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キータ国とドーンテン一族と勇者様【16】

「そうですか……アナタ様がイシュタル様の天啓を受けた勇者ユニクスでしたか。そう言われると、勇者としての風格を感じる様な気がします」


 女神ココナッツは、にこやかな笑みを満面に作りながらもユニクスへと答えた。

 本当にそう思っているのかは謎だ。

 きっと社交辞令なのだろう。


 私の本音を言うのであれば、勇者ユニクスの何処にその様な風格が備わっているのか分からないレベルではあったのだが、


「そうですね。確かに勇者ユニクスには運命の女神にして全知全能なるイシュタル様から勇者の力を得た、頼もしい存在です」


 ココナッツ様の言葉に、私も合わせた。

 正確に言うと『合わせて置く』形を取った。


 だって、そっちの方が楽そうじゃん?

 主に、私が。


「ちょっ……リダ様! いきなり私を持ち上げて……自分だけキータくんだりまで来た責務を放棄するおつもりですかっ⁉︎」


 つもりも何も……。


「私はお前のお供。とりあえず、立ち回り的にはお団子食べてヘラヘラしている立ち回りのうっかり屋ポジだ。ここには観光目的で来たとだけ述べて置こうか」


「完全にやる気がないっ⁉︎」


 私の台詞に、ユニクスは白目になって『ガーンッ!』って顔になっていた。

 ここに来る報酬が、思い出の染み付き古本だったからな? そりゃ、余計にやる気もなくすって物だ。


「そうですか、お供の方なのですね? それで? リダ『ドーンテン』さんは、ご自分の名前に誇りをお持ちではないと?」


 程なくして、ココナッツ様はニコニコ笑顔のまま、私へと地味に嫌がらせっぽい台詞を口にして来た。

 ……つか、わざわざ自分のセカンド・ネームを口にしなかったと言うのに、それでもドーンテンの名前を言って来るのな?

 ここから考えるに、きっとココナッツ様も私の名前をフルネームで知っていたのだろう。

 なんて地味に意地悪な女神様なのだろうか……?


「……はは……その、なんと言いますか、少しばかりは持っている為、この場に馳せ参じました」


 私は苦し紛れの言い訳程度にココナッツ様へと答える。

 本当は、イシュタル様から古本貰ってたから、ここへと渋々来ているだけだったが、そこはもちろん内緒だ!


 だって、恥ずかしいから!


「そうでしたか……その話しを聞いて安心しました。それでは、今回の件についてお話しをさせて頂きたいと思いますので、我が家へとご案内致しますね?」


 私の言葉を聞いたココナッツ様は、緩やかな笑みを相変わらず柔和に作りながらも答えると、ゆっくり歩き始めた。


 きっと、ここから然程遠くもない所に、ココナッツ様の自宅があるのだろう。

 それにしても、女神なのに自宅があるんだな?

 しかも、首都・キータの一等地に。


 冷静に考えるのであれば、始まりの女神様はキータ国にとって全ての祖であり母であるのだろう。

 そこらを考慮するのであれば、キータの地域住民に愛されていてもなんらおかしな話しではなかった。


 始まりの女神こと、ココナッツ様に案内される事……数十秒。

 いや、もう眼前に御自宅があったのね。


 同時に気付く。

 そこには大聖堂としか、他に形容する事の出来ない立派な神殿が存在していた事に。


 ……うむ、かなり盲点だった。

 ふつーに、当たり前の様に建っていたので全く気付かなかったが……もう、驚く程の大神殿だ。


 ハッキリ言って、ここが世界遺産に認定されていても、私は全く驚かないぞ。


「私本人が住んでいる場所は、他にあるのですが……今回はお話しと同時に少しだけあなた達に一定の試験を受けて頂こうと思っておりました」


 神殿の中に案内されつつ、ココナッツ様は私達へと説明して行く……ん? 試験?


「試験ですか?」


 ちょっと意外だった。

 そもそも、そんな物がどうして必要なのか?……ちょっと私には分からなかったからだ。


 ともすれば、私達の実力を知りたいから……とか、そう言う理由なんだろうか?


 果たして、私なりの予測は見事に当たっていた。


「はい、試験です。イシュタル様の遣いと言う時点で、アナタ方の能力が高いと言う事は私なりに存じておりますが……しかしながら、今回の相手は破滅の女神。多少の実力では歯が立ちません。何より危険な戦いになる為、万が一を考慮して、皆さんの能力がどの程度であるのかを教えて頂きたい……そう思っております」


 答えたココナッツ様は、少し申し訳ない様な表情を作りなからも私達へと答えて行った。


 ……ふむ、なるほど。


 きっと、ココナッツ様も不安なのだろう。

 破滅の女神とやらが、どの程度の脅威を持っているのかは分からないが……しかしながら、女神様がヘルプを呼んでいる時点で、その実力は間違いなく人外だ。


 そうなれば、危険度が恐ろしく高まってしまう事は、もはや聞くまでもない事だった。

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