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こうして私は無双する・リダVer  作者: まるたん
第八編・最終章
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パインとココナッツとお母様【14】

 ……くそぉ……今日は大手を振って休める日って事で良かったんじゃないかよ……。


 思わぬ事実に直面し、脱力感で歩く気力すら失ってしまう私が、へたり込む形で自分の席に座ると、


「リダって、学校好きなんだねぇ? 私なら絶対に自分の部屋で好きな事してると思うけど?」


 フラウが追い討ちを掛ける形で私へと声を吐き出していた。

 ……言うんじゃないよ!

 私だって本当はそうしたかったんだよっ!


 なんとも口惜しい気持ちで胸が一杯になってしまう私が居る一方で、アリンは早くも親友ともと呼ぶ、ルゥ姫の元へと足早に駆け寄り、


「ふふふっ! これが、アリンの戦利品おみやげなんだお!」


 土産で買っていた人形をルゥ姫に見せていた。

 確か、アリンが『キータ国限定のハーピーちゃん』とか言ってた様な?


「……っ⁉︎ こ、この、光輝く神々しさを持つハーピーちゃんは……ま、まさか……あの、伝説のっ⁉︎」


「流石は強者ともなんだお……何処かの誰かしゃんは『普通のハーピーちゃんと、何処が違うか分からない』とかのたまってたお!」


「ええっ! この特殊なハーピーちゃんを見て、そんな愚かな事をっ⁉︎」


 神妙な目付きで語るアリンの言葉に、ルゥ姫は度肝を抜いて答えた。

 ちなみに、違いが分からない『何処かの誰か』とは、私の事なのだろう。


 ズバリ言って、違いなんか分かるかと言いたいっっ!


「なんて事……その方は、恐らく目がとてつもなく悪かったのでは……?」


 片目だけで、一キロ先にある十マール銅貨を見る事が出来るのだが?


 顔で『あり得ない!』と、無駄に大仰な驚き方を見せていたルゥ姫に、私は思わず苦い顔になってしまった。


「分かる! 分かるんだお、親友とも! このハーピーちゃんを見て、どうしてそんな不可思議な暴言を吐けるのか……アリンには全く理解すりゅ事が出来なかったんだおっ!」


 私には、アリンの言ってる事の方が理解出来ないよ。


「そうですね……ええ……そうなりますね。これは、キータにしか出回らないと言う、我々トウキ人にとって至極の逸品! まさか、生きている内に、この様なハーピーちゃんを見る日が来ようとは……」


 そこまで大袈裟な物じゃないからな?

 キータの玩具屋で1980マール(税込)だったからな? それ?


 何故か『じぃ〜ん!』っと感動していたルゥ姫に、私は地味にドン引きしていた。


 ……と、その時だ。


「これが、アリンの御土産なんだお! 受け取ってくだしゃい! 親友ともよっ!」


 アリンはキリッ! っとした顔になって、ルゥ姫へとキータ国限定ハーピーちゃん人形を手渡していた。


「……っ!」


 ルゥ姫は、徐ろに息を呑んだ!

 どうやら、予想も付かない申し出だったらしい。


 そこから暫く思考がフリーズする。

 驚きで頭が上手く働かなくなってしまったルゥ姫であったが……数十秒程度で現実世界へと帰還すると、


「こ、こんな……世界的な逸品を頂く訳には行きませんわ、アリンちゃん! その人形の価値は、アリンちゃんが一番ご存知ではないのっ⁉︎」


 税込1980マールなのですが、何か?


「良いのでしゅ……普段から、色々とアリンはルゥちゃんから貰っているのでしゅ……たまにはアリンにもお返しをさせて欲しいおっ!」


 まぁ、実際にルゥ姫はアリンにやたらと人形を与えているからな。

 散らかって仕方ないまでに、人形をくれるからな?

 片付けるこっちの身にもなれと言いたい。


「う、うぅ……と、と、親友ともよぉぉぉぉぉっっ!」


 程なくして、ルゥは号泣していた。

 嬉しさで涙腺が限界突破していた。

 ついでに鼻水もエライ事になっていた。


 感極まったルゥ姫は、間もなく泣きながらアリンと抱き合っていた。

 ここに、二人の人形コレクターが、強い心の絆を再び確認し合う顛末へと向かって行くのだった。


 ……さて。


 茶番はさて置き。


「ねーねー、リダ? それでさぁ? どうして私を連れて行ってくれなかったの? 今回もまた、美味しい料理とか珍しい観光地とかに行ってたりしたんでしょう?」


 ニコニコ笑顔で私へと声を掛けて来たのはルミだ。

 ニコニコ笑顔と表現していたけど、目は笑ってない。

 なんなら、額にデッカい怒りマークなんぞがオマケでくっ付いていた程だ。


「あのなぁ……こっちだって毎度、大変なんだぞ? 今回だって、一歩間違えたから大惨事だ? 世界の危機を救って来た訳だ? 観光なんて悠長な事をしている場合だと思っているのか?」


 今回も御多分に漏れる事なく、ちゃっかり置いて行かれた事に腹を立てているのだろうルミに対し、私は苦々しい顔を作って反論していた。


 ……その時だ。


「キータ観光は楽しかったお! 料理もサイコーだったお! なんなら、それしかしてないおっ!」


 親友ともと、熱き抱擁をかましていたアリンが、器用な事にもルミの質問に答えてみせた……って! そこは言ってはいけないぞ、アリンちゃんっ!

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