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こうして私は無双する・リダVer  作者: まるたん
第八編・最終章
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パインとココナッツとお母様【7】

 もはや、完全に私達の事なんかアウト・オブ・眼中であったココナッツ様。


 うん、いいやもう……サッサと帰ろう。


「それでは、帰りは私が空間転移魔法テレポートを発動させて、トウキまで送ります……が、正直に言いますと、私ってキータ生まれのキータ育ちなので、実はトウキまで行く事があまりないんですよね……」


 ココナッツ様は、答えて間もなく恥ずかしそうな顔になった。


「へぇ、そうなんですか? つまり、生粋の田舎者?」


 ……って、オイ!

 しれっと貶し文句を口にするユニクスがいた。


 そう言うのは、かなりデリケートな部分なんだから!

 特に、北部の人間は結構気にしてんだから!

 つか、お前だってトウキに暮らしているだけで、出身はクシマじゃないかっ!


「そ、そうですね……ほ、本当に恥ずかしいお話しなのですが……田舎者なのです、あはは……」

 

 ユニクスの言葉にココナッツ様は顔を強張こわばらせて頷く。

 ほら見ろ! ココナッツ様、涙目じゃないかっ!

 頑張って堪えてはいるけど、身体がプルプルいってるじゃないか!

 どうするんだよ! この、やるせなくなってしまう空気っ⁉︎


「いやいや、ココナッツ様! キータは都会ですよ? かなり栄えている街ではありませんか! こんな大きな都市にまで発展させたココナッツ様は、やっぱり素晴らしい女神様だと思いますよ!」


 直後、私は必死でフォローを入れて見せる。

 

「そ、そうですか? そう言って頂けると、私も素直に嬉しいですね? この街はやっぱり、私にとって掛け替えのない家族の様な物ですから」


「確かに大きな街で、栄えてはいると思いますが、トウキと比較しては行けませんねぇ? 何年前のトウキをご存知なのかは知りませんが、キータと比較したら、首都・トウキは天地の差が……リダ様? どうして右手を私に向けるのです? 私は事実を語ったまで……いや、リダ様? ちょっ……リダ様ぁぁっ⁉︎」


 ドォォォォォォォォンッッッ!


 マウント馬鹿は爆発した。

 全く! 悪魔ぜんせの習性なのかも知れないが、女神を本気で泣かしに掛かるんじゃないよ!

 

「アホの言う事は気にしないで下さい。キータの街は、本当に良いところですよ!」


 真っ黒焦げになってバッタリ倒れたユニクスを尻目に、私は快活な笑みを満面に作りながら答えた。

 

 事実、これは嘘ではない。

 首都・キータはやはり発展した都市がちゃんとあるし、街も経済が回っている。


 観光としても見所が一杯あって楽しい街だし、水と米が美味しいから酒も素晴らしい!

 なんと言ってもこれだな!

 特にロクゴー!

 私は、これに惚れたよ! 

 また、いつか……キータの街にやって来る時が来た、その暁には……絶対の絶対にロクゴーを飲んでやるのだ!


 ハタハタを酒のつまみに一杯やる楽しみ……これを考えるだけでも、究極の贅沢であり至福でもある!


 うむっ!

 キータの街は素晴らしい所だった!


「では、ココナッツ様……名残惜しい所ではありますが……私達はこれにて失礼させて頂きます」


 さらば、キータ!

 また、会う日まで!


 そうと心の中で言葉を紡ぎ、トウキへと帰るべくココナッツ様へと頭を下げる私がいた。


「えぇと……は、はい……そ、そうですね……まぁ、なんとかなるでしょう」


 私の言葉に、ココナッツ様も頷く……頷くんだけど、だ?


「あの……何かありました?」


 私はちょっと不思議そうな顔になる。

 どうもココナッツ様の様子がおかしい。

 厳密に言うと、ココナッツ様の言動に不自然さがある様に感じられた。


「え?……い、いえっ! 何もありませんよ! ええ、そうですとも……そうに決まってます!」


 何が『そうに決まっているのだろう』か?

 妙に不安で仕方ない。


 そんな時だった。


「ココナッツしゃま?……もしかして、トウキの転移座標に迷ってるお?」


 アリンがココナッツ様へと尋ねる。

 この言葉に、ココナッツ様は『びくぅっっ!』っと、過剰に反応していた。


 紛れもない図星だった。

 ここまで純然たる図星を、私は見た事がない。


 更に、


「そ、そそそそ、そんな事はございませんよ? 私だってシティな女神様で、トウキにも何回か行っておりますから〜!」


 瞳を全力で泳がせつつ、額からダラダラと冷や汗を滝の様に流して誤魔化していた。


 シティな女神って何だよ?

 そもそも、そんな台詞を言ってる時点で、都会人とは無縁の生活を送っている様に見えてしまうのだが?


「か〜たま……これは危険が危ないお……きっと、トウキを知らないココナッツしゃまが空間転移魔法テレポートを発動しゃせたら……アリン達、絶対に変な所でワープアウトしちゃうお? トウキ駅のど真ん中にある線路の上とかに空間転移して列車に轢かれたり、トウキ湾の真上に出て……そのまま『ドッポォォォォンッ!』とかもあるお〜?」


「そ、そんな事! やってみなければ分かりませんからぁっ!」


 神妙な顔になって語るアリンの言葉に、ココナッツ様は顔を真っ赤にして叫ぶ。

 てか、もっと安心出来る反論の仕方をして!

 その言い方だと、むしろ不安になるからやめて!


 ちゃんと『絶対にありませんから!』と反論してくれませんかねぇっ⁉︎


 私の中で、ココナッツ様の信頼が瞬時に暴落したのは言うまでもなかった。

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