女神と剣聖と勇者様【7】
『良いから、シズ1000の話しを最後まで聞け。ちゃんと馬鹿にも分かる様に説明してやる』
しかも、シズ1000にまで馬鹿呼ばわりされているし。
まぁ、ここに関してはさ? 二人にとって良くある会話と言うか、なんと言うか……ともかく日常茶飯事だったりもするから、私は余り気に掛けてはいないんだけどさ?
「馬鹿は余計だ! 一々馬鹿を言葉の中に挟むんじゃねーよ……お前は馬鹿と言う言葉を挟まないと、会話をする事が出来ないのか?」
『ういういが相手であるのなら、そうなる』
「そろそろ、しばいてやろうか? お前……?」
イラッとした顔のまま尋ねるういういさんに対し、涼しい顔でしれっと憎まれ口を叩くシズ1000がいた所で、額にデッカい怒りマークを付けたういういさんは、左腰にある片手半剣の柄を握りしめ……って、オイィィィッッ⁉︎
「気持ちは分かるが、今はシズ1000の話しを聞こう。説明するのも楽そうだし……ういういさんにも都合が良いだろう?」
今にも斬り掛かりますそうな勢いになっていたういういさんを、私は必死で止めながらも宥めた。
この調子だと、本気でシズ1000をなます斬りにしかねないからなぁ……ったく、無駄に血の気が粗いと言うか、ミラクル短気と言うか……。
「……分かったよ」
割と必死になって止めた私がいた事で、ういういさんは素直に引き下がってくれる。
……ふぅ、良かった。
でも、こんな下らない事で、文字通りの真剣勝負はやめて欲しいんだが……?
『愛情を憎しみは表裏一体なのだ……う! 強い愛情は、強烈な憎しみにすらひっくり返る事だってある。今回は、誰よりも強い恋情が原因なのだ! う!』
しばらくして、シズ1000の説明が再開された。
フォログラフィーから出て来るシズ1000の文字を読む限り……破滅の女神と言う存在は、単純に憎悪だけで出来ている『訳ではない』と言う事になる。
一見すると、そこはかとなく矛盾している様な内容にも感じるが……しかし、私はシズ1000の話しを聞いて、むしろ腑に落ちた。
彼女……パインには、底なしの愛で満ち溢れていた。
まさに女神その物だ。
そして、愛憎は表裏一体である事も。
極論からするのであれば、
「つまり、相手に恋する力が強過ぎた事が『破滅の女神』と呼ばれる原因になったと言う事か?」
程なくして答えたういういさんの言葉が、ドンピシャな答えと言う事になるのだろう。
私も同じ答えに到達していた所だったからな。
『そうなのだ! う!』
直後、シズ1000も頷いて来た。
うむ! これで確定したな!
パインさんは……その強い愛があったが故に、底なしの憎悪すらも抱く事になって行く。
その愛が深ければ深いだけ……強ければ強い程……その先に生まれた闇は深かったのだ。
……むぅ。
しかし、そうなると……だ?
パインさんは、どうしてそこまでの憎しみを抱く事になってしまったのだろう。
あれだけ真っ白な……神々しさすらハッキリ感じ取れる守護霊の持ち主にして、果てなき愛情を持つ女神様が……どの様な理由を持つと憎悪をまるっきり反転させる様な結末を生むと言うのか?
私には全く予想する事が出来なかった。
『この話しは、ちょっと長くなるのだ! だから、モノローグ調にする為、一旦分節を変えるのだ! う!』
………。
身も蓋もないな。
フツーにアホな台詞を臆面もなく語るシズ1000。
私は返答に困窮した。
そりゃ、困るだろ! 言いたい事は地味分かるけど、困るだろっ⁉︎
「……なんだか良く分からないが、分かった」
他方のういういさんは、一応の相づちを打った。
きっと分かってない。
『う! ういういが馬鹿で助かった! それでは行くぞ! う!』
……その後、再び熱り立ったういういさんを必死で止める羽目になってしまうのだが……余談だ。
◯◁◯◀︎●
正直、シズ1000の挑発には困った物だ。
もう少し穏便に出来ない物かと思えてならない……ならないのだが、きっと二人の関係と言うか、ういういさんとシズ1000の間柄と言うのは、互いに悪態を吐くと言う所も含めての仲なのだろう。
ここらに関して言うのならば、私は見事な部外者だからな。
全くの第三者である私が、余り出しゃばってクドクド言う事でもないだろう……つか、面倒だから関わりたくないし。
………。
閑話休題。
シズ1000の話しは、どうやらここキータ国が創世された時代の話しであり、その生い立ち等を順序良く私達へと説明してくれた。
その内容について……なのだが、ここではポイントだけを絞って話して置こう。
何から何まで全部言うと、物凄く長くなるからな。
ああ、ちなみに?
シズ1000の話しを全部知りたい人は『みかん本編の1115ページ』から見ると分かるぞ?
つまるに、みかん本編で語っている事なので、私の方ではある程度端折る内容にして置こう……と言うわけだ。
決して手抜きではないぞ!
きっと手抜きではないぞ!
何となくそう思うから……そう言う事にしてくれ!
100マール上げるから!




