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女神と剣聖と勇者様【13】

「……か〜たま、アリンの考えが正しいのにゃら、パインって言う女神様はそこまで悪者じゃないお? ここは、ココナッツしゃまを説得してでも、やめた方が良いんだお」


 ココナッツ様の自宅を出て間もなく、私は貰った地図を頼りにパインさんが住んでいるらしい家を目指していたのだが……その途中、アリンが少し不安そうな顔になって私へと口を開いた。


 アリンなりに考えての台詞であり、助言なのだろう。

 うん、分かるぞアリン? 私だって思い切り分かっている。

 だけど……しかし、それでも、だ?


 私の酒代はとんでもない事になっているんだよ!


「いや、疑う要素がある以上……ここで止める訳には行かない。まずはパインさん……いや、破滅の女神・パインへと一定の情報を得る必要はある」


 それに、お前が買って貰った人形の代金分もあるんだからな?

 だから、アリンだって真面目にパインを見定める必要はあるんだぞ?


 ま、その必要が無い位に、良い人だって言う事は既に分かっているんだけどなっ!


「そうかも知れないけど、やっぱり納得出来ないお……アリンも恋した事がありゅから、パインしゃんの気持ちが分かるお……だから、とっても切ないんだお」


 ……って、三歳にして早くも色気付いた台詞を吐き出すアリンちゃん。

 多分、これは黄金島の百年迷宮での出来事を指して物を言っているのだろう……くそ、そこに関しては私の知らない所で起こっている事だから、詳しい内容を知らないんだよな。


 てか、三歳で早くも結婚を前提としたお付き合いがしたい!……とか言われた時は、流石にどんな返答をして良いかでマジ迷ったぞ!


 どちらにせよ、お前に恋はまだ早い!

 全然速過ぎだ! つか、三歳で結婚?……なんでそんなに生き急いでいるんだよ? お前わぁっ⁉︎


「私としましても、やはり気が進まないと言うのが正直な所であります。どうでしょう、リダ様? ここは破滅の女神を討伐するフリだけをして、さっさとトンズラすると言うのはどうでしょう?」


 他方、大真面目な顔をして不真面目極まる台詞をしれっと答えるユニクス。

 勇者のお前が涼しい顔して言うんじゃないよ。


「元を正せば、お前が背負い込んだ厄介事だろうに……言うなれば、事の発端を作った張本人が、いきなりドタキャン宣言してるんだぞ? おかしいとは思わないのか?」


「否定はしません……しませんが……やはり、どう考えてもおかしいとは思いませんか? リダ様? そもそも、いけ好かない女神達の内輪揉め如きに、私が努力しないと行けない時点でおかしな話しだとは思いませんか?」


 ……いや、勇者なんだから、そこは仕方ないだろう?

 

 全く、どうしてこんなヤツをイシュタル様は勇者になんぞしてしまったと言うのか……。

 きっと、今になって大きく後悔しているんじゃないのだろうか?


「どっちにしても、一度引き受けてしまった事を簡単に白紙撤回する事は出来ないだろ?……もう少し、自分の発言に責任を持つべきだとは思わないのか?」


「……う。そ、それは……そうなんですけど……」


「ともかく、現状では引き受けてしまったと言う事実がある。これをひっくり返す様な大義名分……もとい、れっきとした理由でも出来ない限りは、許諾した内容をしっかりと行動に移す必要がある。それが私達の責務であり、誠意だろ?……ほら、分かったのならサッサと行くぞ!」


「わ、分かりました……」


 浮かない顔ながらも頷いたユニクスは、素直に私の後ろを歩き始めた。

 

 以後は、全くの無言状態が続いた。

 アリンとユニクス……どちらも本意ではないと言う気持ちが顔中かおじゅう全面に押し出されていて、何も話したくないと言わんばかりの態度を取っていたのだ。


 ……うむ。


 気持ちも分かるので、ここはそっとして置こう。

 

 どちらにせよ、ここまで来てしまったのだ。

 今更、引き返す事なんて出来ない。


 地図を見る限り、目的となるパインの自宅はすぐそこだ。

 どの道、今日の所は単なる顔見せと言う形になる……そうと私は達観している。


 理由は実に簡素な物だ。

 現状の私達は、三人で行動している。 

 つまり、ココナッツ様がいないのだ。


 そうなれば? テキトーに自己紹介程度の雑談をしておしまい……なんて事だって出来るのだ。


 顔を合わせていきなり戦闘……なんて、かなり野蛮な事にはならないと思っているしな?

 私なりの予測から来る裏付けも至ってシンプルな物で、パインと言う女神は恐ろしく清らかな守護霊オラを持っているからに他ならない。


 それなら、今回は単なる顔合わせ程度と言う形を取る事だって容易だろう。


 単なる時間稼ぎにも感じるけどな!


 けれど、時間を稼ぐ事が出来たのなら、私に妙案が生まれる可能性だってある。

 ともかく、可能な限り時間を引き伸ばして、穏便に済ませる事が出来る所は、全て穏便に………え?


 パインの自宅へと向かいながら、これからの事をあれこれ模索していた私がいた時……私の目が大きく見開かれる。


 パインの自宅と思われる場所にやって来たソコに……何故かココナッツ様がいたからだ!

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