表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1270/1397

二人の女神と母と勇者様【3】

 贔屓目に見ても、勇者が女神の命を受けて遠い異国の地へとやって来た……と言う目的からちょうど百八十度は違うだろう状況に、多少の開き直りすら抱く私がいた。


 思わぬ展開が待っていたのは、ここから間も無くの事であった。


 私達にとって、当初の目的などあってない物だと高を括り……今日も今日とて、ココナッツ様の観光案内を受けて、キータの中心市街地にある大通りへと向かった時……それは起こった。


 朝もまだ早いと言うのに、多くの人が行き交う市街地の大通りにて、一際目立つ謎めいた大箱があったのだ。


 これだけでも私としては目を疑うに値する代物だと思えてならない。

 そりゃそうだろ?

 だって、ここ……首都のど真ん中だぞ?

 なんで、そんな所にデッカイ箱があるんだ?


 しかも……中に誰か入ってるしっ!


 これだけでも異様な光景に見えると言うのに、更には箱の周囲に立っている人物が、やたらと馴染みのある顔触れだったりするから……なんてか複雑だ。


 率直に言って、あんまり関わりたくはないんだけど……恐らく、否……限りなく絶対と言って無理な話しと言えるだろう。


 私としても、今回の一件には完全に首を突っ込んでいる様な状態だしな。

 もう、他人のフリをする訳にも行かないだろう。


 ……思った私は、


「なんだ、みかん達じゃないか? お前らも観光か?」


 思い切って、自分から声を掛ける事にした。

 地味ぃ〜に、素知らぬ顔をして……だったが。


 やや惚けているかの様な口振りであったのは、自分なりの抵抗と言うか……さも自分は関係ありませんよ? と言う方向へと話しを持って行きやすい様にする為の、ちょっとした予防線を張る為だ。


 もちろん、この様な細やかスペシャルな抵抗をした所で、何かが変わる……なんて、クッソ甘い事を期待していた訳ではない……ないが、やっぱり少しはあらがいたいんだよ。


 実際、私達はみかん達とバッタリ出くわしていた。


 よって、往来のど真ん中にデッカイ箱を設置すると言う謎行為の集大成染みた事柄に関しては全くのノータッチと言える。

 ここからお巡りさんが来ても、私は即座に他人のフリをする心構えを常に常備していると述べて良いだろう。


 見れば、近くにはういういさんもいた。


 ……いや、ういういさんだけではない、みかんの孫でもあるいよかんさんまでいるな?


 そして、みかんの妹にして……


「何をやっているの、パイン? そして、母様までいるの?……これはまるで私に『役者が揃った』とでも言わせたい様な顔触れねぇ?」


 ……と、驚いた顔で答えたココナッツ様の台詞にある通り、パインとココナッツ様の母親でもある人物、りんごさんの姿もあった。


 なるほど、ういういさんは他のパーティー・メンバーと合流する事が出来たと言う事か。


 現状のみかんパーティーは四人。


 みかん・ういうい・いよかん・りんごの計四名となっている。


 思えば凄まじいパーティーだ。


 ありとあらゆる魔法を使い熟す反則大魔導師・みかん。


 右手に一振りの剣を握れば天下無双の剣聖・ういうい。


 ドラゴンの中でも最強格となる『龍神皇』の名前を持つ龍神・いよかん。


 女神の母親にして、百年迷宮のダンジョンマスターでもある大魔道・りんご。


 りんごさんに関して述べると、私も良く分からない部分が多いのだが……一応、それとなくみかんからりんごさんの話しを聞いた事がある。


 嘘か本当かは知らないが、純粋な魔導力だけを見ると、りんごさんの方が圧倒的なんだとか?

 私的には、妹を少し贔屓目に見て答えている様にも聞こえてならないのだが……しかし、そうであっても驚きだ。


 こんなアホみたいな四人が集まるパーティーなんぞ、この世界では他にないと思うぞ……。


 なんとなくではあるんだが、破滅の女神なんかより、この四人の方が危険なんじゃないかと、私はかなり本気で思っていたりもする。


 少なからず、この四人が問題を起こしたと言う理由でキータに来る事となっていたのなら、私は全力で拒否をしていたね! だって、死ぬしっ!


 閑話休題それはさておき


 みかんパーティーの紹介はここまでにして。


「ココナッツ……あなたの言う通り『ミナトさんからは離れました』よ? これであなたも満足でしょう?」


 真剣な顔をして答えていたのは、パインだ。


 顔はかなり真剣だった。

 だから、本人はシリアスな雰囲気を醸し出していると思っているに違いない。


 だけど、私には……どぉぉぉぉぉぉしても、コミカルな光景にしか見えなかった!


 なんでか……って?

 そんなのは、見た目の問題だよ!


 かなり神妙な面持ちで、シリアスな語気を飛ばしていたパインは、なんでか無駄にデッカイ箱の中に入っていたのだから。


 しかも、周囲に雑踏がひしめく都会のど真ん中で。


 こんなシチュエーションで、どうやればシリアスな空気を作れると言うのか?


 ハッキリ言って私には『不可能だ!』と言う言葉以外、口にする事が出来ないね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ