女神と剣聖と勇者様【1】
数時間後。
朝日が真南へと昇り……気付けば、真西へと落ちて行っては、そのままお月様が上空へと出現していた頃、
「……はっ!」
私は目を覚ました。
……ふ、私とした事が……まさか、酔って倒れてしまうとは!
見れば、周囲には同じく酔い潰れた状態で寝息を立てるユニクスの姿があった。
アリンちゃんは……居ないな?
「何処に行ったんだろう?」
私は独りごちながらも、アリンの存在を軽く探す。
……やっぱり居ないな?
「……全く、ここはトウキではないんだぞ?」
旅先のキータで迷子になんかなったら、探すのが骨ではないか。
こんな事を考える反面……三歳児にとっては暇を持て余してしまう状況であっただろう事を思い出す。
それと言うのも、だ?
「……まぁ、アリンちゃんからすれば、酒盛りなんてつまらないだろうし……」
私は苦笑しながらも答えた。
この言葉通り、私は幻の酒……ロクゴーを浴びる程飲んでいた。
これは比喩でもなんでもなく、浴びる程の勢いがあったと思う。
自慢にもクソにもなりはしないが、酒を飲み過ぎて酔い潰れたのは五年振りぐらいじゃないだろうか?
………。
……いや、私は高校二年生だった。
うん、そこは聞き流しておけ。
まぁ、あれだ。
成人を済ませた高校生だっていると言う事だな!
それ以上は深く考えてはいけないぞ!
閑話休題。
私が酔い潰れてしまうまでに酒を飲んでしまったのには理由がある。
ロクゴーが恐ろしく飲みやすいと言うのも理由の一つだが、それ以外にも理由があったのだ。
ココナッツ様の試験が終わって間もなく、私達は御褒美の地酒を振る舞って貰う為、近所にあるココナッツ様の自宅へと移動していた。
場所は神殿から徒歩数分。
もう、すぐソコだな?
そして、見事なばかりの大豪邸でもあった。
何処の貴族様が住んでるの? と言いたくなるばかりに立派な屋敷へと連れてこられた私達は、そこから足掛けよろしく、真っ直ぐ大広間の様な客室へと案内され、宴会が始まって行くのだった。
果たして、ロクゴーは即やって来た。
やはりキータの女神様らしく、ソッコーで融通が利くらしい。
まさに女神様様だった。
私は、キータの郷土料理に舌鼓を打ちつつ、幻の酒ロクゴーを飲んで行く。
五臓六腑に染み渡るロクゴーの味は、まさに絶品だ!
まるでワインの様な飲み易さに加え、独特の甘みと爽やかな飲み感が堪らないっ!
いや、これは癖になる!
流石は幻と言われるだけの酒だ!
キータに来ないと飲めない特別な酒と言えるだろう。
一応、トウキでも飲めなくはないけど、こう言うのは地元で飲むからこそ、一定の価値があり、意義が生まれるんじゃないのだろうか?
美味しい料理と酒に囲まれ、私の幸福値が鰻登りにまで到達していた頃、ユニクスが提案して来る。
リダ様! ここは一つ、飲みくらべと行きませんかっ!……と。
私的には、ちょっと驚きの提案だった。
ハッキリ言って、私はユニクスの様な小娘如きに負ける程、酒に弱くはない。
人によっては恥だと思うかも知れないが、私の酒に置ける許容量はドラム缶単位だ。
その気になれば、大樽一杯を一気飲みする事だって可能だ!
良い子は絶対に真似しちゃ行けないぞっ⁉︎
よって、私が負ける筈などない……ないのだが、ユニクスはハンデをくれと言って来る。
ユニクス曰く『私はお銚子一本で、リダ様は一升瓶一本と言うハンデを貰いたいのです』らしい。
ほほぅ〜?
それは、私を大きく見縊ってないかな?
お銚子一本と言う事は、量に直して180ミリ・リットル。
対して、一升瓶は1.8リットルだな?
つまり、10倍程度のハンデと言う事になる。
ハッキリ言おう。
この程度のハンデ、ないにも等しいと!
故に、私は言ってしまった『面白い! 受けて立とう!』と!
ここから、私とユニクスの酒飲み合戦が始まった。
私は早速、近くにあった一升瓶をぐいぃぃぃっっっ! っとラッパ飲み。
もう、豪快と言うばかりに飲み干した!
幻の酒は、違う意味で幻の様に、私の中へと消えて行った!
力が漲るわぁぁっっっ!
一升ぐらいだと、逆に目が冴えるねぇっ!
テンションが上がる上がるっ!
そこから、ユニクスも徳利をむんずと掴んでは、コップに入れて一気にグィィィッッッ! っと飲んで行く。
素晴らしい飲みっぷりだ!
でも、良い子は絶対に真似しちゃだめだからなっ!
良識ある大人であるのなら常識ではあるのだが、未成年の方が読んでいる可能性もあるので、一応の断りを入れて置こう。
一気飲みは超絶危険だ!
割とリアルな話し、これが元で救急車に乗るハメになる人間が結構いるから、絶対に止めよう!
リダさんとの約束だぞ?
私はやるんだけどなっ!




