リダさん、裏山探検に向かう【7】
しばらく進むと、十二階のダンジョンも終わりが見えて来た。
トラップもかなり巧妙になって来た中......それでも、ユニクスが先頭に立ってトラップを解除して行く。
......うーむ。
「ユニクスは、普通に冒険者協会に入ったら、最初からS以上のランクから始まっても良い気がするなぁ......」
冒険者協会のランクは、根本的にクエストをこなさないとランクが上昇しないシステムになっている。
この関係もあり、能力がいくら高くても、最初は最低ランクのDからスタートするルールになってたりもするんだ。
しかし、このシステムだと、能力に合わせたクエストを即座に受注する事が出来ない。
比喩的に別の物で言うと......中途採用されてる即戦力の人材は、根本的に能力の高さに会わせて仕事を分別して行くんだろうが......うちのシステムだと、どんなに有能な人間でも必ず最初からやらないと行けない訳だ。
ハッキリ言って、これでは適材適所を効率良く行っているとは言えない。
ここらは、会長に戻った時に考えないと行けない、私なりの課題になりそうではあるな。
......閑話休題。
多少の苦労をした物の、全員が致命的な怪我をする事なくダンジョン攻略を進めて来た私達は、十二階の門番となる巨大飛竜がいる広間へとやって来た。
他の階もそうなのだが、大体はボスらしき存在が出現する場所は往々にして広い。
しかし、そこを加味した上でも、ここは更に一回り以上の空間が存在していた。
「よーし。じゃ、今回は私が特別に飛竜退治のお手本を見せてやろう」
言うなり、私は一人だけ広間の中央にやって来て、後ろにいる五人へと答えて見せる。
「え? リダが戦うの?」
フラウは片眉を寄せた。
多分、ちょっと意外だったのだろう。
これまで、ずっと後ろで立っていただけだったからな。
もっと言うのなら、フラウ個人の感覚で口を開けば、
「ここのボスは、私とパラス様で倒したかったかな?」
割と本気で言っていた。
フラウとパラスの二人は、この12階の門番で攻略が終わっている。
多分、前回はここのボスに敗走または敗北してしまい、精霊に助けて貰ったのだろう。
そこを加味するのなら、フラウやパラスに先攻させるのもアリではあるんだが......まぁ、ここのダンジョンは復元期間も短い。
飽くまでも練習用のダンジョンだから、周回可能な程度には復元する。
確か、一ヶ月程度だったかな?
「フラウは次に頑張れ。たまには私も身体を動かして起きたいんだよ」
「......ま、構わないけど」
フラウはちょっとだけ面白くない顔をしつつも頷いた。
そのファイトは買うよ。
やっぱり、フラウは努力家だな。
不可能な事があったのなら、それを努力で補おうと考える。
幾度も壁に当たっても、それを飛び越えた時の達成感を、誰よりも良く知っているのだろう。
うむ! リダさんは関心したぞ!
その一方で。
「おおおおっ! これでやっと楽出来る!」
「お前は楽しか言わないのかっ!」
ルミはひたすら素直に喜んでいた。
いや、本当......うん。
自分に素直なヤツだって言うのは、今に始まった事ではないんだけどさ?
「もうちょっと、自分でなんとかしたい気持ちにならないのか?」
「え? リダがいるのに?」
苦い顔になって言う私に、ルミはキョトンとした顔でおかしな台詞を言っていた。
「リダは最強魔神なんだし? 私の中では、リダがいればどんな願いも叶うって信じてる」
「あたしゃ、どんな神様なんだよ!」
一体、どこでどんな見識を持つと、そんなおかしな事になって行くんだろうな......?
「まぁまぁ、リダ。私もさ? リダが戦ってるの見たかったし。みんなで楽しく攻略して行こうよー」
花丸笑顔で言ってるルミ姫様。
何も考えてはおらず、言葉にも深い意味がある訳でもなく、額面通りの感情をそのまんま言葉にしているのだろう。
ま......良いんだけどさ。
これはこれで、ルミらしいしな。
私は嫌いじゃないよ? ルミの性格がね。
でも、楽ばっか考えるのはやめてくれ。
「ところでリダ様」
そこで、ユニクスは地味に顔を引き釣らせて私に声を掛けて来た。
「何だ?」
「もう、巨大飛竜が来てるのですが......大丈夫なんですか?」
「......は?」
ユニクスに言われ、私は正面を見た。
バカデカイ飛竜が、そこにいた。
シャギャァァァァッッ!
飛竜は吠えた。
......てか、デカ過ぎるだろ?
下手なドラゴンの何倍もあるぞ。
咆哮と同時に、巨大飛竜は空を飛んで見せた。
動かした翼の風圧だけで、人が飛びそうな勢いだった。




