二人の女神と母と勇者様【1】
キータ観光……もとい、キータの国へとやって来て、二回目の朝が到来していた。
つまるに、三日目だな。
結局の所、朝も早くからパイン宅へと特攻を仕掛ける勢いで向かいはした物の……素直にココナッツ様が引き下がる形を取った為、私達も以下同文と言う動きをする形で、その日は完全に終わってしまった。
結論からすると、時間がとんでもなく余った。
思えば、私達って……こっちに来てからキータの観光に来ているとしか、他に表現出来ない様な有り様なんだよなぁ……?
いや、別に悪い訳じゃないけどさ?
しかしながら、これまでに起こっている出来事をトウキに残った連中達へとありのまま語った日には、かなりの顰蹙を買う事は間違いないだろう。
初日はキータ最強の酒を文字通り浴びる程飲み……郷土料理に舌鼓。
途中、ういういさんを助けると言う行動に出てはいるが……正直、あの行動も今となっては余り大した行動でもなかった様に思える。
余談だが、ういういさんが早朝から早々とチェックアウトを済ませていたのは、早朝トレーニングの相手をさせられていたから……だったそうだ。
昼頃、偶然バッタリういういさんに会ったんだが、その時にそうであると教えられた。
なんか、指導料として十万程度貰っていたらしい。
まぁ、そうなったのなら……嫌とは言えないわな。
剣聖としての腕を見込まれて、剣術のイロハ程度を教えた……との事だ。
序でに言うと、かなり飲み込みが早いらしく、数ヶ月程度教える事が可能であれば、剣聖スキルの初歩は完全にマスター出来るだろうとも話していた。
むぅ……。
剣聖スキルの初歩って……確か、風神剣とか雷神剣とかだった様な?
そんな物を、数ヶ月でマスターする事が出来るヤツがいるんだろうか?
もし、ういういさんの言っている事が真実だったとするのであれば、教えて貰っているだろう剣士は、かなりの天才だな!
可能であれば、冒険者協会に加入して欲しい所だが……まぁ、そこはともかく。
これは、飽くまでもういういさんが『数ヶ月教えれば』の、話しなんだろう。
ういういさんが、ここキータの街に留まっているのは、みかん達を待っているだけだ。
至極当然の様に数ヶ月も滞在する事はないだろう。
ここらを加味するのであれば、飽くまでも『たら・れば』の話しと言う事だ。
実際にその剣士が剣聖の初歩スキルを完全にマスターするまでには至らない……と、こうなるのだろう。
実際問題、幾ら金にガメツイういういさんと言えど、剣聖の技をおいそれとは教えまい。
……多分。
話しが横に反れ過ぎてしまったな? そろそろ本題に戻ろうか。
他方の私達なのだが……パインの自宅を訪れた後に向かったのは、キータの名所巡りだ。
もうね? 間違いなくルミとかには言えない部分だよ、ここっ!
こんな所を普通に話した日には、また何かあった時、絶対について来ると駄々を捏ねくり回すに決まっているからな?
私としては、ルミを危険な目に遭わせる訳には行かないのだ。
それは、親友であるが故に言っていると言う側面もあるのだが……純粋にルミはお姫様だからと言うのもある。
つか、そっちの方が割合的には高い!
他方のフラウに関して言うのなら……正直言うと、たまにはペッタン子を連れて行くと言う選択肢があっても吝かではないのだが、フラウだけを連れて行ってルミを連れて行かない訳にも行かない事情がある。
率直に言って、不公平だとルミは言うに決まっているからだ!
そして、絶対に猛烈に強烈なヘソの曲げ方をして来るのが、確定レベルで決まっている。
徹頭徹尾、数日間フルタイムで口をきいてくれない時だってあったからなぁ……本当、マジでこうなると面倒なんだよ、あの我儘姫は!
そうなると、フラウもまたおいそれとは誘えない。
更に言うのなら、今回だってフラウを連れて来るには危険過ぎる可能性が極めて濃厚だったからな?
蓋を開けてみれば、割合的にキータ観光をしていたりもするんだが……こんな物は、文字通り蓋を開けてみないと分からない案件だ。
今となれば、フラウやルミを連れて来ても良かったかなぁ……と、少しばかり後悔している私なんぞがいたりもするのだが、余談程度にして置こうか。
……と、この様な形で、三日目となる朝を迎えた訳なのだが、
「今日は、何処に行くのかな〜? アリン、楽しみだお〜!」
ニコニコ笑顔で、しれっと観光気分の愛娘が居る様に、本日の予定もまた当初の予定から大きく掛け離れた行動に邁進しそうな空気が出来がっていた。
こんなんで良いのか? 本当に?




