表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1274/1397

二人の女神と母と勇者様【7】

「それは結果論に過ぎません! 実際に私は『始まりの女神』として、このキータ国を繁栄させました! 大きく豊かな国にしました! そして、パインは破滅の女神として忌み嫌われる存在に成り下がっております! この事実を覆す事など、どうして出来ると言うのですか!」


 何処までも食い下がりたい気持ちばかりが何歩も先に行っていたココナッツ様は……もはや、苦し紛れとしか他に言い様のない台詞でりんごさんへと反論してみせた。


 果たして、りんごさんは言う。


「……と言う『気丈な振る舞い』をする事が出来るのも、あなたの特徴なのよ? つまり『自分と言う存在をアピールする』と言う事に関して言うのなら、あなたはパインの何倍も秀ひいでている……こう答えると、皮肉っぽく言ってる様に聞こえるかも知れないけど、これはこれでココナッツの良い所よね……同時にアナタの悪い癖でもあるんだけどさ?」


 答えたりんごさんは、肩を竦すくませて口を動かした。

 

 ……参った。


 りんごさんの言っている事に、つくづく同調してしまう。


 そりゃ、確かにさ?

 ココナッツ様はこの国を頑張って繁栄させたよ?

 そこは素晴らしい事だと思うし、私も素直に称賛したいと思う。


 だからと言って、自分で自分のやった事を称賛するのは……ちょっと違うんじゃないのだろうか?


 どんなに素晴らしい偉業を達成したとしても、それを大っぴらに自画自賛している様では、聖者として失格だと思えてならない。


 そして、きっとココナッツ様本人だって、それは分かっている。

 

 だけど、引くに引けなくなって、つい口から出てしまったのではないのだろうか?


 極論からすれば、ココナッツ様もまた……りんごさんに褒められたいのだろう。


 だけど、りんごさんの目はパインにしか向けられなくて……。

 立派にやって来た筈の自分には、厳しい叱咤の言葉しか、りんごさんの口からは出て来なかった。

 その事実が……より、ココナッツ様の心を痛め付けているのだろう。


 なんとも悪循環な負のスパイラル……とでも言うべきか。


 私としては、りんごさんの意見を参考に、ココナッツ様の心がこれ以上傷まない程度の解決策を探りたい所だ。


 正直、かなり難しい話しではあるんだが……さて、どう切り出すべきか?


 ……と、この様な形で思案に暮れる私がいる中、りんごさんの口が動いた。


「……アナタは、私的に見て二つの間違いを起こしているわ? 一つは己を美化し過ぎている。謙遜ばかりしろとは言わないけれど、過信も良くないわね? 自分と言う存在が誇らしいのは確かだけど、そう言うのを自分の口からポンポン出す物ではないわ?……そして二つ目。パインの事ね? 一つ間違えれば、自分が起こしていた過ちを『全てパインのせい』にしているのよ? アナタは?……そりゃ確かにね? 言っている事は間違った事ではないし、あなたには一切の過失だってなかった……でもね? 普通は良心の呵責かしゃく程度は感じる物よ? 考え方の視点を少しだけ変えてご覧なさい? パインは、あなたが辿る筈だった末路を『代わりに』辿った存在でもある……とも、考えられるでしょう?」


 そう答えたりんごさんは、未だ箱の中から出て来ないパインの頭を優しく撫でていた。


 ……うん、分かる……分かるよ? りんごさんの言いたい事は。


 再び、超高速で直球を投げるかの様な言霊をココナッツ様に投げ掛けたりんごさんの言葉は、もはやダメ押しとしか表現出来ない様な言葉だった。

 何なら、言葉の繰り返しと述べても過言ではない。


 少し前にズバリ答えた言葉の内容を、より噛み砕いて述べているだけなので、意味合い的に述べるのなら、同じ事を二回言っている様な物だ。


 それだけに、私としても心が苦しい。


 ココナッツ様は、その事実があっても尚……パインだけに優しい視線を向けている姿に納得が行ってない。


 不公平極まる理不尽な現状に、心が正常に動いていない……そんな心理状態に見えた。


 ……ここで、もう少し冷静に……かつ、りんごさんの言葉を真摯に受け止める事が出来たのであれば、事態は変わったのかも知れない。

 けれど、今のココナッツ様を見ている限り……それは極めて困難な心情に見えた。

 

 ……む、むぅ。


 なんとかして、ココナッツ様を落ち着かせる事が出来ない物だろうか?

 

 今のココナッツ様に大切なのは……きっと、理解力と冷静さだ。

 

 りんごさんは一見すると、パインだけを贔屓目で見ている様に見えるのだが……岡目八目を置く私の視点からすれば、割りと『平等』だ。


 理由は簡素な物で、りんごさんは飽くまでも母親として娘に間違いを正しているだけであったからだ。


 そして、その間違っている部分はちゃんと直しなさいよ?……と言っている。

 他方のパインに優しい視線を向けているのは、結果論に過ぎない。


 恐らく、私の予測に間違いがないのであれば、りんごさんはココナッツ様にだって、ちゃんと優しい目を向けてくれるだろう。


 自分の過ちを認め『ごめんなさい』と謝れば。


 たった一言の言葉がココナッツ様の口から出れば、それで万事解決する……そうと、私は考えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ