているぐらいでちょうど良いのだ。
流石に結婚適齢期あたりまで同じ調子であったのなら、話しは大きく変わって来るのだが。
ともかく、今はこのぐらいで丁度良いと思う。
フラウはまだ十六歳なのだ。
別に、急いで結婚相手を見付ける必要もなければ、色恋沙汰以外の物にだって、色々とチャレンジする事だって出来る。
もちろん、無謀な恋愛の一つや二つだって、やっても良いだろう。
……まぁ、危険な恋愛とかしている様子だったら、ソッコーで止めに入るけどなっ!
どちらにせよ、失恋もまた経験。
ほろ苦い経験を経て、人は成長し……大人になって行く物である。
……って、なんだか、ババ臭い事を言ってるな? 私?
一応年長者ではあるが、実年齢的にもフラウとそこまで変わらないぞ?
少なくとも、みかんとかシズとかの様に、妖怪染みた年齢ではないからな!
「これから、良い出会いがあるかもだぞ? フラウ? お前は人気ランキング的にはちゃんと男受けするんだからさ? まだまだ諦めるには早い。そう思わないか?」
私は笑みのまま言うと、
「そうだね! 言われてみれば、まだこれからがあるんだったね!」
満面の笑みを浮かべて、私へと声を返して来た。
うむっ! 良い笑顔だっ!
「よーし! 支部長は無理だったけど、頑張って良い男を見付けるぞぉ〜っ! 取り敢えず、年収1000万位上で、背が高くてイケメンで、私に優しい男を絶対に見付けてやるんだぁ〜っ!」
だから、高いんだよ! お前の要求はっ!
正直……先に語ったフラウの要望通りの男がいたとして……果たして、フラウに惚れてくれるのか?
そこまでのスペックだったら、他に女なんて山の様に選び放題だろうに……。
……はぁ。
やっぱり、コイツはちょっと夢を見過ぎな気がする。
そんな男がいるのであれば、私が結婚したいぐらいだよ、全くっ!
「うん! きっと見付かるよ、フラウ! 応援する!」
直後、ルミも陽気な微笑みを作りながらもフラウへとエールを送った。
きっと、何も考えないで言っているのだろう。
だって、ルミの顔を見ていると『私はテキトーに答えてます』って感じの顔をしているんだもの。
しかしながら、ここに来てようやくフラウの機嫌が良い方向に傾き始めた。
まだまだ夢を見過ぎていて……私としては、もう少し現実を直視させてやりたい衝動に駆られてはいるが……先も言った通り、フラウはまだ学生なのだ。
現実なんて、さ?
これから、社会に出れば嫌と言う程、思い切り見る羽目になる訳で。
それなら、せめて。
そう……せめて。
学生の内ぐらいは、多少の夢ぐらい見せてやっても構わないんじゃないのか?
思った私は、敢えてフラウの言葉に深く言及しないで置いた。
現状の私がやるべき事は、もっと別の所にあると思う。
「それよりフラウ、ルミ? お前ら暇か? 一応の報酬も入ったし、軽く何か食べて行かないか?」
軽い口調で言う私。
余談だが、多少ではあったのだが、今回の一件で報酬が出ていた。
報酬が、支部長のポケットマネーからであった為……ほんのお小遣い程度の代物ではあったが、それでも喫茶店でスイーツを食べるには余りある程度は貰っている。
だからと言うのも変な話しだが、
「今日は、リダさんの奢りにしてやろう。どうだ? 行かないか?」
私は大盤振る舞いする形で、二人へとドヤ顔のまま誘い文句を口にした。




