上位魔導師のお仕事【14】
……ああ、もうっ!
コイツらのボケに付きあっていたら、ページが幾つあっても足りんっ!
ここからは、私がモノローグ調で説明してやる!
軽く纏めると、こうだ。
名工が造り上げた、この世に二つとない貴重な優勝トロフィーが盗まれてしまったので、それを支部長と一緒に取り返して欲しい!
端的にポイントだけを絞って述べるとこうなる。
これだけの話しに、どぉぉぉぉぉぉぉして、ここまで無駄に話しが長くなると言うんだよ!
お前らのなんだか良く分からないボケのおかげで、話しが右往左往しまくりなんだよっっ!
……何はともあれ。
フラウとルミの横槍に、話しがあっち行きこっち行きしつつ……不毛なばかりに会話が伸びに伸びまくりはしたのだが、私達は支部長の仕事を引き受ける事になった。
仕事開始日は、次の休日。
この辺りは、私達が学生だと言う部分を配慮してくれた結果だ。
私としては有難い限りではあるな?
何かと無駄に学校を休んでいる傾向にある私としては、少しでも教室に顔を出したいと言う部分がある。
成績は優秀だし、出席日数が足りてないと言う訳ではないのだが…………あれ? それなら平日でも良くね?
………。
……ま、そこはともかくだ。
支部長の計らいにより、次の休日はフラウが上位魔導師として初めて引き受けた、記念すべき初仕事を開始する事になって行くのだった。
◯◯●●●
数日後。
私達はトウキ郊外にある、大きな屋敷の前へとやって来た。
「へぇ……ここが、トウキの魔女の異名を持つ、大魔導ミィクが住んでいる屋敷か……中々趣きがある建物だねぇ」
屋敷の入り口に立ったフラウは、少しばかり興味深い顔になって口を開き、
「そうか?……私には悪趣味な館にしか見えないんだが?」
フラウの言葉に、私がちょっとだけ反論してみせると、
「ルミさんは帰っても良いですか!」
顔を蒼白にさせたルミが、大声で帰宅宣言をしていた。
最後にオチみたいな台詞をしっかりと口にするルミがいたのは他でもない。
もはや、古びた洋館……って感じだったのだ。
良く見れば、敷地内付近には結構な規模の墓場まである。
根本的に不気味な雰囲気を無言で醸し出している古びた洋館と言う時点で、オカルトやホラーが苦手な人間からすれば、あたかも反発し合う磁石の様に素早く飛んで逃げそうな空気で充満していたりもするのだが……ここに、何故か墓場まで近所にあると言う、極めて悪質な嫌がらせにも匹敵する立地条件が、現状にあるおどろおどろしい空気に拍車を掛ける結果を産んでいた。
もはや、天然のお化け屋敷。
入り口ドアを開けた瞬間に死霊の類がやって来たとしても、私は全く驚かないね!
その顛末に、顔を蒼白にし……今にも卒倒してしまうんじゃないのか? と言いたくなってしまうまでの表情を見せるルミの姿があった。
てか、だ?
「なんだよ、ルミ? お前……怖いのダメだったのか?」
私的には、むしろウェルカムな奴かと思っていたぞ?
ほら……なんかさ? 常人が怖がる様な物であっても、ニッコリ笑顔で『こんにちわ〜☆』とか言いそうじゃん?
「そんなの怖いに決まってるじゃない! だって、お化けだよ? なんだか良く分からない謎の宝庫だよ? 物理的な物も魔導的な物も、何もかも通用しないお化けだったらどうするの? 何も出来ないで呪い殺されるかも知れないじゃないのっ!」
口早に捲し立てるルミは、今にも泣きそうな勢いで喚くと、
「そんな訳で、リダ! 一緒に帰ろ? 思えば、一人で帰るとか無理!……だって、ここに来る途中の森とか、無駄に怖かったもんっ!」
直後に私へと訴え掛ける形で懇願して来た。
……マジでお前は何をしに来た?
「……はぁ」
私は嘆息してしまう。
こんな事になるかも知れないから、お前をつれて来たくはなかったんだよ……。
余談だが、今回のメンバーは私とフラウ、ルミの三人。
そこに特別ゲストとしてアレフ支部長がパーティーに加わっている。
ルゥ姫やアリン、ユニクスなどは欠席だ。
ルゥ姫とアリンの二人は、自宅でもある学園寮にてお留守番。
今日は一日、親友と熱く語らうお!……と、闘牛張りに鼻息を荒くし、無秩序に興奮していた愛娘の姿が目に焼き付いて離れない。
……私の愛娘は、一体……どの様な方向へと突き進もうとしているのか?
母親ながら心労が絶えない想いだ。
しかしながら、今回に関して言うのなら喜んで留守番をしてくれるのでヨシとする。
たまにはルミやフラウ達、クラス・メートの面々と一緒に外出するのも悪くないからな。
ユニクスに関しては……黙っておいた。
言えば間違いなくついて来るだろう。
そして、私の神経を逆撫でして来るに決まっている!
自分の精神衛生状態を加味するのであれば、ユニクスと言う変態勇者を置いて来るのは至極当然の事であった。




