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キータ国とドーンテン一族と勇者様【13】

 人間と女神との間にある大きな価値観の違いと言う物をまざまざと見せられた私がいる中、


「私はアナタを少し見誤っておりました……本当は無欲な清き人間だったのですね?」


 イシュタル様は瞳をキラキラと輝かせながらも私へと答え……キュッ! っと両手を握って来た。


 実はそうでもないと言う側面があるせいか……私は思わず瞳を逸らしてしまった。

 良心が痛むから、そのキラキラした瞳を私に向けるのはやめてくれないかなぁ……?


「そ、そのぅ……別の物でも良いですよ?」


「さぁっ! 受け取りなさい! 私の神殿の奥底にある、由緒ある魔導書を!」


 何となく悪い気がした私が、それとなく断りを入れようとした直後、イシュタル様は強引に話しを進めて行った。


 ……どうやら、本気で魔導書よりも秘蔵の激レアなウノの方が手放したくなかったらしい。

 女神様の価値観って……一体。


 ポゥゥゥ……


 しばらくして、イシュタル様の両手が光ると……私の両手には一冊の本が。


 文字は……う〜ん、なんだろ、これ?

 思えば、神話の時代に書かれていた魔導書なんだから、現代の文字ではないよなぁ……。


「これは、私が天地神明の頃から愛読していた魔導書です。何回も何回も……それはもう、暗記しちゃってるぐらい読んでいるから、少し傷んでいる部分があるけど……」


「そんなに読まれたのですか?」


「えぇ……だからその魔導書には、色々な思い出が滲んでいるの……例えば、45ページ目にある染みは、そのまま寝てしまった時に口からヨダレが流れた事で出来た染み」


 魔導書によだれ垂らすんじゃないよっ!


「そして76ページ目にある、琥珀色の染みは……コーヒーを飲みながら読んでいたら、予想以上にコーヒーを入れすぎて、そのままこぼしてしまった事で出来た染み」


 そんな思い出を、しみじみ語るんじゃないよ!


「ああ、懐かしいわ……つい最近ね? その魔導書の復刻版が出たから、そっちはアナタに上げます。本当はブック◯フに売ろうと思ったんだけど、どうせ二束三文だしね……」


 神話時代の魔導書を、どこに売ろうとしてんだよ、アンタわぁっっ!


 もう、ツッコミ所しかないよっ!

 マジでアンタは女神なのかっ⁉︎


 ……つか、復刻版とかあるの? 神話時代の魔導書なのにっ⁉︎


「それにしても、新しい魔導書は現代語版で、ちょっと読み難いのが難点だけど……けれど、復刻版には新しい魔導式もオマケで付いているから嬉しいよね? これだけ色々書いてあって、価格はナント定価1200マール! ベルゼブブ書房から絶賛発売中よっ!」


 って、1200マールで売ってんのかよっっ!

 挙句、ベルゼブブ書房……って、まさか……。


 ……いや、よそう。

 きっと、ここの話しを掘り下げた日には、絶対にあの腐れ学園長バアルの会社が見え隠れして来るに決まっているのだから。


「それにしても、やっぱりリダさんって無欲よねぇ〜? こんな『ありふれた物』で良いなんて。書店に行って、自分で買えば良いのに〜」


 ……私だって、知ったら普通にそうしてたわぁぁぁっっ!


 カラカラ笑って言うイシュタル様に、私は何も言えなくなっていた。

 正直言って……そんな物を売るなと言いたい!

 ただ、果てしなくふざけた内容であろうと、実際にそれをやっている可能性は十二分にあった。

 だって、ベルゼブブ書房だもの。

 絶対に株式会社・ベルゼブブが絡んでいるもの。


 悪魔が神様の魔導書を商売の種にすんじゃねぇぇぇぇっっっっ!


 ……はぁはぁ。


 おっと、いかん……ちょっと取り乱してしまった。


「あの……復刻版の方を少し見せて貰っても良いですか?」


「?……構わないけど?……はい」


 ポンッッ!


 イシュタル様が軽く右手をかざすと、私の手元に一冊の魔導書が出現した。


 見た所、イシュタル様が先にくれた物と同じ本に見える。

 しかし、こっちは現代語版だった。

 表紙を見ると『神話魔導書・応用編』と書かれており、裏側には『ベルゼブブ書房』と書かれている。

 そしてメーカーのロゴが書かれていたのだが、もう完全にハエだった。

 色々とデフォルメされたイラスト調の代物ではあったが……うん、これは間違いない。

 株式会社・ベルゼブブが関わってるな! マジでアホなの? あの悪魔王!


 しかし、一番の驚きは、表紙に書かれていた著者名。


 みかん・著。


「………」


 私は何も言えなくなった。

 神話時代の魔導書なのに……なんで見知った人間が作者してるんだよっ!


 つか、アイツは神話時代から生きてんの? マジでアイツの年齢って何歳なんだよっっ⁉︎


 私は、万年二十歳のキノコ頭を思い出し……途方もない呆れた気持ちで一杯になっていた。

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