女神と剣聖と勇者様【11】
「……はぁ……分かったよ……リダさんが来ている時点で、私がやれる事なんて残ってない様な気がするけど……微力ながら協力する。これで良いだろ?」
……おおっ!
どうやら、私の誠意が伝わった模様だ!
やっぱり、こう言うのは熱意と誠意が大切だよな!
ん? 請求書?………なんの事かな?
「そうですか! ありがとうございます!」
直後、ココナッツ様が顔を『ぱぁぁぁっっ!』っと明るくして微笑み、心からの謝意をういういさんに見せていた。
この一件を引き受けないと、とんでもない額の請求書を私に叩き付けるぞ?……と、地味ぃ〜に根暗な真似をして来た人と同一視出来ないレベルの微笑みだった。
「別に、そこまで畏まらないでくれよ……さっきも言ったけど、私の力なんざリダさんと比較したらミジンコだし……」
ういういさんは、少し自分を謙遜する形で答え……そこから真剣な顔を作ってから再び口を開いた。
「だけどさ? 今のパインさんは『恋愛』が封印されているんだろう? それなら問題ないんじゃないのか?」
答えたういういさんは、どうにも腑に落ちないと言わんばかりだ。
ここに関して言うのであれば、私も同意だね?
シズ1000の話しをハイライトで述べていた為、こっちでは詳しく触れては居なかったのだが……実を言うと、パインさんがチアキの地下迷宮へと封印される事になった時、同時に彼女の中にある様々な感情をも封印していたのだ。
基本的に封じられたのは、負の感情だな?
例えば、憎悪とか怠惰、怠慢、傲慢、自惚れなどなど。
恋愛感情の封印は、その中にある一つと言う訳だ。
一見すると、恋愛感情は他の悪辣な感情とは異なる性質を持っている様にも見えるし、この感情を同時に封印するのはおかしいのではないのか?……そう思えるかもしれない。
所が、実はそうでもないのだ。
破滅の女神が降誕してしまった大きな要因……それは、アダムへの深い深い愛情。
つまるに、それは恋愛感情と言う事になる。
愛憎と言う概念が表裏一体であるのならば、彼女の持つ『憎悪』だけを封印しても、それは完璧とは言えない。
そうなれば、彼女の中にあるのだろう淡い感情……恋愛感情もまた封印する必要性があった訳だ。
極論からするのなら、今のパインさんが破滅の女神にならない様に、色々と創意工夫がなされている事となる。
私的にはやり過ぎなレベルだと思ってしまう程だ。
それだけに、ういういさんとしても不思議で仕方なかったのだろう。
しかしながら、ココナッツ様は言うのだ。
「……ういういさんのおっしゃる通り、パインは恋情を封印されました……そればかりか、あらやる負の感情を封印し、二度と憎悪と言う物を抱く事が出来ない状態に『表面上は』仕立て上げました」
……なぬ?
それは……どう言う事だ?
思わず眉を捻らせる私が居る中……私と全く同じ事を考えていたういういさんもまた、眉を顰めながら、
「……表面上?」
なんとも意味慎重と言えるワードをココナッツ様へと返してみせる。
ココナッツ様は即座に相づちを打った。
「はい、そうです。事実、パインは『自分からの感情の封印を望み』ました。そして、母は……りんごは、パインの気持ちを汲み取る形で封印する事になったのです……が、しかし」
ここまで答えたココナッツ様は、一気に険しい顔に。
……な、なんだろう?
この、妙に重たい雰囲気は。
正直、あんまり聞きたくはないなぁ……そんな事を胸中でのみぼやく私がいたのだが、至極当然の様にココナッツ様の口が止まる事はなかった。
「りんごは……母は『もう一つあった、パインの希望をも許諾した』のです」
「……もう一つの希望だと?」
「そうです……りんごは、母は余りにもパインに甘いと思えて仕方ない……私には内緒にしていたのかも知れませんが、ココナッツ・システムがしっかりとキャッチしておりました。詰めが甘いのもやっぱり、私の母だと思えて仕方ありませんね?」
ここまで答えたココナッツ様は、肩を落として嘆息した。
私的には、ココナッツ・システムって何?……って話しなのだが?
「ココナッツ・システムについては、後で説明しますので、今回は省かせて頂きます……ともかく、私の中にあるココナッツ・システムと、パインの中にあるパイン・システムが情報を共有していた為、パインの持つ強い要望……熱意を知る事になるのです」
ふ、ふむぅ。
良く分からないが、パインさんにも似た様な物があると言う事なのかな?
つか、マジでココナッツ・システムが分からないのだが?
他方、ういういさんも理解が出来なかった模様なのだが、
「うん、なるほど……それはきっと、説明を聞いても分からないから良いや?」
見事に理解する事を諦めていた。
私的には、ういういさんの諦めの速さに驚愕を覚えるのだがっ⁉︎




