上位魔導師のお仕事【26】
「元気出しなよ、フラウ? こんなの今に始まった事じゃないでしょう? ほら、いつか、その内……きっと、なんとなぁ〜く素敵な出会いが……あるんじゃないのかなぁ? 多分」
思い切り黄昏ていたフラウがいた所で、ルミが励ます様な口調で声を吐き出し、ポンッ! と軽く肩を叩いた。
当人は、フラウへとフォローを入れているつもりなのだろうが、全然フォローになってない。
まぁ、ある意味でルミらしい慰め方(?)でもあった。
「……なんでそんなに曖昧なの? せめてもっとハッキリと物を言ってくれない? ちゃんと素敵な彼氏が明日にでも出来るよ! 何なら紹介してあげる!……ぐらいの事は言えないの?」
「え?……フラウに紹介するの?」
「……って、どうして困った顔するのっ⁉︎ 真面目に引いた顔とかしないでくれない? 私、本気で泣きそうなんですけどっ!」
普通に引いた顔になっていたルミに、フラウはマジで泣きそうな顔に。
うむ……それは流石に可哀想だぞ、ルミ?
例え、紹介相手がペッタン子で、ちょっと紹介するにもどうして良いのか分からない気持ちになっていたとしても……だ!
「まぁまぁ、フラウ。そんなに癇癪を起こすな。紹介出来る相手なら、私も……いたかどうか、ちょっと難しい」
「リダまで言って来たっ⁉︎」
可能な限り優しく接しようと声を向けた私の台詞に、フラウは更に『ズガガァーンッッ!』って感じのショックを痛烈に受けていた。
……いや、私の場合はルミとはちょっと違うぞ?
「何か勘違いしている様子だからハッキリ言おう。私の場合は、ルミとは違い、そもそも紹介出来るだけの異性が居ないだけだ。何なら、むしろ紹介してくれって言うレベルなんだよ」
流石に見ていて可哀想になって来た為、私なりの誠意を以て言葉を付け加えると、
「……ああ、そう言う事か! うん、なるほど! 確かにリダって男の友達少なそうだもんね!」
「やかましいよっ!」
フラウはソッコーで納得して来た。
実際にその通りではあるんだが、秒を必要とせず、心から納得するかの様な態度を取るのはやめてくれないかっ⁉︎ 私にだって自尊心ぐらいはあるんだからなっ!
「そっか、そっか……うん! こんな所に私の同志がいたのか! モテない女の同志がさ!」
正直、あんまり頷きたくない同志なのだが?
本当は、ちょっと反発したい気持ちとかあったのだが……フラウもかなり精神的に病んでいる模様だし、毎度お馴染みの一人相撲失恋ではあるが、悲しみに打ちひしがれている事だけは確かだ。
仕方ないので、
「まぁ、そう言う事にしておいてやろうか」
私は妥協半分にフラウの言葉に肯定してみせた。
すると、ルミが声高に叫んで来る。
「ちょっと待って! そこには私が入ってないよ? リダとフラウだけ同志で、私だけ仲間外れとかおかしくない?」
私的には、ルミの言っている事の方がおかしいと思うぞ?
そもそも、モテない女の仲間に入りたいのか? お前は?
「こう言ってはなんだが、ルミは無駄にモテてるぞ? そりゃもう、選びたい放題なレベルで異性からの脚光を浴びてる、陽キャ中の陽キャだぞ? そんな奴がモテない女の枠内に収まる訳がないだろう?」
ビミョーに的違いな台詞を口にしていたルミへと、私は片眉を捻って言う。
尚、口調はぼやき風味だ。
「そうだよ、そうだよ! ルミはお姫様だから直接告白して来る男子は居ないけどさ? 実はかなり人気あるんだよ? こないだの文化祭で学園ナンバーワンの人気だったし!」
直後、フラウも素早く反論して来る。
余談だが、剣聖杯が行われていた時、学園内では同時に文化祭も行われていた。
……と言うか、剣聖杯も文化祭の中にあるプログラムの一つである為、どちらかと言えばメインは文化祭の方だったりもするのだが。
そこはさて置き。
フラウの言葉にあった様に、実は校内の人気アンケートなる物を、新聞部が文化祭の出し物の一環として発表していた。
……で、だ?
この時にぶっち切りで人気ナンバーワンに輝いていたのがルミ姫だったのである。
尚、私は圏外だった。
……いや、うん……分かってはいたけどさっ!
ただ、この話しを掘り下げると、だ?
「フラウも上位に入ってなかったか?」
私はそれとなく、思い出す様な感じで言う。
事実、新聞部が発表した人気生徒ランキング・トップテン(女子編)では、フラウもちゃんと入っていた気がした。
確か7位か8位ぐらいだった気がするなぁ……?
尚、私は……いや、言うのはよそう。
これで二回目だし。
言うだけ虚しくなるしっ!
余談だが、怖い人ランキングの中に、私の名前が載っていた。
こんなランキング作るんじゃないよっ!
しかもぶっち切りで一位じゃないか!
一位を取った張本人が悲しくなるから、マジでやめてくれないかなっ⁉︎




