キータ国とドーンテン一族と勇者様【10】
そしてやっぱりこじ付け以外の何物でもないだろうがっ!
色々と言ってはいるけど、私である必要性なんて限りなくゼロだし……ドーンテン一族だったか? それだって、イシュタル様がただ言ってるだけのでっち上げかも知れない。
一応、それっぽい事を言ってはいるんだけど……それなら、確証に値する何かを持っているのか? って言うのなら、そんな物は塵も芥も存在していないんだからなっ!
簡素に言うのなら、アナタは爆破王の末裔です!……と言うだけなら、なんとでも言える訳だ!
よって、私が取る選択肢は一つだけ!
「分りました、満面の笑顔でユニクスを見送ります」
「どぉぉぉぉぉしてそうなるのぉぉぉぉぉっ⁉︎」
私の言葉に、イシュタル様は動揺漲る語気を全力で見せながらも叫んでいた。
直後、爆破のダメージからアッサリ復活していたユニクスも同じ様な感じで私へと喚き散らそうとしていたのだが、イシュタル様の剣幕が余りにも凄まじかった為、逆に気圧される形で押し黙ってしまった。
ユニクスを出し抜くとは、流石は女神様と言える。
「いや……だって、イシュタル様が言っているだけであって、私が本当に爆破王の末裔だと言う証拠が全くないではありませんか……」
「この私が言っていると言う時点で、大きな証明になっているじゃないですか! 女神様は嘘など吐きませんから!」
普通に考えればそうなるのかも知れないんだが……どうも、この天然女神の場合は、完全に鵜呑みにしては行けないオーラの様な物をナチュラルに持っているんだよなぁ……。
「……はぁ、仕方ありませんね」
一拍置いてから、イシュタル様は少しガッカリした顔になった後、
「それなら、アナタが爆破王・ドーンテンの末裔である事の証明を『これから』見せて上げます」
そうと答え、
ポゥゥゥ……
両手に淡い水色の光を作り出した。
次の瞬間、
「……おや?」
私の視界が変わる。
……ふむ、ここは……森かな?
良くは分からないが、何処かの森林地帯のど真ん中にやって来ていた。
「ここは、今から四千五百年程前のキータです。ここから少し行った所に、現在のキータ国へと発展するだろう集落がありますね?」
「なるほど、過去のキータなのですね」
突発的に連れて来られた私は、一応の相づちを打つ。
眼前に広がっている世界が、かつての幻影を忠実に見せているだけなのか……はたまた、本当に時空を超えて過去の世界に連れて来たのか? ここらに関しては甲乙付け難い。
女神様のやっている事だからな? 実際にタイムスリップしていたとしても、特段驚く程の事ではない。
だが、イシュタル様としては、そこが単なる幻影か現実か……と言う部分は、そこまで重要な代物ではないのだろう。
要は、私が爆破王の末裔である証明をしたい。
「リダさん……これから森の奥からやって来る女性を見て下さい」
「……? これからやって来るんですね? 分りました」
やんわりとした笑みのまま答えるイシュタル様の言葉に、私は軽く頷きながらも森の奥側へと視線を移した。
すると、イシュタル様の言葉通り、そこには革製の服に身を包んだ一人の女性が……っ⁉︎
「……えっ⁉︎」
私は顔を強張らせた。
似ている……いや、似ているなんて言うレベルではない。
森の奥からやって来た一人の女性は……もはや、私の生き写しと述べても過言ではない人物が歩いて来た。
「あの人が、爆破王・ドーンテンその人。当時は女神ココナッツの右腕として、キータの集落を守っていた戦士でした」
「……そ、そうですか」
私は口元をヒクヒクしながらも声を返した。
やばい……これ、ガチなヤツかもだっ!
程なくして、金髪の綺麗な女性が私ソックリな人物を見付けて、声を掛けて来た。
ぐぅむ……これまた、驚く程の美人だ。
なんて言うか、いかにも女神様っ! って感じの人だった。
きっと、正真正銘……本物の女神様なのだろう。
「あの方が、ここキータ国の民を繁栄に導いた始まりの女神……ココナッツ様です」
「な、なるほど」
私は頷く事しか出来なかった。
「今日は、ココナッツ様がお忍びで森へと散歩に出掛けた事を知り、爆破王・ドーンテンが心配して、森の方へと向かっていたみたいですね……ほら、その証拠にドーンテンさんは少し困った顔をしつつも、軽く小言を言っている様子が分かるでしょう?」
「……どうやら、その様です」
イシュタル様の言う通り、私ソックリの人物は小言に近い何かをココナッツに言っている様子だ。
その反面、何処かホッとした顔をしている様にも見える。
ここから考察しても、イシュタル様の言っている事に間違いはないのだろう。




