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二人の女神と母と勇者様【9】

 この調子なら、りんごさんが上手に解決してくれるかも知れないな?

 今の所、りんごさんがどの様な解決策を持っているのかまでは分からないが……決して悪い話しではないだろう。


 そう考えるのであれば……もう、りんごさんに全部任せてしまっても構わないだろう。


 だが、ココナッツ様は猛然と反論する。


「そんな物はありません! 少なからず、破滅の女神に対して出来る最大限の配慮があるとするのなら、このまま大人しく寝て貰う事のみ! これでも、私が見せる最上の配慮です! 元来であれば即座に排除されてもおかしくないまでのごうを持ったパインに対し、せめてもの慈悲を『私は与えた』のです! これ以上の慈愛など他に存在しません!」


「……やれやれ、ね? 偶然ではあったけれど、私は思ったよ『この場に私が居て良かった』と、ね?」


 物凄い剣幕で騒ぎ立てるココナッツ様に……りんごさんは依然として平静さを保った状態のまま口を動かして行った。


 ……と、その時だった。


 りんごさんは、パインの耳元にソッ……っと、口を近付けた後、ボソッ……と囁く感じの声を吐き出していた。


 ……?


 りんごさんの言葉を聞いた私は、地味に眉をひそめた。  


 私の耳は特別製……と言うか、特殊な自動スキルがある為、どんなに小さな声であっても、明確に聞き取る事が出来る。

 よって、呻き声にも近い微かなかすれ声であろうと、それがちゃんと言葉としての意味を成す発音さえしていれば、しっかりと聞き取る事が可能だったのだ。


 ……が、しかし……だな?


 りんごさんの言っている意味は、地味に分からない。


 一応、なんと言ったのかは分かる。


 因みに、りんごさんが言った台詞は、こうだ。


 母様を信じなさい。


 ……うむぅ。


「……意味深だな」


 誰に言う訳でもなく、私は独りごちる。


 一体、何を根拠に……いや違う……何を指しての『母様を信じて』なのか?


 分かっているのは、パインだけに言いたかった台詞だと言う事だ。

 もちろん、どうしてパインだけだったのか? 今の私にはサッパリ理解する事が出来なかった。


 全く予期せぬ方角から、予想しなかった声が唐突に転がって来たのは、この直後であった。


「あ! シリア! すまん! ちょっと野良女神が家出したんだけど、何処にいるか知らないかっ⁉︎」


 少し焦った口調で叫んでいた声の主は、ついさっきまでパインの近くいた金髪の少女……いかにも良い所のお嬢様と言わんばかりな人物へと足早に駆け寄ってから声を吐き出し、


「……ってか、なんで大通りに、こんな美人ばっかが勢揃いしてんだ? ここは、いつから美人の溜まり場にっ⁉︎」


 現状の光景を見て、かなりビックリ仰天していた。


 うん、まぁ……そうな?

 確かに、ここには綺麗な女性が大集合しまくっていると思うぞ?

 そこは否定しない……否定する要素が微塵もない。


 特に、私と言う絶世の美少女が居るのだからなっっ!


 ………。


 うむ、冗談はここまでにして置こうかっ!

 ちょっと恥ずかしいし!


 私的に言うのなら、今ある光景を見て『美人の溜まり場』と勘違い出来る、その思考能力に驚いたぞ。


 何処をどの様に考えると、美人の溜まり場なんぞと言う結論へと結び付ける事が出来るのかは知らないが……明らかに明後日あさっての台詞を口走っていたのは……ミナトとか言う少年であった。


 そして、ミナトが声を掛けていたお嬢様風の少女……と言うか、バリバリお嬢様なのだろう人物の名前は、きっとシリアで間違って居ない筈だ。

 だって、ミナトがそう呼んでいた物。


 そして、ミナトの発言に心底呆れている様にも見える。

 ……確かに呆れてしまってもおかしなくない発言ではあったがな!


「別にここは美人の溜まり場じゃないからね? 今日は偶然そうなってるだけ……だから、毎朝ここに散歩しに来ようかなぁ?……なんて思っても、単にミナトが少し健康になるだけで終わるからね? 強いて言えば、毎朝この時間に散歩するのなら、毎朝私に会うだけで終わるよ……うん、やっぱり散歩したら?」


「そうか、綺麗なお姉さんの溜まり場ではないのか……残念だ」


「他に言う事はないのかな? 綺麗なおねーさんのシリアちゃんが毎朝通っている部分は間違いないんだから、毎朝散歩しに来なさいよ!……ああ、それとね? お目当てのパインさんなら、そこで大きな箱の中に入っているよ」


「は? 箱?……おいおい、シリアさんよ〜? いくらウチのパインがアホだからと言って、こんな大通りで箱の中に入るなんて馬鹿な事を………してるな? いや、うん……ごめん、俺が悪かった。やっぱりパインはアホの子だった」


 シリアの言葉を耳にし、ミナトは地味に頭を下げていた。


 ……これは、新手のコントかな?

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