リダさん、裏山探検に向かう【5】
「すっごーいリダ! やっぱり強いねーっ! そこにシビれる憧れるぅっ!」
他方で、素直に私の強さを称賛してくれるルミ姫様がいた。
きっと、何も考えてないのだろう。
純粋と言うか、純朴と言うか、単純と言うか。
「ルミ......あんたはやっぱり私の親友だよ!」
周囲のヘソ曲がり達によって負傷してしまった心の傷をしっかりと癒してくれたルミがいた事で、私は思わず彼女を抱き締めていた。
「ああああっ! リダ様! わ、私と言う最愛の人がいると言うのに、なんてハレンチなっ!」
しかし、勇者の横やりが入った。
「リダ様を抱き締めて良いのはこの私だけ! そして! リダ様の胸元は私だけのVIP席! 例えルミ姫様とて許せませんっっ! さぁ、リダ様! 私の胸元に飛び込んで来てっ!」
ドォォォォォォンッ!
邪魔だから、爆破しといた。
「よし、ここのボスは爆破した。次の階に行くぞ」
「爆破したのユニクス姉だからっ!」
キリッと顔を引き締めてから、先を急いだ私がいた所で、さりげなくフラウが素朴な台詞をやかましく叫んでいたが、取り敢えず聞かなかった事にした。
●○◎○●
二階以降からの私は、敢えて後方に下がる事にした。
前にも言ってたと思うが、私が前衛に出張るとみんなの修練にならないからな。
ここら辺は、みんなも理解してくれたらしく、
「そうだね。リダが前にいると......もう、それで全部終わりそうだし」
フラウは地味にげんなりした顔になって同意し、
「俺はそれでも構わないんだがな......しかし、鍛練と言う意味では確かにリダを後方に下げる必要はあるだろう。リアルチートが前じゃ、練習所じゃない」
パラスも納得混じりに頷いて、
「みんな、リダ様に失礼だぞ! リダ様の優しさをもっと称えて差し上げないと行けない場面だろう!......と言う事で、リダ様? 私の純粋な劣情を感じて頂きましたか?」
いつの間にか復活してたユニクスが、下心全開で快く許諾していた。
「いい加減、私に爆破魔法を使わせるのをやめないか? ユニクス?」
ドォォォォォォンッ!
いつもの様に爆発していた。
「私の愛はビックバン!」
宇宙に謝れっ!
「私はリダが前衛で良いと思うよー? 楽だし、楽だし、楽だから!」
「楽しか考えてないだろっ! お前っ!」
朗らかに、ロイヤルスマイルで楽しか言わない姫もいた。
どいつもこいつもっっ!
「ともかく、次からはお前らがやれ! あたしゃ知らんっ!」
こうして、二階以降は私が後ろで見るだけの形を取って行くのだった。
しかし、ダンジョンとは言え練習場の設計だけあり、そこまで苦戦する事なく一行はダンジョンを次々と攻略して行く。
私とルミ以外は、前に一回攻略しているダンジョンだからってのもあるんだろうけど、普通にサクサクと進んで行った。
気付けば二階をクリアし、三階、四階、五階......と、特に危なげ無く踏破して行く。
やっぱり、私はいらないんじゃ......?
帰って、睡眠学のスキルを使って自己鍛練をしたい気持ちで一杯になっていた。
しかし、そんなフラウ達も十階に到達した辺りから、少しずつ苦戦しはじめて行く。
出現して来るモンスターも、かなり強くなっている模様だが......。
「うーん」
後方で傍目八目を置いていた私は、ちょっとだけ唸ってしまう。
確かにモンスターのレベルは高くなってはいる。
しかし、パラスやフラウ、ユニクスにルミ姫も加えた剣聖杯上位陣のパーティーが苦戦する程の相手なのかと言えば、それは違うとしか言えない。
最初の方とは違い、悪魔や魔獣、悪霊等のモンスターまで出現してはいるんだが、どれもこれも下級の域を越えていない。
言ってみれば、まだまだ余裕があっても良いレベルだった。
けれど、実際に戦っている光景をみていると、どうも楽勝には見えない。
いや、むしろ......余裕がない様にしか見えなかった。
これはどう言う事なのだろう?
不思議に思った私は、出現した下級悪魔にかるく探索魔法を掛けて見る事にした。
発動すれば、対象になる敵のデータが数値化されて、私の頭の中に直接情報が入って来る魔法だ。
補足として、サーチが成功した時点の数値であり、その後に補助魔法等で能力が上昇すると、サーチで見た数値は参考程度にしかならなくなる。
また、格上に使うと抵抗されて、サーチが失敗してしまう事もある。




