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二人の女神と母と勇者様【19】

「ユニクスさん……だったかな? 私とココナッツの邪魔をする気? それとも、何? 私のフォローをするつもりだったのかしら?」


「フォロー?……いいえ違います。まずは、この私が先陣を切る形で戦おうとしているのです! 誇り高き勇者として!」


 不思議そうな顔になって尋ねるりんごさんの言葉に、ユニクスは意気揚々と語った。

 

 うむ! その心意気やヨシ!

 誇り高き勇者であるかは置いておくにしても、ヨシ!


「……ふぅ〜ん、そうなの? ま、良いわ? 好きになさい?」


 ユニクスの言葉を耳にしたりんごさんは、素直に第一線から離れてみせる。

 想像以上にアッサリ引いたな?


 ま、りんごさんからすれば、些末な出来事に過ぎないのかも知れないが。


「ガァァッッッ!」


 他方、後方へと引いたりんごさんを見て、ココナッツ様が素早くりんごさんを追尾しようとするのだが、ユニクスによって通せんぼを喰らう。


「女神・ココナッツ。あなたの相手は、この私だ!」


 そして、勇猛果敢な態度で対峙して見せた。

 ……こう言う所だけを見ると、ユニクスも勇者らしい。

  

 程なくして、破滅の女神はユニクスを敵と認識したのか?


「ガルゥアァァァッッッ!」


 勢い良くユニクスへと攻撃を始めた。


 ヨシッ!……と、私は心の中でのみガッツポーズする!

 これでちゃんと『私達は努力しました!』って言う口実が成立したぞ!


 迫り来るココナッツ様の鉄拳に対し、ユニクスは毅然とした態度で、


「ブボブバブベェッッ!」


 全ての攻撃を喰らっていた。


 ………。


 いや、何やってんの? お前?


 私が見る限り、全てがクリーン・ヒットしていた。

 本当に……何がしたいの? お前?


 私はポカンとなってしまった。


 手を抜いているとか、そう言うレベルではない。

 完全に『私はこれからやられます!』と、言ってる様なレベルだ。


 幾らなんでも、これはない。


「……マジで、何をやってるんだ? アイツは?」


 余りにも酷い動きで、ココナッツ様の攻撃を何一つ防げて居ないユニクスを見て、私は思い切り眉を寄せている中、


「ありぇは、ユニクスなりに考えているんじゃないかなぁ……って、アリンは思うお? 確か『何者にも屈しない勇気』ってのが、ユニクスにはありゅんだおね〜?」


 私へと、アリンは言って来た。


 ……ふむ。


 言われて見ると、ユニクスには特別なワイルドカードがあった。

 アリンが私へと答えた勇者のスキル『何者にも屈しない勇気』が、まさにそれに値する。


 このスキルの特性は、前に何度か述べているので、ここでわざわざ説明するまでもない事かも知れないが……簡素に軽く述べて置こう。


 ダメージを受ければ受けただけ、己のステータスが上昇するのだ。


 よって、瀕死に近付けば近付くだけ……死の狭間はざまに向かえば向かう程に、己のステータスが爆発的にアップする。


 これらの特性を踏まえるのであれば、今のユニクスが『わざとココナッツ様の攻撃を喰らっている』と見る事だって、あながち的外れではなかった。


 あるいは、自分の固有スキルを練習がてら使おうとしているのかも知れないな?


 自分を何処まで追い込む事が出来るのか?

 一つ間違えると再起不能になってしまい兼ねない……言わば、チキン・レースの様な見極めや判断と言う物は、なるほど確かに実践で試して見る事が一番の練習になるのかも知れない。


 だけどなぁ……なんかなぁ……?


「私的に、アリンの予測が正しいのなら、アリだとは思うんだけど……」


 私は地味に複雑な顔になってしまう。

 なんて言うか……確実に違う事を考えている様な気がしてならないんだよなぁ……。


 そんな事を考えていた頃だった。


 ズザザザァァァァッッッッ!


 ココナッツ様に吹き飛ばされたユニクスが、私達の眼前にやって来る。


 背中から地面に落ちていたユニクスは、そのまま数メートルばかり地面に引き摺られる形で勢い良く滑っていたのだが……私達の足元付近でピッタリと止まって見せる。


 一見すると、偶然っぽく見えるが、私は知っている。

 これは必然だ。

 絶対に狙って私達の足元まで吹き飛ばされて来たに違いない!


「……はぁはぁ……お逃げ下さい、リダ様……やはり破滅の女神は、とてつもない力を持つ、凶悪な存在でした」


 背中でスライディングを決めて居たユニクスは、額をクシャッ! っと歪ませた顔を作り、悲痛めいた語気のまま私へと答えた。


「分かった、そうする!」


「待って下さいリダ様! 素直に逃げては行けません! 確かに凶悪かもしれませんが! そこは否定しませんが! けれど、リダ様と協力すればあるいはどうにかなるかも知れませんよね? これが私とリダ様の二人による、初めての共同作業になり得る案件ですよねっ⁉︎」


 ユニクスの忠言を素直に受ける形で、アリンと一緒にその場を立ち去ろうとした私の肩を、ユニクスは『ガシィッッ!』っと掴んで来た!


 相変わらず変な戯言をほざくんじゃないよ!

 両手に鳥肌が立ってしまったではないかっ!  

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