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キータ国とドーンテン一族と勇者様【21】

「順番は、誰からでも構わないのですか?」


「ええ、もちろんです。遅かれ早かれ、皆さんにやって頂く事ですから」


 それとなく尋ねた私の問いに、ココナッツ様は笑みのまま頷いて来た。

 本当に笑顔を絶やさない人だな。

 こう言うのも女子力と言うのかは分からないが、男受けはバッチリだろう。

 ……私も、ココナッツ様の微笑みをお手本にして、微笑みを絶やさない女子になれば、格好良い彼氏が出来るのだろうか?


 ……むぅ……しかしながら、ずっと笑みを絶やさない状態とか、顔の筋肉がつかどうか……?


「アリンが行くおっ!」


 地味にアホな事を考える私がいた頃、アリンが名乗りを上げた。


「試験を突破して、限定版の華岳ちゃんをゲットするおぉぉぉぉっ!」


 アリンは、興奮した闘牛みたいに鼻息を荒くして叫んでいた。

 本当に、この子は……いつからここまで物欲に塗れた子になってしまったと言うの? お母さんは悲しいわ!


 意気込み勇んだアリンは、そのままズンズンと神殿の中庭へと進んで行く。


 そして、中庭の中央にあった『この場所に立つと試験が開始されます』と書かれた場所に立ってみせた。

 ご丁寧な事に、しっかりと足形の様な物まで付いている。

 ……なんて言うか、みかんの様な事をして来る女神様だな。


「では、試験を開始します!」


 アリンが、足形の部分に自分の両足を付けて間もなく、ココナッツ様の声が発せられる。


 ブゥゥゥンッッ……ッッ!


 神殿中央の虚空に、電磁波の様な物が出現したのは、その直後だった。


「……お?」


 アリンは小首を傾げた。

 何が起こっているのか分からないと言った顔だ。

 うん、私も分からない。


 ただ、これは……なんとなくだが、伝承の道化師ピエロが出現した時に似ている様な気がする。


 ………。


 まさか、な?


 微妙に口元を引き攣らせる私がいた。

 女神様が、あの道化を召喚するとは思えないが……破滅の女神とやらの能力が高いのであれば、事と次第によっては……っ⁉︎


 もしそうであれば、私に勝てるとは思えない。

 つか、ユニクスだって無理なんじゃないのか?


 なんとも動揺を隠す事が出来ない私がいる中……空間がグニャリと歪んでは、歪んだ空間から何かが召喚された。


 これは……魔導人形ゴーレム


 今一つ良く分かってはいないが、道化師ではない事だけは分かった。


 ……取り敢えずはホッと安堵して置こうか。


 尤も、道化師ではなかったと言うだけの話しで、能力的にはどうなのかは分からない。

 全くもって、見た事のない謎めいた存在だった。


「私が作った魔導人形ゴーレムです。それ相応の能力があるので、決して油断はしないで下さいね?……あ、倒せば御褒美です」


 ドォォォォォォォォンッッッッッ!


 ニコニコ笑顔のまま説明して行ったココナッツ様がいた直後に、魔導人形は大爆発を起こしていた。


 ココナッツ様の顔が『コキーンッッ!』っと固まってしまった。

 うむ、見事なフリーズだ!


「えぇ……と?」


 数十秒ばかりのフリーズ時間を経由してから、ココナッツ様は口を動かしていた。


 きっと、自分でも信じられなかったのだろう。


 御褒美と言う単語がココナッツ様の口から発せられた、その0.001秒後にはドォォォォォォンッッッ! っと大爆発していたのだから。

 私だって初めて見たのなら、かなり驚いたかも知れない。


 けれど、それをやった人物が私の愛娘であったのなら、特段驚く事もないな?


「倒したおっ! 御褒美欲しいおっっっ!」


 ソッコーで吹き飛ばしてしまったアリンは、御褒美に思い切り興奮する形でココナッツ様へと叫んでいた。

 ……母親として、本当に恥ずかしいのですが?


「えぇと……そ、そうですね! わ、分かりました! 御褒美の限定版・華岳ちゃん人形は、しっかりと用意させて頂きますので安心して下さいね?」


「分かったおっ! やったぁっ! キータに来て良かったんだお! 人生の春なんだおぉぉっっ!」


 たかだか人形程度で人生の春を謳歌していたアリンは、今にも小躍りしそうな勢いで喜んでいた。


 ……何はともあれ、これでアリンは一抜けか。


 さて、次はどっちが行こうか?……そうと考える私が居た頃、


「では、次は私が行きます」


 ユニクスが軽く身を乗り出す感じの態度をしながらも声を吐き出した。

 

 ……ふむ、なるほど。


「じゃあ、私は最後にして置こう……頑張れよ、ユニクス」


「はい! ありがとうございます! この戦いに勝利して、リダ様のボンボンを手に入れます!」


 ユニクスは、あたかも最終決戦に臨む挑戦者かの様な表情を『キリリッ!』と作りながらも答えていた。

 お前はどうして、私のボンボンの為にそこまでの顔を作る事が出来るんだよ……?  

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