パインとココナッツとお母様【11】
「じゃあ、またですリダ〜。アリンちゃんとユニクスさんもまたです〜。いつになるか分からない……と言うか、早々遠くない内にトウキへと遊びに行くから、その時はよろしくなのです〜」
程なくして、みかんが私達へと口を開き、軽く右手を振って来た。
……早々遠くない内にトウキへとやって来るんだな。
いや、別に来るなと言っている訳ではないんだけど……こうぅ……なんて言うか、みかん達がやって来ると、決まって一悶着が起こる様な気がするから……素直に頷きにくいんだよなぁ……。
「はは……そ、そうか。うむ! その時は私達の学園にも足を運んでくれ。歓迎するぞ!」
本当は、あんまり来ないで欲しいんだけどな!
口から出た言葉と、心の中で思っている台詞が、実に相反した状態になってしまったが……しかしながら、それでもちゃんと友好的な台詞を言う事が出来た私。
取り敢えず、みかんが来た時は……何か問題が起こらないか、目を更にして注視する事にしよう。
「ふふ、そうね? その時は私も一緒にいるから……よろしくとだけ言って置こうかしら?」
みかんの言葉から一拍開ける形でりんごさんが私達へと声を掛ける。
そう言えば、今のりんごさんはみかんパーティの一人になっていたな?
個人的には、りんごさんだけであったのなら、特に気にもしないと言うか、普通に歓迎出来る相手ではあるんだけど……でも、みかんの妹だと考えると……なんだろう? どぉぉぉぉしても気に置けないと言うか、油断出来ないと言うか。
……まぁ、私も少しばかり被害妄想が酷いのかも知れない。
うむ! そうだよな? だってりんごさんって、良い人だし!
私は、心の中で自分に言い聞かせる形で頷いていた。
「では、ココナッツ様! みかん、りんごさん! また、いつか会おう!」
少し間を置いてから、私は答えて右手を振ると、
「またでしゅ! 沢山のお人形の事は、アリン忘れないでしゅお〜っ!」
アリンも私に習う形で右手を振る。
顔は満面の笑みだ。
「今度はプライベートで……例えば、リダ様との新婚旅行などで来たいと思って……リダ様? ジョークです! 真面目にジョークです! だから、右手! 右手ぇぇぇっっ!」
最後にユニクスがオチを担当するかの様に寝言を言って右手を振り……そして、私の右手に怯えていた。
本当に本当にほんとぉぉぉぉぉぉぉぉに懲りないヤツだな! お前はっっ⁉︎
最後は、地味にグダグダではあったが……こうして、私達はココナッツ様の空間転移魔法により、トウキの街へと戻って行くのだった。
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……さて。
今回の話しも、これで最後になる。
結局、私がした事は些末を通り越して、何をしに行ったのかサッパリわからな……い、いや! 行く事に意義があったと言うかさ? なんかそう言う事だと思うぞ!
ともかく、出番と言う出番もなく、単純に背景と化していただけの様な気がしてならないが……問題はちゃんと解決したのだからヨシとして置こう!
うむ!
何事も、ポジティブに捉えた方が上手く行くに決まっているのだ!
……と、妙におかしな誤魔化し……もとい、前口上を入れた上で話しをしよう。
これは毎度の事になるのだが、この話しには基本的にエピローグがない。
どうしてそう言う理由なのかについては、これまでも散々言っている事だから、知っている人はもうご存知ではあるだろうが……ここでも軽く述べて置こう。
物語としては完全に完結してはいない為、敢えてエピローグと言う物を設けないと言う趣旨だ。
別に、こんな物に妙な拘りなんぞ見せなくも良いとは思うんだがなぁ……拘るのであれば、もっと別の所にした方が良いんじゃないのだろうか?
私個人的な解釈ではそうだったりもするのだが……もはや慣例となってしまっているので、今回も同じ形を取ろうかと思う。
そんな訳で、エピローグがない代わりに、各最終章の最終分節がエピローグ代わりと言う形で書いていたりもするぞ?
……と、毎度の事ながら不自然な内容を語った所で、話しを本文に戻そう。
「……戻って来たか」
ココナッツ様の空間転移魔法によって、一瞬でトウキまで戻って来た私は、軽く周囲を見渡しながらも声を吐き出した。
視界が一瞬で変わり……その先は目的地なんだから、毎度の事ながら戻って来た実感がわかない。
いや、これはこれで楽なんだから結構な話しではあるんだけどさ?
「お〜! 戻って来たお! 座標もバッチリだったお! ココナッツしゃましゅごい! 田舎の人とは思えないおっ!」
こらこらアリンちゃんや……。
正直、ここにココナッツ様がいたら半ベソだったろう。
本当にココナッツ様が近くにいなくて良かった。




