リダさん、裏山探検に向かう【4】
「ああ、そう言えば......12階の最後にいる門番の様なボスは巨大飛竜でしたね」
フラウの言葉を耳にして、ユニクスが思い出す感じて答えた。
しかし、一拍置いてから、
「けれど......今のフラウなら倒せるレベルだった様な......?」
おかしいぞ? と言う感じの顔になって言葉を吐き出していた。
実際、本当ならそうなのかも知れない。
まして、パラスと一緒だったと言う事は、その戦力も段違いに上昇するだろう。
「うーむぅ......」
私は両腕を組んで考えてしまった。
確かに、このダンジョンは下に行けば行くだけ難易度も高くなって行くシステムではあるし、生徒の能力に合わせて色々な難易度のダンジョンを構成してはいるんだが......。
「学生が練習で使うダンジョンなのに、本当のダンジョンよりも難易度が高くなってる可能性があるな」
この世界の異変により、もはや練習とか言うレベルではないダンジョンに変貌しているのかも知れない。
......うむ。
ここは、会長として確かめて置く必要がありそうだ。
「ともかく入って見るか......あ、ゴンドラが使いたいヤツがいるなら、使っても構わないぞ?」
こう言っては難だが、私に合わせる必要はないからな。
「いえ、私も気になるので、一階から行きます」
キリリと顔を引き締めて言うユニクス。
直後、フラウがひょこっとやって来て、軽く尋ねて見た。
「本音は?」
「リダ様と一緒じゃないなら、こんな下らないダンジョンに興味はない」
「......あ、そう」
「ツッコミすら来ないっ!」
ユニクスはガックリとひざまずいた。
四つん這いになって力尽き、最後は膝を抱えて体育座りしてたユニクスを他所に、他のメンバーもゴンドラに乗る事を否定していた。
「俺はお前の戦い方を見に来たからな。仕方ないから一緒に行ってやる」
相変わらずの上から目線で言うパラス。
なんで、こんなに態度がデカイのだろう?
「パラス様がリダと一緒に行くなら、私も行くよ」
「ああ、はいはい。好きにしてくれ」
適当に相づちを打った所で、私達は一階の中に入って行った。
最初の階だからと言うのもあるんだろうが、特筆すべき内容はなかった。
出て来る敵も、ゴブリンとか小振りのワームとか......まぁ、初級の冒険者が相手にする様なモンスターが、たまにやって来る程度だった。
最初だしな。
むしろ、ちゃんとダンジョンが難易度通りに作用している事が分かった。
トラップの類いも初歩的な、本当にちゃっちい罠が半分義理で設置されている程度だった。
これをクリア出来ないヤツは、そもそもこの学校に入学すら出来ないと思う。
試験で不合格を喰らう筈だ。
通路も、極々オーソドックスな迷宮の通路的な物で、練習としては丁度良い感じだった。
「なんだ。全然、普通じゃないか」
「いきなり難しかったら、きっと学園の運営が動くと思うよ......」
そこでフラウが素朴な台詞をぼそりと吐いて見せた。
まぁ、確かにそうかも知れない。
どうやら、一階にいる必要は微塵もない模様だ。
そんな事を考えていた所で、開けた場所に出た。
その先には、二階への階段があったのだが、
バンッッッ!
二階への階段がある通路は、いきなり出て来た扉によって塞がれてしまった。
「ま、説明するまでもないかもだけど、各階層が全部こうなってるね? 最後の門番を倒すと次の階に行く感じかな?」
フラウが軽く説明をして来た。
なるほど。
階層の最後にボスがいるダンジョンは、結構オーソドックスだからな。
どうやら、こう言う所も本物のダンジョンに良くあるシチュエーションになっている模様だ。
しばらくすると、大きな熊の様なのが出現する。
これがボスかな?
ドンッ!
挨拶代わりに一発殴って見せた。
刹那、熊は思い切り吹き飛んで、
ドカァァァッ!
壁に激突してた。
激突の衝撃で壁にヒビが出来ていた所で、そのままバッタリと倒れた大きい熊は、そのままピクリとも動く事はなかった。
「......チート女」
パラスはボソッと言う。
「毎回思うが、チートじゃないからな? ちゃんと努力して強くなってるだけだからな?」
てか、今回は一階のボスなんだから、弱いに決まってるだろ?
反論する私がいる中、フラウが嘆息混じりに答えた。
「そりゃ......ね? まだ一階だし? そこまで強い相手ではないけど......出て来た瞬間に倒すとか、ボスの方に哀れみを感じる様な芸当は、リダしか出来ないからね?」
「いや、ユニクスだって出来るだろ!」
軽く引いていたフラウに、私は慌ててユニクスに話を振った。
「似た事は出来ますが......あれと同じは無理です。私の実力では精々、五発は打ち込まないと」
「いや、それを一瞬で打ち込むんだろ? 同じじゃないかっっ!」
どの道、瞬殺してるからな! それっ!
てか、一瞬で五発も打ち込んでる分、お前の方が凄まじいだろうがっ!




