二人の女神と母と勇者様【2】
昨日の事を軽く振り返り、私はちょっと自分がここに来た意義と言う物を再び考えさせられてしまう。
もう、本当に観光だからな? マジで。
例えば? チアキの美術館とやらに行って来た。
チアキの地下迷宮付近には、ダンジョン以外にも美術館があったりもする。
キータ国の歴史と文化を彩る、鮮やかな工芸や絵画等を多数展示した、実に探究心を唆られる建物だ。
独創的な展示品も多く……そして、キータにあるだろうノスタルジックな世界を垣間見る事が出来たのは、私にとっても良い経験であった。
ユニクス的には余り興味が湧かなかった模様ではあるのだが。
他方、アリンは興味深々で様々な展示品を見据えていた。
そして、キータの歴史を私へと説明していた。
私は『ほ〜』とかって、コクコク頷きながら聞いていた。
………。
だから、 なんでアナタは、こう……無駄に博識なんだ?
三歳児の講釈を受ける良い大人と言う構図が出来上がる中、私はチアキ美術館を鑑賞して行くのだった。
次に訪れたのは、キータ城跡地。
これまた、キータの歴史を振り返る様な、歴史的建造物の跡地だ。
民主主義の煽りを受け……最終的に革命が起こった時にキータ城が落城。
現在は、そこに城がありましたよ……と言う跡地があるのみに留まっていた。
ここでもアリンは、御自慢の博識っぷりと見せて、特段の知識を持ち合わせていなかったユニクスへと、あれこれ説明していた。
普通は逆だろうに。
……そしてアリンちゃんは、何処でそんな知識を覚えて来るんだろうな?
工芸や城跡を観光して回った後は、土産屋へ。
観光都市なのか? 予想以上に様々な物品が並んでいる。
土産物屋に向かって間もなく、アリンが『これを、親友に送るおっ!』……と、ニコニコ笑顔で私に見せたのは、ハーピーちゃん人形だった。
トウキでも買えるだろうが!
ソッコーで却下した私ではあるのだが、アリンは思い切り食い下がる。
話しによると、キータ限定バージョンらしい……正直、私には何処にどんな違いがあるのかサッパリだ!
そこからユニクスがやって来ては『リダ様に御土産を購入して来ました!』とか言って来る。
……一緒に観光している人間に土産を買う奴を、私は初めて見たのだが?
挙句、温和に微笑みながらも言って来た代物は……銀の指輪?
かなり怪訝な顔になってしまった私に対して『リダ様の左手の薬指にピッタリだと思います!』とか言って来る……いや、これ……土産じゃないだろうがっ⁉︎
もちろん、ソッコーで突っ返した。
その後、アリンがハチャメチャに駄々を捏ねくり回して来たので、妥協して一個だけ購入。
しかし、それでもアリンとしては不服だったらしく『コレクターなりゃ、観賞用と保存用の二つ買うのは常識なんだお!』とかほざいて来た。
至極とーぜんの様にスルーした。
そもそも、単なる御土産なんだから、そこまで考える必要なんぞないだろう? 一個買っただけで十分! むしろ、キータくんだりまで遥々やって来たと言うのに、ハーピーちゃん人形を購入すると言う、アホの極みとしか形容出来ない愚行に付き合ってやっただけでも感謝して欲しい程だ。
その後は、キータでも有名の酒場へと向かい、昨日と同様に酒と郷土料理に舌鼓を打つ事となった。
……と、まぁ。
ほんとぉぉぉぉぉぉぉに、観光しかしてない!
マジでこんなんで良いのか? いや、本当に考えてしまうんだがっ⁉︎
そして、事実上のキータ観光になってしまった旅費が、とてつもなく怖いのだがっ⁉︎
昨日の請求書事件があったのだから、私も極力自制すれば良かったのかも知れないが……しかしながら、最初から旅費を支払うつもりが無かった私は、かなり居直った形で豪勢な酒とツマミを素直に飲み食いして行った。
だってさ? 美味いんだよ、これが?
普通にさ? こんなの出されて飲まない方がおかしいし、料理にしたって、食べない方がおかしいレベルの美味しさだったりするんだぞ? これで食べないとか、むしろ相手に失礼ではないかっ⁉︎
……結果論ではあるのだが、こうして私達は更なる請求書が累積されると言う恐怖との戦いをするハメになって行くのだった。
……何やってんだろうな?
そ、そこはともかく……だな?
なんにせよ、翌日だ。
今日も今日とて、朝も早くからココナッツ様の豪邸を後にし、観光案内役を自分から買って出たココナッツ様の案内に従う形でキータの街を練り歩く所から始まった。
もはや、最初から観光だった。
私達は、何をしに来ていると言うのか?
………。
もう、目的は観光で良いんじゃねっ⁉︎




