リダさん、裏山探検に向かう【6】
練習ダンジョンだけに、根本的にモンスターが抵抗して来る事はほとんどないが、当然ながら本番なら抵抗される。
仮に抵抗されたとしても、私のレベルなら大体のモンスターの情報をサーチする事が出来るけどな。
そこらはさておいて。
探索魔法!
魔法が発動し、相手のレベルとステータスが、私の頭に直接情報として流れて来る。
「......なるほど」
探索結果を見て、私は納得した。
見た目は下位級のモンスターなのだが、その強さは確実に上位級だ。
元々、個体差と言う物が存在しており、同じモンスターでもある程度までは強い弱いの差があったりはするんだが......この数値は個体差の域を軽く越えている。
恐らく、二倍から三倍程度の差があるだろう。
他の階にいたモンスターの数値を計ってはいないが、この調子であるのなら他も同じ現象が起こっている。
「練習ダンジョンにしては、少し荷が重すぎるかも知れないな......」
この事は、一応学園側にも報告して置こう。
そう考えつつ、私は再び傍目八目状態に戻る。
なんだかんだで、連中にとっては丁度良い練習相手だったからだ。
「ま、今はこれで良いのかな」
地味に能天気な事を口にしつつ、私は悪戦苦闘する皆の戦況を軽く見据えていた。
●○◎○●
少し苦戦する場面もあったが、どうにか十一階を抜け、十二階にまで到達する。
「思ったより、早く到着したね」
「前に一回やっていたのと、今回は四人だったからな。前よりは全然楽な条件だったのもあるんだろう」
十二階にまでやって来た所で、フラウは少し驚く感じの声を出すと、パラスが自分なりの分析を口にして見せた。
どうでも良いけど、四人って......お前。
「ここには五人いるだろ」
「一人、後ろで突っ立ってるヤツはいたな」
私は頭数に入ってない訳だな。
実際、確かに私は二階から以降、全く手を出していないから、そう言われても仕方がない部分もある。
「役立たずが一人、ただ歩いているだけだったのなら、ここまで一緒に来る必要もなかったがな?」
......けれど、ここまで言われる筋合いはないと思うぞ!
「私はお前達のレベルアップを優先していただけだ! 何回も言ってるけど、それじゃ意味ないだろ!」
眉根をよじって叫んで見せる。
ったく......態度が大きいだけでなく、口まで悪いヤツだな!
「......否定はしない」
納得混じりではあるが、確実に不満が顔に出ていたパラスがいた。
パラスからすれば、私の戦う状況を見て学習したいと言う側面もあって、このパーティーに入っているからなのかも知れない。
......まぁ、そうな?
「わかった。次は私がお前に戦い方のお手本を、ちゃんと見せてやろう」
「......ほぅ」
私の言葉にパラスは若干の興味を持った様だ。
すると、少しだけ穏和な表情になって、軽く右手でダンジョンの通路を指差してみせた。
「ここからもう少し行くと、この階の門番でもあるジャイアント・ドラグーンがいる。巨人が乗れるレベルの巨大な飛竜だ」
「ああ、最初の方で言ってたヤツな?」
「そうだ......アイツは、俺が知ってる限り普通の飛竜とは別格の強さを持っている。ただデカイだけじゃない。基本的な強さが段違いなんだ」
「......そんなのが練習ダンジョンに出て来るって言うんだから、本当にこの異変をどうにかしないとな」
私は溜め息混じりに答えた。
本当に面倒な事をしてくれたと思う。
しかも、解決の手段は未だ闇の中だ。
そもそも、解決手段があるのかどうかさえ判明していない。
「そうだな......が、俺としては、身近に己を精進する為の材料がいる。そこだけを考えれば、俺個人としては嬉しい話だ。いずれ、この学園を卒業するまでには、一人でヤツを倒せるだけの実力にはなってやるよ」
パラスは、どこか高揚するかの様な表情を見せていた。
感情をあんまり出さないから、ただの淡白な男に見えてしまうが、こう言う表情なんかを見てると、コイツも純粋な向上心を持ってるんだなと、つい嬉しくなってしまう。
こんな時代だ。
強くなりたいと努力する人材は、一人でも多く欲しい。
そう言った意味では、今のパラスはとても頼もしい新星とも言えた。
「良い心掛けだ......よし、そんなお前の為に、私も一肌脱いでやろう。ちゃんとしっかりと、私の戦う姿を見ておくんだぞ」
私はニッと、快活な笑みを満面に浮かべながらパラスへと答えて見せた。




