二人の女神と母と勇者様【26】
「まだまだ、私も甘い……そう言う事なんだろうな」
誰に言う訳でもなく独りごちる私がいた。
世の中には、まだ……自分なんかよりも強い猛者もさが居る。
それなら……まだ、努力をする甲斐もあるし、必要だってある。
「いつか、りんごさんとも、戦ってみたい所だな……」
答え、私は私なりに新しく目標が出来た事で、強い高揚感の様な物を胸に抱く事となった。
他方、その頃。
「決めたわ! ここは、オーソドックスに火炙りからの水責めにしようかと思うの? それで良いかしら、ココナッツ?」
ぽんっ! っと、手を軽く叩いてから言うりんごさんの姿があった。
………。
それで良いと言うヤツは居ないと思うぞ?
私的に、単純にツッコミを期待しているんじゃないのか?……と言いたくなる様な台詞を、コロコロと軽やかに答えていたりんごさんの姿に軽く引いていた。
私は、ここまで実の娘に非道な振る舞いをする事なんて出来ないなぁ……。
ただ、これも母親として娘に対する躾の一種なのだろう。
相手が人間ではなく女神様であったが故に、やっている事が一々人外の極みではあったんだけど、りんごさんも決して殺意を込めてやっている訳ではない……ないよね?
ちょっと疑問符が入ってしまったのは、他でもない。
超スピードで間合いを詰めて来たりんごさんは、ココナッツ様を素早く地面へと叩き伏せた後……瞬間移動も真っ青な速さで虚空へと舞い上がると、
超絶火炎球魔法!
実は殺意があったんじゃないのか? と言いたくなるまでの極大魔法を発動させていた。
もう、バリバリの古代魔法だった。
こんなの、現代魔導では使い熟せる人間なんぞ居ない!
イシュタル様から貰った、クッソ汚い魔導書には載っていたけど……いや、だからこそ言える!
とどのつまりは、神話レベルの大魔法!
ボフゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ!
バカみたいに巨大な火炎の球たまが、りんごさんの頭上に生まれていた。
大きさは軽くりんごさんの十倍以上はある。
しかし、ポイントはその大きさではない。
大きさだけを言うのであれば、りんごさんが今発動した一つ格下の魔法『超火炎球魔法』よりも小さい。
よって……威力的には、格下の魔法でもある超火炎級魔法の方が高いんじゃないのか?……そう思われてしまうかも知れない。
しかしながら、もちろんそんな事はない。
大きさは多少小さくなっているが……生まれて来た火球の中に含まれる魔力の密度は、ハッキリ言って段違いと述べても過言ではなかった。
魔法とは、発動した時の外見(物理的な物)ではなく、その時に含まれている魔力の濃密度によって大きく左右されるのだ。
よって、外見的には地味になったとしても、その威力は凝縮された魔力の濃密度の高さによって格段に変わってしまう。
果たして。
「……うぅ……ぐぅ……ぅぅっっ!」
超絶火球魔法が眼前にまで押し寄せて来たココナッツ様が、咄嗟に魔導防壁を発動するが……超高密度の魔力によって、アッサリと防壁を突破されてしまう。
「うがはぁぁぁっっっ!」
発動した魔導防壁の上から、致命的なダメージになるだろう一撃を受けたココナッツ様は、業火の炎に包まれる形で悲鳴を上げながらも吹き飛んで行った。
人間同士の戦いではないと言う事は分かっている……いるんだけど、次元が違い過ぎて草も生えない。
こんなのを見せられてしまうと、私も苦笑いしか浮かべる事が出来ないのだが……?
「さぁ、これでトドメよ? 精々……死なない事を祈りなさい!」
トドメ刺すんだ。
……なんか、りんごさんが恐ろしい台詞を口にしていた。
あなたは、単純にココナッツへとお仕置きをしていただけだったんじゃないのですかねぇ?……と、思わずツッコミを入れたくなってしまう様な台詞を、臆面もなくほざく。
そして、
超絶水流魔法!
両手を上げて発動させて来た魔法もまた、ココナッツを本気で殺しに掛かっている様な魔法だった。
またしても神話時代レベルの古代魔法を使ってるよ……。
本当、りんごさんって何だろうね?
魔王よりも強いとか、そう言うレベルを軽く逸脱している気がするんだけど?
発動の瞬間、りんごの背後に巨大な滝みたいな水流が発生した。
規模もべらぼうに大きい。
もはや、大津波だ!
他方のココナッツ様は、全身火傷状態になっていて、立ち上がる事すら出来ない!
虫の息と述べて良いまでに完膚なきまで叩きのめされた状態になっていたココナッツ様は、りんごの発動した魔法を防ぐ事も逃げる事も出来ず……ただただ、ひたすら倒れた状態で、ガタガタと震えるしか出来なかった。
……その時だった。
「待って下さい! お母様!」
超絶水流魔法を発動させ、ココナッツに狙いを定めた直後、倒れて動く事が出来なかったココナッツの前に、パインが立ちはだかる形で空間転移テレポートして来た。
……なぬっ!
余談だが、ミナトも一緒だ。
いや、それ……ヤバイだろっ⁉︎




