パインとココナッツとお母様【13】
「ともかく……このまま学園寮に向かって、不運にも寮内で掃除とかしている用務員のババアとかに見付かった日には大惨事です! 私としては、何処かテキトーな場所で暇を潰してから戻った方が、よりベストかと?」
そして、勇者のクセしてサボる算段をしっかりと私に助言して来るユニクスがいた。
不真面目さに掛けて言うのであれば、コイツの右に出る者は居ないだろう。
流石は悪魔勇者とでも言うべきか。
「うむ! その案で行こうか!」
「え? 本当にサボるお? もう、学校に来れるのに、サボるんだお? 先生に言うお?」
………。
悪魔勇者の提案を無条件で受け入れた私が居た頃、アリンが酷く冷めた目付きで私に言って来た。
く、くそぉ……アリンのヤツ、痛い所を突いて来るなぁ。
仮に担任へと密告られたとしても、テキトーな理由をでっち上げて正当化させる気満々ではあったのだが……最近になって、私のクラスの担任が復帰していた。
名前をリーナと言う。
知っている方がいたのなら、私の物語を隅々まで読んでくれている凄い人だな!
リーナに関して述べると……その昔、人工邪神のプロトタイプとして生まれた人造人間だったりするのだが、ここいらは第四編辺りを軽く読んでくれたら幸いだ。
……で、極論になってしまうのだが、このリーナと言う担任は、私に対して余り良い印象を抱いてはいない。
むしろ悪い印象しかないんじゃないのか? って言うレベルだ。
よって、私にとって都合の悪い何かが発生した場合、喜んで都合の悪い部分を責めて来る。
以前と比較するのであれば、これでもかなり丸くなった方ではあるんだが……ヤツに付け入る隙を与えてしまうと、絶対に面倒な結末を迎えてしまう事だけは確かであった。
く、ぐぅ……む、むぅ!
私的には、早くトウキに到着してしまったから!……とか言う理由で、予定よりも一日早く学校で授業なんぞ受けたくない!
少し早く着いたのなら、むしろ空いた時間を有効に使って、自室でゴロゴロしていたい! これは人間としてのサガと言う物ではないかっ⁉︎
だが、ここで人間らしさを全面に押し出す様な行為に出てしまったのなら、アリンは確実にリーナへと余計な事を口走ってしまうだろう!
何より……親として不真面目な部分を、娘のアリンに見せてしまうのは、如何な物か……?
私は苦悩する!
両腕を組んで、しばらく唸り声を上げていた。
そして『か〜たま……そこまで学校に行きたくないんだお……?』と、心からの呆れを顔面で披露していたアリンの姿を見て、遂に私は決心したのだ!
「し、仕方ない……ではなく、登校するに決まっているだろう? 舐めるなよ、アリン? これでもか〜たまはみんなの模範となる優等生なのだ!」
「模範となる優等生は、学校に行くだけの為に、そこまで悩まないと思うお?」
痛い所を突いて来たね! アリンちゃん!
「ともかく! ほら、今から制服に着替えて登校だ! 準備をするぞ! ユニクスも学校に行けよ? 私だって真面目に登校……」
するのだからなっ!……と、言おうとしていた所で気付く。
ユニクスの姿が既に居なくなっていた事に。
………。
今日は、どうやっても学校には行きたくないのだろうな。
呼吸をするかの様に学校をサボる選択肢を選んだ勇者は、一人で近所の喫茶店へと向かったらしいが……余談だ。
……で、だ?
他方の私達はと言うと?
ガラガラガラッ!
「お早う! 皆の衆!」
三限目の授業に合わせる形で、自分の教室へと登校していた。
服装は制服姿。
登校の準備をするに当たり、一旦自分の部屋に戻った私は、そこで一時間はまったりタイムを満喫したい気持ちをグッと堪え、テキパキと制服に着替えた。
同時進行でアリンも制服姿に着替えている。
最近は自分で着替える事が出来る様になったので、か〜たまも楽で良かった。
こうして自分のクラスでもある二年一組へとやって来た私と、
「どっちかと言うと『お早う』と言うより『遅よう』って感じだけど、帰って来たお〜!」
地味に私の台詞へとツッコミを入れていたアリンの二人がいた。
そんな私達を見て、クラス内の面々はポカーンっとなっている。
……まぁ、そうな?
普通に考えたのなら、こんな時間に登校して来るヤツは早々いない。
学校を舐めてんのか? と、マジで思われても仕方ない時間ではあるのだから。
……と、この様な事を考え、地味に注目される私とアリンの二人がいた頃、
「リダ……アンタ、公休だったんじゃないの?」
フラウが私の前にやって来て、ちょっと驚いた顔になって答える。
……公休?
……っ⁉︎
「そうか! 私は公休扱いだったのかっ!」
フラウの台詞を耳し、私はハッ! っと息を呑んだ。
そう言えば、女神様は言っていた。
学校に来れない間は、学校に来た扱いにして上げます!……と!
つまり、今日は授業に出席してもしなくても、一応の出席扱いになるんじゃないかっ!
表向きは公休扱いでも、恐らくは単位認定されるだろう休みであった事実を前に、私は途方もない絶望感に苛まれるのであった。




