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二人の女神と母と勇者様【21】

 他方、その頃。


「やっと、みかんさんの出番が来ました!」


 開口一番……無駄にハイテンションなみかんがしゃかりきになって叫んでいた一方で、


「あんたの出番はないわよ? 腐れキノコ?」


 冷静なツッコミをしれっと口から吐き出すりんごさんがいた。

 確かにみかんの出番があるとは思えなかった。


「ノォォォッッ! そんな馬鹿なっ! みかん本編じゃ、みかんさん出ないから……せ、せめてリダ本編だけでも無駄に出しゃばってやろうと言う、みかんさんの崇高な作戦は無駄だったと言うのですかっ⁉︎」


 そこに崇高な物などなかった。


「何を訳の分からない事を言っているのか分からないけれど……リダに迷惑を掛けるのはやめておきなさい? 恥をさらけ出すのは、私達だけで十分……ううん、根本的に迷惑だからやめて頂戴。それと、みかん本編も一部シンクロしているから、リダ本編だけじゃなくてみかん本編でもあなたの醜態が出て来るわ?……残念な事にね?」


 そして、りんごさんは嘆息混じりに身も蓋もない台詞を臆面もなく答えていた。

 だから、そう言う身も蓋もない話しをするのはやめてくれませんかねぇ?


「ともかく、そこで大人しくしている事ね?」


 りんごさんは、話を強引に打ち切る形で『シッシッ!』っと、右手をプラプラさせてみかんを払うと、ユニクスとココナッツ様の戦いへと再び視線を戻してみせる。


 そんなりんごさんの表情は、どうにも困っている様に見えた。


 きっと、戦況が余りかんばしくない様に見えてしまったのだろう。

 無理もない。

 さっきから防戦一方で……かつ、ようやく反撃を見せたのが、先ほどの一撃のみだった。


 しかも、だ?


「……くっ!」


 思わず反撃しちゃった一撃が、自分でも思っていた以上にココナッツ様へと大ダメージを与えてしまった為、そこから以降は再び防戦へと転じる……いや、演じるユニクスの姿があったのだ。


 結局、やっぱり……極論からすれば、どぉぉぉぉしても私を表舞台へと引き摺り下ろしたいのだろう。


 大した根性だな……おい。


「おい、ユニクス! お前! 遊んでんじゃないよ!『あの程度』の相手なら、そこまで苦戦しないだろ? 私なら『五分で倒せる』ぞ!」


 イライラした顔になって野次を飛ばす私。

 

 もう、良いや。

 こんな茶番を見せられるぐらいであるのならば、私が直接行って叩いた方が手っ取り早くて良い!


 ここで助っ人を名乗り出ると、絶対にユニクスが『やっぱりリダ様が助けてくれると信じておりました! 白馬の王子様はリダ様だったのですね!』って感じの……徹頭徹尾に置いてツッコミしか出て来ない、明後日スペシャルな戯言を、小躍りしそうなハイテンションでほざいて来ると思っていたし、ユニクスの寝言を耳にしただけで背筋に怖気が走る事が確定していたので、敢えてやろうとはして居なかった……つか、真面目やれ!


 結局の所、私が抱く事になるだろう悪感情よりもしびれを切らした気持ちが上回った事により、渋々ながらもココナッツ様との戦いに私が終止符を打ってやろうと、吐息混じりに考えていた頃、


「……あら?」


 りんごさんは、意外そうな顔になる。


 直後、私もちょっと驚いた。


 いきなり煙の様に現れた、その出現の方法にも驚かされたのだが……そこは空間転移魔法テレポートを発動させる事が出来るからと言う理由で納得出来る為、そこまで呆気に取られる事もなかった物の……突発的に出現した二人の姿には、目を丸くしてしまった。


 何故なら、この場にやって来た二人と言うのは……パインとミナトの二人であったからだ。


「……ここは、街の郊外か?」


 ミナトは、軽く周囲を見回しながらも口を動かしていた。

 表情を見る限り、ミナト本人も良く分かってないらしい。

 多分、一緒に空間転移して来たもう一人、パインの任意によってやって来たからなのだろう。

 

「……良くここが分かったわね? ちょっと驚いたわ?」


 パインに気付いたりんごさんは、意外そうな顔になって言う。

 すると、パインは『えっへん』と、無駄に胸を張って答えた。


「パイン・システムに掛かれば、相手の所在地を知る事なんて簡単です! 相手の意識に潜り込んで情報をキャッチして、あとは情報を元に所在地の座標を断定するだけで良いのですから!」


 なるほど、わからん。

 取り敢えず、そう言うのがあるんだな?

 GPSの親戚みたいな物なんだろうか?


「……ああ、パイン・システムがいたわね。なるほど、理解出来たわ……あの頃の人工知能システムは優秀だったから、その程度の芸当は可能だったわね? パイン本体が出来る芸当にしてはおかしいと思っていたのよ」


「んなっ! お母さん! それは聞き捨てなりませんよっ⁉︎ それでは、私よりもパイン・システムの方が優秀と言う事になってしまうではありませんかっ! 確かにパイン・システムは優秀ですが、本体の私あり気の存在ですよっ⁉︎ そこは私を褒めるべきではありませんかっ⁉︎」


 納得するりんごさんに、パインは思い切り不服そうな顔になって叫んでみせた。


 ハッキリ言って、良く分からない理屈だったし、本気で相手にするのもバカバカしい内容でもあった。


 だからだろう。


「ああ、そうね? そうして置きましょう? うんうん、偉いよパインは……はいはい、偉い偉い」


 りんごさんは超絶テキトーな口調でプラプラと右手をヒラヒラさせながら相づちを打っていた。

 地味にサバサバした性質の持ち主と言えた。

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