二人の女神と母と勇者様【20】
直後、ココナッツ様が疾風怒濤の勢いで私達の方へとやって来た!
厳密に言うと、私達ではなくユニクスを狙う形で追撃して来たのだ。
ドンッッッッ!
すかさずユニクスは動いて、ココナッツ様の攻撃を防いで見せる……と、同時に私とアリンの二人はソッコーでその場から離れて見せた。
まるでロケット砲の様な勢いで突進して来たココナッツ様ではあったのだが、同時に強烈な魔導式をも頭の中で紡いでいたからだ。
「……え? ちょっ……リダ様! 置いてかないでっ⁉︎」
ユニクスがココナッツ様の攻撃に立ち塞がり……ガードする事で一瞬動きが遅れてしまう中、一切の躊躇すらしなかった私とアリンの二人は一気に百メートル前後の間合いを取った……その時、
断罪の爆雷!
カッッ………ドゴォォォォォォンッッッ!
空から青白い稲妻が落ちて来ては、大爆発していた。
おっそろしいなぁ……割りと本気で。
魔法的に言うのなら超魔法と同じ程度の魔法である為、発動させる事が出来たのなら、その時点で一定の威力があるのは容易に予測する事が可能な魔法ではあるんだけど……そこを差し引いても凄まじい。
やはり女神様の魔力は桁違いと表現すべきだな!
瞬時に百メートルは離れたと言うのに、その余波がこっちにも来ていた。
私とアリンの二人はソッコーで魔導防壁を発動させる。
「ココナッツしゃま……って、魔法が得意なんだお? アリン、あんな魔法喰らいたくないお、メチャクチャ痛そうなんだお〜」
アリンは呆然とした顔になって答えた。
普通の人間なら、痛そう所の話しではないと思うのだが……やっぱり無敵の三歳児は言う事が違う模様だ。
どちらにせよ、アリンなりに危機感を抱き始めた事だけは確かだった。
爆風が鎮まり、魔導防壁を解いて間もなく……恐怖からか? 私の身体に纏わり付く形で、腰の辺りにしがみ付いて来た。
……ふふ。
こう言う所を見ていると、やっぱりアリンもまだまだ子供なんだなって思う。
「大丈夫だぞ、アリン? か〜たまが近くにいるだろう? だから大丈夫だ」
「……う、うん」
やんわりと微笑みながら軽く頭を撫でてやると、アリンも少しだけ心が軽くなったのか? ちょっと笑みを混じらせながらも頷いてみせる。
……ま、どうにかなるだろう。
確かに魔力だけを見ればとんでもない実力の持ち主だ。
超龍の呼吸法レベル9程度まで上昇させた時の私張りに魔力があると見て良いだろう。
しかし、開くまでも『それだけ』だ。
私からすれば、勇者としての特殊スキルを貰っていたユニクスの方が何倍も脅威に感じたね!
魔法勝負に持ちこまれたら、かなり苦戦を強いられたかも知れないが、要は『魔法戦にならなければ良い』だけの話しだ。
仮にココナッツ様の攻撃魔法を受けたとしても、一発程度なら耐えられる!
瞬時にレベル9にして魔導防壁を張り……攻撃を受け切って間もなくレベルを一段階落とす……と言う感じの防御方法だってあるしな?
なんにせよ、身体能力だけを見れば、そこまで高い訳ではない。
魔法を撃たせる前に黙らせる事だって、決して難しい話しでもないだろう。
これらを加味するのなら、私の出番は完全にない。
そもそも? この話しはユニクスが頑張って解決して欲しいと、女神・イシュタルから頼まれた案件なのだからして、私が直接出しゃばる必要性なんぞ、最初からなかったのだ。
「リダ様……これ、マジでヤバいです……ケホケホッ! 油断したかも……ぐはぁっ!」
……でも、ちょっとヤバいかもだ。
超弩級の爆雷を受けて身体をよろめかせていた所に、ココナッツ様の飛び蹴りが入る。
更に止めとして、空中で踵落としを決め様とした模様だが……これはユニクスが避けていた。
……ふむ。
ここらが体力の限界かな?
私は冷静な観点から物を見据えていた。
尚も続くココナッツの攻撃を、ユニクスは全て回避していた。
ここから察するに、ユニクスの生命力は本当にギリギリの所まで来ているのだろう。
しかしながら、その動きはキレが鋭く……かつ、隙がない。
的確にキッチリと相手の動きを見てから避けていた。
つまるに、能力的な意味で述べるのであれば、悠々とココナッツ様の攻撃を捌き切る事が可能になっていたのだ。
物理攻撃では敵わないとみたココナッツ様は、即座に後方へと飛んでは魔導式を頭の中で紡ごうとするが、
ドンッッッ!
ここに来て、ようやくユニクスは攻撃に転じた。
……やれば出来るじゃないかよ。
ともすれば、やはりアリンの予測が正しかったのかも知れない。
魔法を発動させようと、両手を前に出していた瞬間にココナッツ様の懐へと潜り込んだユニクスのアッパーが、鮮やかにココナッツ様の腹部を抉っていた。




